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2022年7月11日

安倍晋三元首相の死去、インフレ心理は徐々に後退し流れはグロース株へ

鈴木一之

◎日経平均(8日大引):26,517.19(+26.66、+0.10%)
◎NYダウ(8日終値):31,338.15(▲46.40、▲0.14%)

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7月8日、安倍晋三・元内閣総理大臣が参院選の応援演説中に銃撃され死去されました。心よりご冥福をお祈りいたします。

日本はおろか世界中に衝撃が走りました。言葉にならないとはこのことです。安倍元首相が選挙運動中の白昼、大勢の一般市民の前で背後から銃で撃たれ、数時間後に絶命されるとはいまもって信じられません。

銃撃の犯人はその場で捕らえられました。警察の捜査によってより詳しい事実関係が明らかにされることでしょうが、取り押さえられた時の無抵抗さから世の中を諦観しきった様子がうかがえてうまく表現できない恐怖感を覚えます。

銃規制が厳格であったはずの日本でも、手製の武器を取り締まるのは至難の業です。これほどの重大事件ですから警備の不備が指摘されてしまうでしょうが、政治家にとって選挙期間中は人との接触が欠かせないものなので、万全の警備にも限界があります。

それにしても現代の日本でこれほどの重大事件が、これほどたやすく実行されてしまうとは。数えきれないほどニュース報道がなされていますが、目の前を通り過ぎてゆくだけで感覚がどこか麻痺しています。

しかしこの出来事によって日本の内外で何かが大きく変わることは間違いないように思います。むしろ何も変わらないと考えることの方が不自然です。日本人は昔から「安全と水はタダ」と思っていると揶揄されてきました。世界の常識はそうではないことはわかっていたつもりですが、実際には何もわかっていなかったということです。

少なくとも安全を確保するために、日本の社会全体がこれまで以上にお金と労力を支払うことになるでしょう。安全保障のための軍備増強もそうですが、自然災害やサイバーセキュリティ、通信回線の確保も含めて安全のコストは今まで以上に高くなるはずです。

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株式市場では、先週は日経平均が「4勝1敗」と久々にしっかりした週だったはずです。マーケットの行く手に立ちふさがる数々の難問、高いハードルをひとつずつ乗り越えて、徐々に上値を志向する動きを見せていた矢先、その週末に起きた悲劇です。

現在のマーケットが直面している悪材料を数え挙げればキリがありません。ロシアの軍事侵攻、その蛮行が引き起こした世界の食糧危機、エネルギー価格の高騰、物流の混乱、それらがもたらす素材・エネルギー価格の高騰、それにコロナウイルスの再拡大。

それらすべてが合わさって、米国の金融政策が歴史的な緩和策から一転して、今度は歴史的な引き締め策へと急展開しています。FRBは景気を犠牲にしても物価上昇を抑えるスタンスを鮮明に打ち出し、リセッション懸念が世界を覆うようになりました。

それに加えて日本では電力不足の問題が足を引っ張ります。四面楚歌とはまさにこのような状況で、そのような状況でも株式市場は少しずつ、ひとつずつ悪材料に対して耐性をつけ、緩やかに上値を志向する動きを示したところでした。

衛生上の安全、社会的な変動性の少なさを重視するのであれば、その中のひとつに日本が選ばれることになり、海外投資家からの資金は徐々に日本株に流れ始めたことが確認されつつありました。それが今週の日経平均の「4勝1敗」だったのだと思います。

そこで起きたのが安倍元首相への銃撃、逝去のニュースです。今の社会は事件の映像がテレビニュースだけでなく、SNSを通じて無限に繰り返し流れます。社会に与える影響は決して小さくはありません。行動規制が緩和されることでいったんは上向きかけた人々の心理は、再び内面的な方向に向かう恐れがあります。

一国の経済は社会の上に成立しています。土台である社会がしっかりして初めて、経済がきちんと回ります。社会の動揺を抑えるために、政治によるリーダーシップも必要ですが、具体的に安全確保のために費用と労力を振り向ける必要があります。

あとから振り返ってみてようやく全貌がつかめるような、あの時が転機だったと思えるような出来事が目の前で起こりつつあります。阪神大震災が都心部のビルの耐震強化、高層化を大きく推し進めたように、今回の事件は日本の社会を大きく変化させる何らかのきっかけになるでしょう。その変化がどの部分に表れてくるのか、日本がよりよい方向に向かうきっかけになることを願うばかりです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。上昇率は+2.30%で、前の週の▲1.16%を大きく上回りました。

規模別指数では、すべての規模の指数が反発しました。中でも大型株の反発(+2.49%)が大きく目立っています。次いで中型株(+2.08%)、小型株(+1.62%)といずれも堅調です。

同じようにグロース株の上昇が際立っており、大型・グロース株の上昇が小型・バリュー株の上昇を大きく上回りました。新興市場でも東証マザーズ指数は+5.60%と大きく反発しました(前週は▲3.78%の下落)。

テクニカル面では、日経平均のサイコロジカルラインは「8」まで上昇しています。6月13日以来、ほぼ1か月ぶりの高い水準です。騰落レシオの週末値は96.29%とほとんど動かず安定したままの状態にあります。東証REIT指数は小さな動きでした。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターが14業種に広がり、値下がりセクターは3業種にとどまりました。

値上がりセクターのトップは「電機・精密」です。前の週は最も大きく下落したセクターですが、レーザーテック(6920)と村田製作所(6981)が5日続伸を記録するように、下落中の電子部品・デバイスの主役級の銘柄がいずれも反転し、連日のように上昇しました。

このほかにも金利低下でグロース株を物色する流れが戻りつつあり、NEC(6701)が年初来高値を更新しました。富士通(6702)、日本電産(6594)、キーエンス(6861)、ヒロセ電機(6806)、浜松ホトニクス(6965)も急速に値を戻しています。

値上がりセクターの第2位、第3位は「医薬品」と「情報通信・サービス」です。武田薬品工業(4502)が年初来高値を更新し、ディフェンシブ株の人気は根強く残っています。

それ以上に注目されるのが「情報通信・サービス」です。とりわけ「情報通信」の方に反転の動きが強まっています。SCSK(9719)、ISID(4812)、伊藤忠テクノソリューションズ(4739)、オービック(4684)、ネットワンシステムズ(7518)などのソフトウェアの大手が軒並み上昇しました。

KDDI(9433)が大規模な通信障害を起こしたばかりですが、そうなるとますますネットワーク強化の投資が必要となります。DXの進展によってソフトウェア投資が中小企業を含め、日本中で広がっている様子もうかがえます。

同じように「情報通信」からは、GMOペイメントゲートウェイ(3769)、ラクス(3923)、

(後略)

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鈴木一之