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2023年5月8日

日本が連休中のNY株式市場、4日続落後に大きく反発

鈴木一之

鈴木一之です。好天に恵まれたGWも終盤に差しかかりました。観光地やイベント会場はどこもたいへんな賑わいです。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

まもなく通常の生活が戻ってきます。日本が休日を採っている間に、海外市場ではかなりドラマチックな展開が繰り広げらていた模様です。本稿の後半ではNY市場を中心に時系列で今週の動きを追いかけてみます。

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今週の東京株式市場は、TOPIXが4週連続で上昇しました。連休の谷間で立ち合い日数が2日間しかなかったのですが、それまでの堅調な地合いをそのまま継続しました。週間の上昇率は+0.88%にとどまり、前の週の+1.10%より縮小しています。

規模別では大型株と中型株に物色が偏りました。小型株も続伸していますが上昇率は限定的でした。新興市場の東証マザーズ指数は3週連続で下落しました。

スタイル別では、グロース株の上昇がバリュー株を上回りました。大型グロース株の上昇が顕著となっています。

日経平均採用銘柄のうち、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っている銘柄数は104銘柄となり、前週比で2銘柄減少しました。採用銘柄(225銘柄)全体の46%を占めています。

テクニカル面では、騰落レシオが5月1日に140.67%に達し、過熱圏とされている120%を大きく超えて一段高となりました。週末も136.96%を維持しています。日経平均のサイコロジカルラインは、先週半ばに「10」を2日続けた後、「9」の状態を5日間続けています。

日経平均ボラティリティ指数は4週ぶりに上昇しました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、15業種が値上がりし、2業種が下落しました。立ち合い日数が少なかったのですが、値上がりセクターの数は前の週と同じです。

値上がり上位のセクターは「電機・精密」、「機械」、「医薬品」です。反対に値下がりセクターには「不動産」、「建設・資材」が登場しました。

前の週に上昇したセクターが下落し、反対に前の週に不人気だったセクターが上昇しています。それだけ出遅れ株に対する循環物色が強まった週となります。

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値上がり上位の「電機・精密」では、これまで下げ基調の目立っていた半導体関連株が大きく上昇しました。HOYA(7741)、アドバンテスト(6857)、イビデン(4062)が中心です。「機械」でもディスコ(6146)が再び大きく動意づきました。

それとともに日立(6501)、三菱電機(6503)、NEC(6701)、パナソニック(6752)、キヤノン(7751)など出遅れ気味の銘柄に対して買いが向かっています。ダイキン工業(6367)、コマツ(6301)、ジェイテクト(6473)の機械株も動きが顕著になっています。

製造業、非製造業を問わず循環物色の色彩が次第に濃くなっていることが見てとれます。

値下がりセクターの上位となった建設や不動産にしても、前の週までの上昇が一服したというだけにとどまっており、何日かの休養ののちにすぐに動き出すことのできる位置につけている状況がうかがえます。

いずれのセクターも大きな押し目を作らないまま、次の上昇ラウンドに入ってゆくことが十分に考えられます。

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5月1日(月)

日経平均:29123+267
NYダウ:34051▲46
NASDAQ:12212▲13
米10年債金利:3.57%
原油WTI先物:75.63ドル
日経225先物:29260

米国では経営不安が高まって株価が急落していたファースト・リパブリック・バンク(FRC)が連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれました。事実上の経営破綻です。

すかさずJPモルガン・チェースが買収に名乗りを上げ、例によって「週末の金曜日から週明けの月曜日にかけて」の銀行破綻→救済買収、というスキームが動いています。

市場ではシリコンバレーバンクやFRCの問題は、あくまで「個別の銀行の問題」という見方が強まっています。しかしそれがかなりの数の銀行に及んでいることから、地銀全体に対して不安が広がっているのも事実のようです。

3月後半のシリコンバレーバンクの経営破綻に端を発する金融システム不安がここに来てぶり返しています。連鎖的な経営不安の広がりを防ぐ手立てが金融当局によって大急ぎで講じられており、このあと週後半まで地方銀行の株価が揺さぶられることとなりました。

ウクライナ戦争に関しては、ゼレンスキー大統領が「間もなく重要な戦闘が始まる」と演説で語りかけ、ロシアからの領土の奪還に向けて反転攻勢の大規模な戦闘開始が近いことが示されました。

週後半にはモスクワ上空に正体不明のドローンが襲来し、ロシア政府は「米国の指示を受けたウクライナによる攻撃」だと米国を名指しで非難しました。これに対して米国は事実無根と強く否定していますが、いよいよ米ロ間の直接の紛争につながりかねない情勢で、世界中に不穏な動きが広がりつつあります。

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5月2日(火)

