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2022年11月28日

株式市場もいよいよ動き出す、TOPIXが2000ポイントを突破

鈴木一之

鈴木一之です。株式市場がいよいよ動き始めたようです。

決算発表をきっかけに小型株から次々と高値を更新する銘柄が増えていましたが、それが次第に中型株へと移ってゆき、先週はついに大型株に伝播するようになりました。

大型株が中心の株価指標とされるTOPIXは2000ポイントの大台を突破しました。今年1月5日以来のことです。

この1月5日は今年の大発会の翌日で、TOPIXが今年の最高値となる2042ポイントを記録した日でもあります。それ以来の高値ということですから、かなり相場は暖まってきたと見るべきでしょう。

あとわずかで今年最高を更新するという地点まで、先週の株式市場は迫ってきたこととなります。いったい何が変わったのでしょうか。

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大きな変化はすでに前の週から始まっていたように思います。世の中はすでに目まぐるしく動き始めており、その割に株式市場だけは静かな動きに終始していました。

最初の変化は2週間前になりますが、11月14日(月)にインドネシアでの「G20」において米中首脳会談と日韓首脳会談が同時に開催されたことです。どちらも3年ぶりのことです。

その週末の11月18日(金)には、APECの場で岸田首相と習近平国家主席による日中首脳会談が対面形式で開催されました。わずか40分あまりのことですが、台湾有事の危機感から日本の防衛予算の大幅増を目指す来年度予算の審議中に、日中両首脳が会談するというのもずいぶんと思い切ったものだと感じました。

コロナウイルスの感染拡大でこの3年間、国境を越えた首脳クラスの会談はほとんど開催できないという状況でした。オンライン形式では微妙なニュアンスの意思疎通ができず、それが国際政治の現状をより難しくしており、現在に至っています。

それが水面下とはいえ、徐々に転機を迎えつつあるようです。中国の共産党大会、米国の中間選挙という大きな節目を切り抜け、日本と韓国を交えて北朝鮮、そして台湾という大問題に正面から向き合う素地が整ってきたと見られます。

バイデン大統領と習近平総書記の会談が実現したといって、すぐに目に見える形で変化が出てくることはないでしょう。半導体をはじめ中国向けの先端技術の輸出はますます規制強化の方向に向かっています。

それでも両大国が正面きって激突するという局面は、今回の首脳会談の実現によって当面は回避されたと見られます。より大きなロシア問題に対峙する上で政治的には余裕を得たことで、あとは両国にとってさらに困難な状況にある経済問題に専念することになります。

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日本でもコロナ感染者数の拡大が懸念されていますが、中国でも再びゼロコロナ政策のリスクが浮上しています。11月に入って1日の新規感染者数がこれまでの最高となる3万1000人に達しました。

経済上の重要都市である広東省や重慶市で感染が拡大しています。これらの都市が次々とロックダウンで封鎖され、消費活動が最も活発化する年末を前にして中国の経済活動が滞る恐れがあります。原油価格は1バレル=80ドルの大台を割り込むまで下落する事態となっています。

EUは12月5日からロシア産原油の輸入制限に踏み切る予定ですが、その際にロシア産原油の輸入価格をどう決めるのか、そのせめぎ合いが続いています。

先週は価格交渉の中枢に加わる欧州高官が、「1バレル=65ドルから70ドル」と発言したと報じられ、それもWTI先物価格が76ドル台まで下落する一因となりました。今年9月以来の低い水準です。今年は厳しい冬の到来が予想されており、EUは暖房のためのエネルギー需要と経済制裁の間で揺れ動いています。

米国も経済のスローダウンが強まっています。11月PMI(購買担当者景況感指数)は5か月連続で分岐点となる「50」の水準を割り込みました。ユーロ圏のPMIも「50」を割り込んで推移しています。新規受注が減少し、企業家が慎重なスタンスを強めている様子がうかがえます。

