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2020年1月13日

新春相場は中東情勢の緊迫化で荒れ模様のスタート

鈴木一之

◎日経平均(10日大引):23,850.57(+110.70、+0.47%)

◎NYダウ(10日終値):28,823.77(▲133.13、▲0.45%)

 

 

鈴木一之です。2020年の株式市場が幕を開けました。それにしてもスタートからかなり神経を使いました。

 

お正月休みや昨年のクリスマスが遠い過去の出来事のように感じられます。カルロス・ゴーン元会長の記者会見もどこか記憶の彼方に行ってしまったかのようです。多くの人が同じような感想を持っているのではないかと思うのですがいかがでしょうか。

 

年明けからまるで先行きの見遠しにくい展開となりました。1月2日にトランプ大統領の指揮の下、米国軍がイランの国民的英雄をドローン攻撃によって爆殺するという、きわめてショッキングなニュースからの幕開けでした。

 

昨年は日経平均が大納会で29年ぶりの高値という好位置で1年を締めくくったばかりでした。しかし現実の社会は、格差を助長するのが資本主義の本質だとか、人工知能に職を脅かされるとか、長生きリスクばかりが取り上げられ、希望のないディスラプション的な未来社会ばかりが予想されています。

 

それでも株価が上昇してさえいれば、少なくとも技術革新は善なのだ、という確信を持つことができるように思います。昨年末の株価は好調さの余韻を残して、輝かしい未来の幕開けにふさわしい堅調な年明けを期待したのですが、そうはなりませんでした。本当にむずかしい世の中になったものです。

 

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イランでは新年早々から、英雄・ソレイマニ司令官の葬儀がすべてのイラン国民の嘆きの中で挙行されました。ハメネイ師やロウハニ大統領など指導部は、何が何でもアメリカには報復せずには済まされないという状況に追い込まれました。

 

それだけにマーケットにとって、近い将来には悪いことしか思いつかないという緊迫した年明けとなりました。

 

大発会の1月6日(月)は案の定、株式市場は全面安のスタートとなり、日経平均は取引開始早々に▲500円まで売り込まれる出だしとなりました。

 

火曜日は小幅反発に転じて小康状態を保ちましたが、続く水曜日。東京時間の開始直前にイランからイラクの米軍基地に弾道ミサイルが撃ち込まれ、ここで緊張は頂点に達しました。日経平均は▲600円を記録し、午前中の段階で一時、23,000円の大台を割り込みました。

 

しかしこれが当面の株価のボトムとなりました。イランは報復措置には打って出たものの、標的は周到に計算されて米軍の被害は最小限のものにとどめています。トランプ大統領やその側近たちが10手、20手先まで相手の出方を読んで、その上で最もシビアな軍事作戦を選択したとは思えないのですが、それでもミサイル発射後の演説では、軍事的な「報復の報復」には踏み切らないことを明らかにし、経済制裁の強化だけにとどめられました。

 

中東を巡るイランと米国の紛争は、現在のところではここまでの経緯で小休止となりました。「マーケット・アナライズ+plus」の今年最初の回にゲストとして出演された大和証券の木野内栄治さんは、軍事的な行動が実施されると株価は上昇するが(いわゆる「銃声がなったら買い」)、本格的な上昇に転じるには2週間程度の様子見の期間が必要と指摘されています。

 

それでも今回の株価急落は、ごく短期間だけの変動であったために、世界経済への影響はかなり限定されたものになると見られます。何よりも決定的だったのは原油価格の動向です。

 

中東情勢に敏感なWTI先物は、一時63ドル台まで急伸しましたが、あっという間に59ドル台まで戻りました。米国の株式市場は最高値付近で安定しています。昨年9月中旬に起きたサウジの製油所爆撃の時も、原油市況の高騰はわずかな期間にとどまりました。

 

今や中東産原油は必ずしも戦略物資ではなくなってしまったかのようです。それだけ米国の成し遂げた「シェール革命」の影響が大きいということですが、より長期で見れば化石燃料の代表格である原油は、エネルギーとしての役割がどんどん小さくなってゆくことの現れととらえることもできます。

 

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今回の中東地域をめぐる地政学的リスクの高まりはいったんは収束に向かっています。しかしおそらく2020年は、このような形の市場リスクが何度も顕在化することになるのではないでしょうか。

 

どんなに不確定な要素でも、事前に予想される物事はマーケットを動かす力はなく、まるで予想もできないところから突如として現れる不確定要素が市場を攪乱します。突発的な出来事によってマーケットは激震を余儀なくされますが、その動揺が時間とともに消えてしまえば、また粛々と上昇トレンドに戻ってくるという繰り返しです。

 

社会の在り方が揺さぶられるほどの事件が突発的に発生し、それに伴ってマーケットも激しい価格変動を余儀なくされるでしょうが、しかしそれらはいずれもごく短期間に収束に向かい、また再びそれまでにつけた高値水準に向かって、ゆるやかに上昇を開始するというイメージです。

 

世界の目がイラン問題に集中していた一週間、数少ない僥倖としては、中国の株式市場が実に安定した値動きを続けていた点です。

 

一昨年、昨年とマーケットにおける最大のかく乱要因は、中国と米国の貿易上の対立でした。それは現在も続いていますが、昨年暮れにまとまった貿易交渉における部分合意は、調印は今月半ばになるものの、しっかりと市場心理を安定させるに役立っています。

 

米中の部分合意によって世界経済の底割れはない、という確信を持つことができるようになりました。ファーウェイに対する厳しい製品の輸入制限措置は続いているものの、各国では確実に5G向けの設備投資や、「CASE」と呼ばれる自動車業界での研究開発投資は続いています。

 

そのような世の中の巨大な潮流に株価は敏感に反応しており、全面安のさなかにもソニー(6758)や・・・

 

(後略)

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鈴木一之