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2021年7月20日

日経平均は週間では反発したものの、マーケットは静かな波乱が広がる

鈴木一之

◎日経平均(16日大引):28,003.08(▲276.01、▲0.98%)
◎NYダウ(16日終値):34,687.85(▲299.17、▲0.85%)

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静岡県熱海市に続いて中国地方、九州地方の豪雨被害に遭遇された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。

関東地方は梅雨明けしましたが、依然として日本各地で大雨が降っています。本日は高知県と愛媛県の一部に土砂災害の恐れから避難指示が出されています。

東京オリンピックの開幕まで1週間を切り、台風が接近しているとのことです。猛暑、大雨がひどくなりませんように。とにかく無事に開催できることを祈っています。

先週のマーケットはかなり荒れ模様となりました。大谷翔平選手が100年ぶりに投打の二刀流を披露したメジャーリーグのオールスター戦が遠い過去の出来事のように感じられてしまいます。

1週間前の金曜日に一時▲700円以上の下落があって、その反動から週明けは戻り歩調で始まったのですが、週半ばから再び軟調な動きが強まりました。

果たして今のマーケットにはどれくらいの悪材料、不安要素があるのか、数え切れないほどです。そしてやっかいなのは、どの悪材料が株式市場と債券市場に対して不安を呼び起こしているのか、はっきりとわからない点です。その不透明要素を書き出してみます。

1、コロナ感染者数が世界中で増加。東京都に緊急事態宣言が発出されて1週間が経過し、東京オリンピックの開幕まで1週間を切ったこの時点で、東京都の新規の感染者数が7月17日(土)に1400人を超えました。これは1月21日以来の高い水準です。28日連続で1週間前の実績を上回っています。

2、工場の停止、駐在員の帰国も始まっていること。インドネシアはいまやコロナ感染者数の爆発と医療崩壊で世界最悪の状態にあり、タイ、マレーシア、ベトナムなどアジア各国でも感染者数のピーク更新が続いています。日本企業の製造拠点が相次いで閉鎖され、駐在員は帰国を急いでいます。トヨタは工場の一時停止を決めました。

トヨタの工場一時停止は、暴動が激化する南アフリカでも同様で、さらには半導体不足に解消のメドが立たない日本国内でも一部の工場の操業がストップしました。

3、日本ではモデルナ製のワクチン調達が遅れ、各自治体は新規の予約受付を停止せざるを得ない状況にあること。7月中にすべての高齢者の方の接種を終える目標の達成がきわどくなってきました。デルタ株の感染が広がっている64歳以下の若い世代への接種も遅れることとなりそうです。

4、異常気象は日本だけでなく世界で猛威をふるっています。ドイツ西部とベルギーではかつて経験したことのない豪雨に襲われ死者が150人に達しました。しかもいまだに行方のわからない人が1000人以上にのぼる模様です。欧州での生産活動が滞り、気候変動対策は間違いなく急がれることとなります。

先週、EUは2035年に域内でガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止しました。国境炭素税も導入されることになり、環境性能に劣る製品には実質的に関税がかかることとなります。

5、日本では新たなエネルギー基本計画の策定が混乱していること。7月21日に新しい計画が決定される予定でしたが、原発の比率は将来も20%台が維持され、メイン電力に太陽光発電が置かれるなど、当初描いていた案よりも大きく後退する見込みとなっています。菅政権は環境省vs経済産業省の間の意見調整を行えないようです。

6、日本では内閣改造の思惑が浮上していること。西村経済財政担当相が言及したコロナ対策の行き過ぎ(金融機関や酒卸業者への通知)を見ても、やっていいこととやってはいけないことの区別がつけられません。
生活がかかっている中小・自営の飲食店はあまりの高圧的な姿勢に嫌気がさして、お店を再開するところも増えています。衆院議員の任期があと3か月に迫っており、解散総選挙が9月にも実施されることになりますが、NHKが最近実施した世論調査では、内閣支持率が菅政権の発足以来、最低の43%まで低下しています。人心を一新するためにも内閣改造の必要性が浮上しています。