日経平均:29157+34
NYダウ:33684▲367
NASDAQ:12080▲132
米10年債金利:3.42%
原油WTI先物:71.61ドル
日経225先物:28770

日本株は5連休を控えていますが、日経平均は続伸して終了し年初来高値を更新しました。

前の週の金曜日に行われた日銀の金融政策決定会合において、植田総裁の下でも大規模な金融緩和が続くとの見方が強まりました。円は137円台後半まで下落し、半導体関連株や自動車・自動車部品株など外需関連株が幅広く物色されました。

NEC(6701)、TDK(6762)、コマツ(6301)、オリンパス(7733)などの出遅れ株が幅広く物色されました。

米国市場ではFOMCを控えて、地銀に対する連鎖的な破綻が起こりかねないと引き続き不安が広がっています。身売りの噂が広がったパックウェスト・バンコープの株価が40%近く下落し、ウエスタン・アライアンス、ザイオンズなども急落しました。この状況で開催されるFOMCでは利上げなど実施できるのか、市場心理は懐疑的になっています。

また原油価格が大きく下落したため、シェブロンをはじめエネルギー株も下げました。

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5月3日(水)

日経平均:(休場)
NYダウ:33414▲270
NASDAQ:12025▲55
米10年債金利:3.34%
原油WTI先物:67.29ドル
日経225先物:28680

日本は大型連休に入りましたが、NY市場では注目のFOMCの結果を受けて、ダウ工業株が▲270ドルと大きく続落しました。

FOMCでは事前の予想通りにFFレートの0.25%引き上げが決定されました。5月1日にファースト・リパブリック・バンクの経営破綻が起こったばかりですが、利上げ方針は揺るがず予想通りの決定となりました。

ただ市場予想は「これで利上げは打ち止め」という方向に傾いていましたが、FOMC声明文では今回で利上げの打ち止めが匂わされたものの、期待されたほど明確な言及とはなりませんでした。

パウエル議長も終了後の記者会見で「インフレはそれほど早期には収束しない」との認識を示し、年内の利下げ転換には否定的なスタンスを示したことも株価の下落につながりました。

パックウエスト・バンコープやウエスタン・アライアンスなどの地銀株が大きく下落し、原油価格が一段安となったことからエネルギー株も続落しました。

米国債は2年債や10年債の利回りが急低下して、134円台後半までドル売り・円買いの動きが強まりました。

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5月4日(木)

日経平均:(休場)
NYダウ:33127▲286
NASDAQ:11966▲58
米10年債金利:3.38%
原油WTI先物:68.78ドル
日経225先物:28610

地銀株が連日のように軟調で、NYダウ工業株は4日続落となりました。身売り報道のあったパックウエスト・バンコープが50%も急落し、ウエスタン・アライアンス、ザイオンズなどの地銀株の動揺が収まりません。

3日のFOMCでは、パウエル議長が記者会見で早期の利下げ転換を否定したことで、金融引き締めの長期化を飛び越えて、米国景気の鈍化が懸念されて株価が押し下げられました。

パウエル議長は会見で銀行の経営破綻にも言及し、「銀行システムは健全かつ強靱」と従来通りの表現で状況を説明しました。それとどもに規制・監督にも触れ、「我々は間違いを犯した」とも述べて今後は規制強化を急ぐことも示しました。

それでも市場の不安は拭えず、株式市場では地銀株の激しい下落が続いています。

それとは別に、議会における政府債務の上限引き上げ問題も徐々にリスク要因として意識されつつあります。このままでは6月1日に米国債がデフォルトに陥ることになり、前代未聞の事態として警戒心が高まりつつあります。

原油価格の急落も続いています。WTI先物は63ドル台に1年5か月ぶりの安値まで下落しました。金融引き締めの長期化が景気後退、および原油需要の減退につながるとの見方が広がっています。

原油市況がここまで下落すると、OPECプラスによる追加減産の可能性が浮上します。次回のOPECプラス会合は6月4日、それまでは神経質な展開が予想されます。

ヨーロッパでもこの日、ECBが0.25%の追加利上げを決定しました。利上げ幅は3月までの0.5%から縮小されましたが、消費者物価の伸びが再び加速しており、ストライキも欧州各国で頻発していることから、インフレへの警戒が一段と強まっています。

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5月5日(金)

日経平均:(休場)
NYダウ:33674+546
NASDAQ:12235+269
米10年債金利:3.44%
原油WTI先物:71.32ドル
日経225先物:29070

週末にようやくNY株式市場は反発しました。NYダウ工業株は5日ぶりの反発で+1.7%も上昇。NASDAQは+2%を超える値上がりを記録しています。

ロイターが「米金融当局が銀行株の市場操作を模索している」とが報じたことで、

(後略)

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鈴木一之