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2023年12月26日

日銀決定会合を受けて急騰と急落、NYダウは連日の最高値更新

鈴木一之

鈴木一之です。クリスマスシーズン真っただ中です。マーケットは今週もNYダウ工業株の史上最高値で幕を開けました。

例年であればクリスマス休暇を言い訳に閑散なマーケットになっているはずですが、今年は様子がまるで異なります。

米国では2年近く続いたインフレとの対決が最終局面に近づいているとの認識が広がり、株式市場は活況のうちに今年の取引を終えそうな勢いです。金利の動きに一喜一憂した今年の市場を総括しても、FRBとパウエル議長の手腕をたたえる安心と楽観に満ちたものとなりそうです。

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しかしその一方で、マーケットを取り巻く環境にはネガティブな話題やニュースが続出しているのも現実です。

ハマス掃討のためのイスラエルによるガザ地区への空爆は容赦なく続き、連日のように死者の数が増えています。国際社会ではイスラエルを非難する声が急速に増えていますが、停戦のきっかけはまるで見えません。

戦闘激化に関連して、中東情勢は混迷の度合いを深めています。イエメンの武装組織・フーシ派は、紅海を航行する船舶への砲撃を無差別に開始しました。これを受けてBPは危険回避のために紅海での運航を停止し、日本の海運大手もそれに追随しています。

せっかく収まりかけた海上運賃の高騰が再び上昇リスクにのぼっており、波乱の展開を先取りして先週は海運各社の株価が急上昇しました。川崎汽船(9107)は上場来高値を更新しています。

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日本では政治とカネの問題が噴出しています。週初は東京地検がパーティー券販売による裏金容疑、政治資金問題で自民党の安倍派と二階派の事務所を家宅捜索しました。これまでに安倍派の閣僚、自民党幹部などリーダー格の5人が辞表を提出しており、岸田政権の支持率低下に拍車がかかっています。

マスメディアによる12月の世論調査では、内閣支持率は軒並み20%に落ち込みました。自民党が政権与党に復活した2012年以降では最低レベルです。

不正と言えば公正取引員会は、大手損保4社に対して企業保険でカルテルを結んだ疑いで立ち入り検査を行いました。

自動車業界ではダイハツが不正品質問題に関連して、国土交通省の立ち入り検査を受けました。検査の結果が悪質と判断されれば生産認証が取り消されるという厳しい行政処分が待ち受けています。

年も押し迫ったこの時期に、政治と経済の両面から暗い話題ばかりが噴出してきました。来年度予算案が閣議決定され、一般会計は12年ぶりに前年比で減少するものの、社会保障費は大幅に膨らみ、国民負担の増加は避けられそうにありません。総務省からは郵便料金の大幅な引き上げ方針も明らかにされています(封書は84円→110円)。

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それでも先週の株式市場は週半ばに大きく反発しました。要因は日銀の金融政策決定会合です。

日銀は12月19日に金融政策決定会合を開き、現在行っている金融緩和の現状維持を決めました。マーケットの事前の予想では、一部にマイナス金利を解除するとの見方が出ていました。1週間前に行われた植田総裁の「チャレンジ」発言がそのままくすぶっていたものと見られます。

それがまったく肩透かしに終わり、イールドカーブ・コントロールの修正もなく、フォワードガイダンスにも変更はありませんでした。それによって、事前に積み上がっていた「円買い・株式売り」のポジションがひっくり返り、火曜日の後場から「円売り・株式買い戻し」が急速に進んだと見られます。

日経平均は火曜日、水曜日の2日間合計で+917円も急騰し、反対に巻き戻し一巡から木曜日は▲535円と大きく下落しました。そしてポジションの巻き戻しがすっかり終了した(と見られる)金曜日には、再び平静な動きに戻って、日経平均は+29円の小さな上昇を示すだけとなっています。

日経平均のボラティリティは記録的な水準に低下したままですが、しかし変動がないわけではなく、ごく短い期間の値動きは以前よりも激しくなっています。

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株価指数上の動きは年末のこの時期に、かなり大味な動きが見られましたが、それと同時進行で企業の将来設計に向けての活動が発化しています。

日本製鉄は米国のUSスチールを2兆円で買収する計画を発表しました。ここから米国民や議会の心情的な反発が予想され、日本製鉄の株価は軟調に推移しました。

第一生命はベネフィット・ワンへのTOB価格を2123円とし、買収計画を発表していたエムスリーの提示価格(1600円)よりも大幅に上乗せしました。他方では、旭化成が16年ぶりに半導体の製造工程で用いる感光性樹脂の大規模な増産を決定しています。三菱ケミカルグループは社長交代を明らかにして株価が急落しました。

先の見通せない状況が長く続いているものの、誰もがこの五里霧中の先には大きなフロンティアが待っていると考えています。ハード、ソフトの両面で新たな投資計画が次々に明らかになっています。

年が改まるとすぐに2月期決算企業の決算発表があります。そして3月期決算企業へと続きます。決算発表が始まれば同時に、野心的な中長期の事業計画が明らかになってくると期待されます。

年内も残すところあと1週間。その短い時間内に日経平均の33年ぶり高値更新が再び実現するのかどうか、非常に興味深いところです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。上昇率は前週の+0.34%に続いて、先週も+0.18%と小さなものにとどまっています。上下に大きく変動した分だけ、週間での変動は小さく収まりました。

規模別では大型株(+0.19%)から小型株(+0.63%)まですべて上昇していますが、こちらも小さな値動きにとどまりました。

スタイル別では、金利低下を受けてグロース株は続伸したものの、バリュー株は小幅ながら続落しました。バリュー株は5週連続で下げています。

騰落レシオも方向性の乏しい状況が続いていますが、前週までの100%割れからようやく100%回復まで戻ってきました。日経平均のサイコロジカルラインは「7」が3日間続いています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、8業種が値上がりし、9業種が値下がりしました。

値上がり上位のセクターは「素材・化学」、「運輸・物流」、「機械」となりました。景気動向に敏感な「素材・化学」が値上がりセクターの上位に登場するのは最近では珍しいことですが、それが2週続きました。

信越化学工業(4063)の上場来高値更新が光っています。米国株式市場が史上最高値を更新していることが刺激材料となっている模様です。

米国で金利のピークアウト感が強まっており、それが住宅市場の回復期待となって株価を押し上げています。半導体関連の信越ポリマー(7970)やトクヤマ(4043)、関東電化工業(4047)も堅調です。

値上がり第2位の「運輸・物流」は、海運セクターがリードしています。日本郵船(9101)、商船三井(9104)、川崎汽船(9107)の海運大手3社がそろって6日続伸となりました。海運ばかりでなく、陸運でも京成電鉄(9009)、近鉄グループHD(9041)、名鉄(9048)の電鉄株がしっかりしています。

値上がり第3位の「機械」では、大手では荏原(6361)、DMG森精機(6141)、三井E&S(7003)、日立造船(7004)が堅調でした。また野村マイクロ・サイエンス(6254)、マルマエ(6264)、ローツェ(6323)の半導体関連の小型株が引き続き人気を集めています。

反対に値下がりセクターの上位では「電力・ガス」、

(後略)

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鈴木一之