ただし米国および世界経済にとって、経済面の悪いニュースは市場にとってよいニュースです。感謝祭をはさんだ米国市場は堅調を維持し、NYダウ工業株は週末にかけて3日続伸となりました。先週は11月開催のFOMC議事録が公表され、参加者の大半が12月以降の政策金利の引き上げペースの圧縮に賛同したことがわかりました。

米国の長期金利は落ち着き、10年物国債利回りは3.6%台、為替市場でドルは138~139円台で取引されています。いずれも小さな変化の連続ですが、その背後では何か大きなものが動き始めていると感じられる1週間でした。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反発しました。前の週に4週ぶりに値下がりしたのですが、すぐに切り返しました。上昇率も+2.59%とかなり大きな反発となっています。

TOPIXが2000ポイントの大台に乗せ、今年1月以来の高値水準に達したことで、株式市場が次第に明るさを増しています。大型株から小型株まで幅広く物色が広がっていますが、中でも上昇が目立っているのが小型株です。東証スタンダード市場やグロース市場に勢いがあります。東証マザーズ指数も3週連続で値上がりしました。

バリュー株とグロース株の対比では、引き続きバリュー株が優勢の展開となりました。銀行セクターが軒並み上昇したことが大きいと見られます。中でも小型バリュー株に勢いがあります。

テクニカル面では、騰落レシオは一貫して上昇し120%の過熱ラインを突破しました。8月22日以来のことです。それでも日経平均のサイコロジカルラインは中立ゾーンの「6」にとどまっており、市場全体には過熱感は見られません。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、すべての業種が値上がりしました。下落したセクターがゼロというのは、3月25日の週以来の現象です。

その中で値上がりトップとなったのは「電力・ガス」です。東北電力が電力料金の値上げを申請するというニュースがきっかけとなり、すべての電力株が大きく上昇しました。北陸電力(9505)は10月に歴史的な安値を記録した後に、早くも今年7月以来の高値水準に戻っています。

値上がりセクターの第2位は「銀行」でした。三井住友FG(8316)、りそなホールディングス(8308)が先行する形で、先週はメガバンクすべてに物色が広がりました。

とりわけ地銀株が全面的に上昇しています。めぶきFG(7167)、ふくおかFG(8354)、しずおかFG(5831)、群馬銀行(8334)など、主だった地方銀行が次々に直近高値を更新するという勢いです。

銀行セクターがここまで広範囲に物色される状況を見るにつけ、海外からの投資マネーがいよいよ日本株にも入り始めたと見られます。銀行株を動かすのはいつの時代も海外投資家です。日本では金利がさほど上昇しないまま、景気の落ち込みもそれほどではないという見方が広がっている模様です。

値上がりセクターの第3位は「商社・卸売」でした。前の週から動意づいている三菱商事(8058)、住友商事(8053)、三井物産(8031)の総合商社が、引き続き上値を追いかける展開となりました。

先週はそれらに加えて、エレマテック(2715)、東京エレクトロンデバイス(2760)、丸文(7537)などの電子部品商社を筆頭に、出遅れ気味の専門商社に幅広く買い物が広がりました。インフレ利益を享受できる商社株には幅広い資金の流入が期待されます。

反対に先週の下落率トップは「情報通信・サービス」となりました。相場全体が軟調な時間帯に株価が安定していたNTT(9432)、KDDI(9433)の通信大手が反対波動で弱い動きに変わりました。

ソフトバンクグループ(9984)も決算発表の直後からさえない展開が続いています。ただしここでもサービス産業を中心に出遅れ気味の銘柄の株価は堅調でした。

値上がりセクターの第2位は「小売」、第3位は「医薬品」でした。どちらも前の週に値上がり上位に登場していた業種です。それらが相場全体が堅調さを取り戻したことで、反対に値動きが鈍くなりました。

それでも小売セクターでは、サッカーW杯での日本代表の活躍によりスポーツバーのハブ(3030)が急騰しています。さらにこのセクターでも、出遅れていたニトリHD(9843)を筆頭に

(後略)

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鈴木一之