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2024年3月4日

日経平均は史上最高値からさらに上昇、週末は39,990円に到達

鈴木一之

能登半島地震で被害に遭遇された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

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日経平均が史上最高値を更新してから1週間が経過しました。当初はさほど感じなかったのですが、世の中が確かに変わり始めたような気がしています。

NY株式市場でも先週は、NYダウ工業株やS&P500に続いて、NASDAQまでがついに史上最高値を更新しました。2年3か月ぶりのことです。中心はやはり生成AIであり、エヌビディアです。

エヌビディアの株価は3月1日(金)も最高値を更新して、ついに800ドルの大台を突破しました。時価総額は初めて2兆ドルの大台に達しています。エヌビディアの上にはマイクロソフトとアップルしか存在しません。

エヌビディアのGPU(画像処理半導体)を搭載するデル・テクノロジーズのサーバーに引き合いが強く、デルの決算が好調だったことが直接の要因です。そのニュースがエヌビディアの株価を押し上げています。

生成AIの出現によって、いまやAI市場には第4次ブームが到来していると見られています。日本でも最近ではAI関連株がたくさん上場していましたが、それらはいずれもつい最近まで青息吐息の状態でした。それがエヌビディアの急伸とともに急速に息を吹き返しています。

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生成AIは膨大な半導体の需要とエネルギーの需要を発生させます。それが現在、世界の姿を一変させています。

バイデン政権のレモンド商務長官は先週初に、最先端の半導体市場で主導権を握るという米国の方針を改めて表明しました。今後10年間で世界の最先端のロジック半導体の20%を米国が握るという計画を発表し、そのために400億ドル(6兆円)の補助金を用意しました。

このニュースが週の初めに伝わるやいなや、日本でも半導体関連株が再び(三たび?、四たび?)全面的に物色されました。

東京エレクトロン(8035)、ディスコ(6146)、信越化学工業(4063)などの大型株から、野村マイクロ・サイエンス(6254)、TOWA(6315)、ローツェ(6323)、日本マイクロニクス(6871)の小型株までが一斉に上場来高値を更新しています。これこそが日経平均を史上最高値更新にまで押し上げた最大の要因です。

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半導体関連株の広がりは製造装置や部材メーカーばかりでなく、半導体以外のセクターにも及んでいます。

TSMCの第1工場が2月末に突貫工事によって開所式を迎えて、この秋から本格的な出荷を始めます。そのおひざ元の熊本県はたいへんな経済効果に沸いていると伝えられますが、それにとどまらず九州全域に好影響が波及しています。

まさに「シリコン・アイランド」、九州のパワー全開といったところです。かつての熊本銀行、現在の九州フィナンシャルグループ(7180)が大幅高を続けており、上場来高値を更新しました。

同じように西日本FH(7189)、ふくおかフィナンシャルグループ(8354)やJR九州(9142)まで大幅高となりました。

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半導体関連株ばかりではありません。待望の「出遅れ循環物色」が東京株式市場でも始まりつつあります。

このところ、株式市場での物色動向は特定の銘柄に偏っており、一極集中的な動きが中心となっていました。これではいくら日経平均が最高値を更新しても、利の乗っている投資家層は限られるという弊害がついてまわりました。

それが先週の株式市場を見る限り、かなりの範囲で出遅れ銘柄が物色され始めています。もちろんそこには「業績が好調である」という最低条件が付されておりますが、それでもこれまでは素通りされてきたようなセクターにも上昇気流が波及しつつあります。

その代表格が鉄鋼株です。JFEホールディングス(5411)がアナリストによる投資判断の引き上げをきっかけに昨年来高値を更新しています。

その動きに刺激されて、日本製鉄(5401)、神戸製鋼所(5406)、共英製鋼(5440)にも動きが見られました。さらに機械、非鉄、自動車、ゴム、金属製品など製造業全体にも、株価の上では明るさが広がるようになっています。これが最大の変化です。投資家層が拡大してきたのでしょうか。

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ただし世の中がそこまで楽観論一色になっているかというと、もちろんそうではありません。能登半島地震のライフラインの復旧には時間がかかっており、歯がゆいほどはかどっておりません。

ロシアによるウクライナ侵攻は2月末で3年目に突入しました。死者の数は3万人を越え、なお増加しています。西側諸国からのウクライナへの資金支援も滞るようになりました。ガザ地区での戦闘もそれ以上に悲惨でまったく先が見えません。

経済面では、中国の1月・製造業PMIは5か月連続で分岐点の「50」を割り込みました。不動産不況が長引く上に、ここに来て海外企業が生産拠点を中国国外に移し始めており需要不足が鮮明です。

製造業が厳しいのは日本も同様です。経済産業省が発表した1月の鉱工業生産は、生産が前月比▲7.5%の落ち込みとなりました。ダイハツ問題による工場稼働停止が影響して自動車工業や汎用機械、業務用機械が冷え込んでいます。