7、米中対立の激化が確実に深まっていること。中国は米国市場への上場審査を事実上、自分たちの手で行うこととする方針です。米国も人権問題に関する報告書をまとめ、衣料品各社や太陽光パネルなど素材メーカーは2次下請け、3次下請けにまで調達先を精査し直す必要が出ています。

米国ははもうひとつ、GAFAを念頭に置いた大企業に対する独占禁止の規制強化を大統領令として発令しました。先週はマイクロソフト、アルファベット、フェイスブックに続いてアップルも史上最高値を更新しましたが、テクノロジー株にも選別色が強まっており、すべてが上昇しているわけではありません。

8、物価の上昇に歯止めがかからないこと。6月の米国CPIは+5.4%の高い伸びを維持しました。FRBがテーパリングの開始を急ぐ、急がないの議論が再び錯綜しています。

その一方で米国の10年国債金利は再び低下基調をたどっています。金利上昇が警戒される以上に、今では金利低下の方が警戒されています。台湾の半導体大手、TSMCが4-6月期の決算を発表し、純利益は+11%もの伸び率を記録しましたが、市場予想には届きませんでした。「高圧経済」か「適温相場」か、を巡る議論を交わしているうちに、マーケットには米国経済のピークアウト感を心配する空気が広がりつつあります。

上記のような市場に対する入り組んだ見方が交わされるうちに、日本の株式市場は次第に下値を切り下げる展開となりつつあります。複雑に絡み合う悪材料のうちの、いったいどれが本当の株価軟調の原因なのか、しばらくはその模索が続きそうな雲行きです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXは3週間ぶりに反発しました。上昇率は+1.04%に達しまずまずの大きさですが、これは月曜日に日経平均で+628円の大幅な上昇となった貯金が大きかったようです。

その後は週が進むにつれて軟調な動きの方が目立っており、週足では金曜日の方が月曜日よりも安い「陰線」を記録しています。

規模別指数では小型株がしっかりした週となりました。グロース株とバリュー株でも、小型バリュー株が+2%を超える上昇を記録する堅調さで、大型グロース株は上昇がかなり限定的でした。ただし東証マザーズ指数は続落しています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターは15業種に広がり、反対に値下がりセクターは「運輸・物流」と「医薬品」の2業種にとどまりました。

値上がりセクターのトップは「建設・資材」です。先週は小売企業の決算発表がピークを迎えたこともあって、内需系セクター、内需系銘柄の堅調さが目立ちました。

中でも建設セクターに関しては、大手ゼネコンをはじめとして久しぶりに建設株が幅広く上昇しました。

きっかけとして、全国で相次ぐ豪雨による土砂災害があるようにも考えられます。7月14日(水)の日本経済新聞1面には「鉄道1900キロに土砂災害リスク」の記事が掲載されました。

日本経済新聞が独自で調べたところ、土砂災害の警戒区域にかかっている全国の鉄道路線の区間はすべて合計すると1900kmを超えるそうです。これは直線距離では北海道から九州までの長さを超えることになり、それだけ日本列島は膨大な自然災害によるリスクを抱え込んでいることになります。

鉄道会社ごとに見ると、JR西日本が529kmで最も長く、特に山間の地域の多い山陽本線や山陰本線に集中しています。海岸線に山が迫っているJR東日本やJR九州がそれに続くことになります。

これらの路線は激しい雨が降れば土砂災害のリスクが高まり、事前に補修するにも膨大な経費がかかります。どちらも財政面のリスクを抱えており、それを避けるために廃線に踏み切る鉄道会社が増えると、その地方の暮らしが成り立たなくなります。今後も社会資本整備に工夫を凝らす必要が生じます。

値上がりセクターの第2位が「金融(除く銀行)」でした。オリックス(8591)、

(後略)

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鈴木一之