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2024年2月27日

日経平均が34年ぶりに史上最高値を更新

鈴木一之

能登半島地震で被害に遭遇された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

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日経平均が史上最高値を更新しました。感無量です。言葉にならないとはこのことです。
この3連休中に朝晩のニュース番組でも大きく取り上げられ、日本中が大騒ぎとなっています。

私は2月22日(木)のその瞬間を株式実況中継のインターネット番組で生放送を担当していたのですが、後場寄り直後に日経平均が最高値を越えた時は、思わずペンを持つ手が震え、唇もわなわなと震えて、なぜかうっすらと涙まで浮かびました。

正直に申し上げて、このような日が来るとは思っておりませんでしたので、それほどまでに日本の株式市場にとって、80年代バブルの象徴でもある1989年12月29日のあの「38,915円」は高い壁でした。それをいとも簡単に更新してしまいました。

ものごとにはすべて2面性があります。表と裏、長所と短所、明と暗。

日経平均の新高値更新によって、日本経済の明の部分の記述は巷にあふれています。ここでは少し暗の部分も記しておきたいと思います。

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35年前の1989年は平成元年。年明け早々に昭和天皇が崩御され、昭和から平成へと元号が変わった年でした。その年の大納会に記録したのがあの「38,915円」の最高値です。

世の中はまさにバブル絶頂の頃です。「日経平均はすぐにも4万円になる」、「そんな程度ではなく、年末には10万円になる」という、今から思えばとんでもない楽観論が世の中を支配していました。

この年を象徴する出来事は「リクルート事件」と「天安門事件」。ヒット番組は「いかすバンド天国(いか天)」。誰もが日本の明日を信じて疑わない時代でしたが、すでに社会のあちこちにひずみは生じていました。

土地担保融資で膨れ上がったジャパンマネーは万能の威力を持ち、三菱地所がロックフェラーセンターを買収し、世界中から好機の眼で見られていた時期です。

幸福感にあふれる年末年始を過ごして、そうして迎えた1990年。大発会から音を立てて株価が崩れていったことを昨日のことのように思い出します。売り気配で値がつかない恐怖を初めて体感しました。

目の前で株価が毎日▲1000円ずつ下落するという、言葉にすることもむずかしいほどの激しい下落、全銘柄、全業種が毎日値下がりする厳しい状況が、1993年まで長期にわたって続きました。

バブルが破裂したその当時は、いったい何が起きているのかまるで理解できませんでした。バブルをバブルと認識できなかったことが最大の理由です。

おそらくは多くの人が同じような気持ちでいたのではないでしょうか。バブル時に株式投資で大きく資産を増やした人はたくさんいましたが、その同じ人たちがバブル崩壊で大きな損失をこうむりました。

株価の押し目で買ってさえいれば間違いなく儲かった1986-1989年と、その翌1990年からは押し目買いが必ず損失をもたらす局面に、場面はいっぺんに暗転したのです。結局のところ、バブル景気を通じてトータルで利益を挙げた人はほとんどいないのではないでしょうか。

ロスチャイルドの言葉、「私は誰もが儲かって儲かって仕方のない時に、早すぎるほど早いタイミングで手を引く」という教えを身に染みて覚えました。

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そこから先は戦後初めて経験する、日本経済の受難の時代です。「不良債権処理」はアングラ社会の存在をちらつかせ、罪のない大学卒の若い人々は「就職氷河期」に巻き込まれました。そんな状況が10年以上続きます。

証券会社は上場企業の得意先には「損失補填」で損失をカバーして、その穴埋めはどこかに「飛ばし」てたらい回しにしていました。損失補填は高級官僚の了解の下で行われていたのだと公けに証言した証券トップは更迭され、社会から姿を消しました。

官僚は自らの失敗を認めず、不良債権処理は延々と先送りされました。ベアは凍結され、「これからは能力給の時代だ」と財界トップが音頭を取りました。能力給という名のリストラの嵐が吹き、前向きの設備投資はほとんど行われなくなりました。

1995年から米国で始まったインターネット革命に、日本社会と上々企業がまるで乗れなかったのも無理のないことです。ネット革命に乗ることのできたのは、ファーストリテイリング、ソフトバンク、ニトリ、楽天など、銀行としがらみのない小型の新興企業です。

非正規雇用が増えてゆき、社会全体にどうしようもない閉塞感が生れたことは忘れられません。「失われた10年」は「失われた20年」になり、アベノミクスをはさんで、結果的に「失われた30年」にまで拡大しました。

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話題を変えて、アベノミクスには功罪両面があると思いますが、誰もが認めるように「功」の部分は、企業に対するガバナンス改革です。

日本企業は確実に変化しています。今では「東証市場改革」となって、資本コストを意識した経営の要請はさらに一段高められています。

真摯に取り組んでいる日本企業の一部は、今後も利益率を高めてゆくことでしょう。その部分にのみ海外からの投資マネーが流れ込んでいます。投資効率の高い企業、利益率の高い企業、よく稼ぎよく配当を支払う企業に対する、投資マネーの一極集中は今後も続くと見られます。

半導体関連株の波状的な上昇は今後も続くと見られます。しかし株式市場の物色テーマは半導体ばかりではありません。幅広い銘柄が取り上げられることになるでしょう。循環物色のサイクル的な動きを上手にとらえてゆきたいものです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが4週連続で上昇しました。上昇率は前の週の+2.61%から+1.37%に縮小しましたが、それでも立派な上昇です。

規模別では、大型株(+1.35%)、中型株(+1.37%)、小型株(+1.55%)といずれも堅調な値動きでした。大型株に集中する流れが少し緩和しています。

スタイル別では、バリュー株(+1.80%)に対してグロース株(+0.93%)と、半導体関連株が集中的ににぎわっている割にバリュー株が優勢の展開となりました。

騰落レシオは、日経平均が新高値を更新した割に静かな展開です。週末は107.65%にとどまりました。物色の二極化が強まっているため、騰落レシオが上昇しにくくなっています。日経平均のサイコロジカルラインも「6」に低下しています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は14業種が上昇し、3業種が値下がりしました。引き続き広範囲なセクターが値上がりしています。

値上がり上位のセクターは「商社・卸売」、「自動車・輸送機」、「鉄鋼・非鉄」でした。

「商社・卸売」は三菱商事(8058)、三井物産(8031)、双日(2768)が新高値を更新しました。中国が住宅ローン金利を引き下げ、景気刺激的な政策に転換した効果がこのあたりに現れている可能性があります。

半導体関連株の上昇を受けて、リョーサン(8140)、東京エレクトロンデバイス(2760)などの半導体商社も復活しています。

「自動車・輸送機」ではトヨタ自動車(7203)が上場来高値を更新し、ホンダ(72679、デンソー(6902)、愛三工業(7283)までが堅調です。必ずしも半導体一辺倒の物色でもなさそうです。

同様に「鉄鋼・非鉄」では、JFEホールディングス(5411)が4月からの全品目値上げを好感して堅調でした。合同製鉄(5410)、大同特殊鋼(5471)、共英製鋼(5440)ほか、鉄鋼株が幅広く買われています。

反対に値下がりセクターの上位は「医薬品」、「金融(除く銀行)」、「情報通信・サービス」でした。

「医薬品」は中外製薬(4519)、

(後略)

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鈴木一之