米国でも2月のISM製造業景況感指数は、16か月連続して「50」割れでした。22年ぶりのことです。引き続き各国で「製造業不況」の様相が見られます。

これによって市場ではFRBを中心に、各国中央銀行が利下げへの転換局面を迎えているとの見方が再度強まっています。

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海外や製造業ばかりではありません。日本国内でも経済の調整圧力はいまだ強く残っています。

資生堂(4911)は45歳以上の社員に早期退職を募集し始めました。ワコールは150人の早期退職の募集に対して、215人の応募があったと発表しています。コロナ禍で経営環境が大きく変わってしまった企業には、いまだ需要が戻っていないようです。

小売業の構造改革といえばイトーヨーカ堂です。1月から募集した早期退職に2月末で700人の応募があったと発表しました。これは同社の45歳以上の社員の2割に当たり、かなりの割合になります。

リストラが勧告されると優秀な人から辞めていくと言われます。今はサービス産業ほど人手不足が激しく、早期退社を選んでも再就職は比較的容易と推察されます。

イトーヨーカ堂を擁するセブン&アイホールディングス(3382)に関しては、イトーヨーカ堂を売却、本体から切り離す案件を目下検討中、と報道されました。

会社側は即、否定コメントを発表していますが、事実であればそごう・西武百貨店に続いて主要事業の切り離しとなります。かつてアクティビティストが要求したような抜本的な構造改革に、セブン&アイもついに動き始めたことになります。

一方で人手不足は深刻です。すかいらーくHDは、過去10年間で最大の6%の賃上げを発表しました。10%の賃上げを発表した松屋フーズHDの株価は連日のように高値を更新しています。賃上げを断行する企業、人員削減を実施する企業、二極化は株式市場だけではなく、実社会の方がより明確に表れています。

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アクティビティストの動きも活発化しています。

あおぞら銀行(8304)は2月1日に下期の無配転落を発表して、わずか1か月弱の株価下落局面で旧村上ファンドが株式の5%超を取得して大株主に登場しました。

舞台の場面転換のスピードはかつてなく早まっています。持ち合い株式の保有を通じた「モノ言わぬ株主」は次々と去り、それに代わって隙あらば「モノ言う株主」がすぐに乗り込んでくる緊張感が経営陣に生まれています。

三菱商事は「ケンタッキーフライドチキン」を運営する日本KFCホールディングスの株式をすべて売却すると発表しました。代わってローソンを非上場化して集中的にテコ入れします。

イオンは傘下のウエルシアHDとドラッグストア2位のツルハHDとの経営統合を進めています。

ここからは3月決算企業にとって2か月後の本決算の発表と、その後の株主総会が注目されます。いつまでもPBRが1倍を割り込んだままの状態は許されません。これが大きな変化のポイントです。

5月に日経平均はいったいどのあたりの水準にいるのでしょうか。まるで予想が立ちませんが、企業の内部からの大きな変化が待ち受けていることだけははっきりしています。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが5週連続で上昇しました。上昇率は前の週の+1.37%から+1.83%へとわずかに拡大しました。。

規模別では、大型株(+2.13%)が中・小型株を圧倒しています。それでも中型株(+1.10%)、小型株(+1.70%)とまずまず堅調な値動きでしたが、大型株に物色が集中する流れが戻ってきました。

スタイル別では、バリュー株(+1.71%)に対してグロース株(+1.95%)となり、先週はグロース株がわずかながら盛り返しました。半導体関連株が集中的に物色されている影響が見られます。

騰落レシオは週末は107.11%にとどまり、ほとんど上昇していません。日経平均が史上最高値を更新しても物色対象が限られており、全面高とはなっていない状況が反映されています。引き続き物色の二極化によって、騰落レシオが上昇しにくい状況です。

日経平均のサイコロジカルラインも「6」のニュートラルの状態にとどまったままで推移しています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は16業種が上昇し、値下がりしたのは「食品」だけでした。広範囲なセクターの上昇が続いています。

値上がり上位のセクターは「銀行」、「機械」、「エネルギー資源」でした。

「銀行」は前述のように九州地区を地盤とした地銀各行の値上がりが際立っていますが、そればかりでなく京都FG(5844)、ひろぎんHD(7337)、七十七銀行(8341)、八十二銀行(8359)あたりも含めて広く物色されました。

三菱UFJ(8306)、三井住友FG(8316)、みずほFG(8411)の3大メガバンクに加えて、三井住友トラストHD(8309)も力強い上昇となりました。NISAマネーの受け皿「楽天証券」の窓口と目される楽天銀行(5838)も活況です。

銀行セクターを巡っては、(1)日銀のマイナス金利の解除の思惑=利ザヤ改善、(2)熊本県のような次なる地域振興への期待、(3)NISAマネーで金融業界が活性化、(4)インバウンド消費、地方移住、事業承継などビジネス機会が豊富、(5)株高で有価証券の含み益拡大、(6)配当利回りの高さ、PBRの低さ、など材料満載です。

値上がり第2位の「機械」は、先行したディスコ(6146)、

(後略)

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鈴木一之