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2022年12月6日

師走相場がスタート、TOPIXは先週の2000ポイント突破から反落

鈴木一之

鈴木一之です。師走相場が始まったとたんに株式市場は軟調な動きに戻ってしまいました。

1週間前、TOPIXが今年1月5日以来の2000ポイントの大台回復となったことを受けて「株式市場はいよいよ動き始めた」とお伝えしたばかりです。それが早くも調整入りかと思えるような状況に変わってしまいました。

週を通じて日経平均は「1勝4敗」でした。現地・水曜日のパウエルFRB議長の講演が金融政策に対するハト派的な内容と受け止められ、木曜日に1日上昇しただけの結果に終わりました。

パウエル議長の講演内容はそれまでの意見と同じような内容を繰り返したに過ぎず、特段の目新しさはありませんでした。FRBによる政策金利の引き上げは、それまでの異例なまでのスピードから今後はペースダウンしてゆくものと見られます。

それでも金融市場ではその点をとらえて、金曜日に為替市場で円が135円台までドル安・円高に進みました。海外市場では133円台まで大きく円が上昇しています。

この円高を嫌気して金曜日には、トヨタ自動車(7203)、ソニーグループ(6758)をはじめ外需企業が広範囲に下落し、これらが全体の地合いを悪化させる主因となりました。日経平均は週末値で28,000円の大台を割り込んでいます。

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ドル高・円安のピークは10月21日の151円94銭。この日にWSJ紙が「11月FOMCでは12月以降に利上げペースを緩めることを議論する」と報じられ、それがきっかけとなってドル高のトレンドに終止符が打たれました。

それ以後の展開は、消費者物価指数が発表されるたびに株価が底値を打って上昇し、長期金利は低下方向に向かいました。

11月初旬のFOMCでは、実際に4度目となる0.75%の利上げが実施され、次回12月の会合で利上げ幅の縮小が議論されることになるのはWSJ紙の報道にあった通りです。

実際の金融政策がタカ派からハト派に緩められたわけではなく、FRB首脳の発言も物価と金融政策には厳しい内容に終始しています。それでも為替市場および債券市場ではすでにインフレはピークアウトしたものとして走り始めています。

米10年物国債金利は3.49%まで低下して、3.5%を割り込みました。NY株式市場もこれを好感して、先週はNYダウ工業株が8月高値を抜き去り、そして出遅れていたNASDAQ、およびそれらを構成するテクノロジー株も動き始めたように見えます。NASDAQ総合株価指数は11月10日に続いて今年2番目の上昇幅を記録しました。

週末に発表された11月・米雇用統計は、非農業部門雇用者数は26.3万人で予想の20.0万人を上回りました。平均賃金の伸びも前月比+0.6%と、市場予想を上回っています。これまでであれば米国の景気動向は依然として強く、金利上昇・株安につながりネガティブな内容として受け止められても不思議ではないところです。

それでも各マーケットは安定した動きに終始しました。相場が転機を迎えていることを端的に示す状況が生まれつつあります。

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複雑なのは日本のマーケットです。円高で株価が下落し始めています。

日本経済にとって「円安がよいのか、円高がよいのか」。今年は数えきれないほどの議論が交わされてきました。

円安は輸出企業の売上げ増には貢献し、再開されたばかりのインバウンド消費も盛り上がります。しかし原料高とエネルギーコストが増幅されるので、中小企業や庶民の暮らしはたいへんです。

円高はその反対で、輸出企業や海外からの観光客には痛手ですが、物価上昇を抑える効果があるので輸入企業や一般庶民には朗報です。双方にメリットとデメリットがあり、どちらか一方に決めつけるのはむずかしいのですが、差し引きすれば日本経済には円安のメリットの方が大きいとして、ここまでは株式市場では受け止めてきました。

それがまたもや円高方向に傾いてきました。本来であればFRBの金融政策の方針がタカ派からハト派に変わる変局点を見つけ出して、マーケットはそれを好感したいところなのですが、いざそうなってみると今度はまた別の難問に直面します。

望ましいのは円安なのか、それとも円高なのか。まだしばらくこの議論は続きそうな雲行きです。

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そうこうしているうちに気がつけば12月。早いもので師走相場がスタートしました。

月末月初に発表が集中する日本の経済データを見る限り、景気の具合は必ずしも明るいものには向かっていないことが明らかです。

12月1日に内閣府が発表した11月の消費動向調査によれば、消費者態度指数は3か月連続で低下しました。これを受けて内閣府は、2か月連続で景気の基調判断を下方修正しています。

11月30日に経済産業省から発表された10月の鉱工業生産指数も、2か月連続で低下しています。今週は景気動向指数と景気ウォッチャー調査が発表されます。その動きも気になるところです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。下落率は▲3.17%と大きめになりました。TOPIXの2000ポイント乗せの反動が出ているものと見られます。

プライム市場では大型株から小型株まで幅広く下落していますが、一方で好調だった新興市場はそれでもまだしっかりとしています。東証マザーズ市場は4週ぶりに反落しましたが、下落率は▲0.08%にとどまりました。

バリュー株とグロース株の対比では、それまで堅調だったバリュー株が先週は逆に下落が目立ちました。米国の長期金利が低下方向に向かうのであれば、バリュー株よりもグロース株の方に分があると見られます。

テクニカル面では、騰落レシオは120%の過熱ラインを5日間上回ったあと、週末は101%台まで低下しました。日経平均のサイコロジカルラインはニュートラルの「6」から、先週末は「5」まで低下しました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、前の週の裏返しですべての業種が値下がりしました。下落したセクターがゼロというのは8月最終週以来のことです。

値下がり上位のセクターは「不動産」、「金融(除く銀行)」、「銀行」という金利動向に連動しやすい業種です。

中でも銀行セクターが広範囲に急落しました。米国がインフレ抑制策を強化し金利の上昇が続くという前提で買い進まれてきた側面が強いため、銀行株はメガバンクから地方銀行までほぼ全面安となりました。前週までと正反対です。

不動産セクターもインフレが抑制されつつあるという観点で下落に転じたものと見られます。不動産株は本来であれば、金利が低下する局面では業績が上向きになるので株価は上昇しやすくなります。

それが現在は、セオリーとは反対のことが起こっているように映ります。「インフレ=不動産価格の上昇」というこれまでの見通しが逆転し始めたと考えるのが、現象面の説明としては正しいようです。すべては解釈の問題です。

「電力・ガス」も値下がりが目立ちました。前週までは東北電力が電力料金の値上げを申請するとのニュースをきっかけに株価は大きく上昇していました。

それに対して先週は、中国電力、中部電力、九州電力、関西電力が高圧電力に関するカルテルを結んでいた疑いで公正取引員会より課徴金が課されることとなりました。電力自由化に逆行する動きとして株価は大きく下落しました。

中国電力は通期業績が2期連続で最終赤字となる大幅な下方修正を公表しています。この件に関わる他の電力会社の動きも気がかりです。

値上がりセクターはありませんが、比較的下げの小さかったセクターには「運輸・物流」と「素材・化学」が上位に位置づけました。

「運輸・物流」では引き続き海運セクターの動きが堅調です。コロナ禍とウクライナ紛争に伴うコンテナ船運賃の異常な価格高騰は徐々に収まりつつあります。

そうなると日本郵船(9101)や商船三井(9104)の収益は特殊要因が剥落した分だけ切り下げられることになりますが、実際の株価はそのようにはならずしっかりと高止まりしています。

コンテナ船とは関わりの薄い飯野海運(9119)

(後略)

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鈴木一之