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2024年1月5日

2023年も大納会を迎える、日経平均は1年間で+28.2%の上昇

鈴木一之

鈴木一之です。2023年も大納会を迎えました。12月29日(金)の東京株式市場はお正月休み前で手仕舞いから売り優勢の展開となり、日経平均は▲75円の下落で取引を終えました。

もう少しで年初来高値を更新するところまで近づいていたので、「大納会・新高値更新」という劇画調のエンディングを期待していたのですが、さすがにそれは実現しませんでした。

今年の日本の株式市場は、終わってみれば日経平均は+28.2%の上昇を遂げました。歴史的な上昇を記録した年と言ってもよいでしょう。

1年前の今ごろは米国発のリセッション入りを警戒する見方が大半を占めており、今年の好パフォーマンスは期待できそうにないとの意見がほとんどでした。結果的にはその見方は大きく外れたことになります。

それどころか「10年に一度」くらいに訪れる好調な上昇相場となりました。TOPIXも+25.1%の上昇を遂げています。今年はマーケットにとって予想を超える良好な1年となりました。

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大納会を終えた12月30日(土)、日本経済新聞には今年の株高の要因を分析する記事が掲載されています。それによれば今年の株価上昇は、(1)東証市場改革、(2)バフェット効果、(3)M&A、という「3つのエンジン」がもたらしたと述べています。

東証市場改革は低PBR銘柄の見直す動きにつながり、バフェット効果も日本株の割安感を国内外に知らしめる効果がありました。M&Aの多発も同様です。

コロナ明け後の世界的なインフレの高進、先行きの展望が効かない国際情勢の流動化、経済安保の必要性、それらが重なって出遅れていた日本株に対する評価が一変したのが今年の特徴です。

昨年までのコロナ禍の3年間、国際的な比較において医療行政上ではまったくと言ってよいほど無策で過ぎたことが、日本株の出遅れ感を際立たせていました。それが上の3つのエンジンによって、出遅れ修正が起きたという側面も強いように思います。

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現実社会では毎週のように世界を揺るがす大きなニュースが起こり、非常に目まぐるしい1年でした。それでもNYダウ工業株が年末にかけて史上最高値を更新するまで盛り返したことで、それだけで世界は救われたところがあります。

及ばずながら日経平均も年初来高値にかなり接近して年末を迎えました。年間の上昇率+28.2%は、1976年以降では年間上昇率の第7位に当たります。

歴代第1位は2013年の+56.7%です。「アベノミクス」の最初の年で、日銀による「異次元の緩和」が円安をもたらし、歴史的な株価上昇の原動力となりました。

第2位が1986年の+42.6%です。有名な「プラザ合意」の翌年で、円高不況に対処するために日銀は大規模な金融緩和を実施しました。80年代バブルはこの年から始まったとされています。

第3位は2005年の+40.2%です。日本は「小泉改革」に沸き、「9.11」後の米国はFRBが大規模な金融緩和を実施し、不動産バブルに突入するところです。バブルを創り出すことによって、バブル崩壊の傷を埋めるという動きが本格化しました。

第4位は1988年の+39.9%(ブラックマンデーの翌年、日本は大規模な金融緩和)、第5位は1999年の+36.8%(ITバブル、日銀はゼロ金利を開始)、第6位は1989年の+ 29.0%(バブルの頂点、裁定買いによる実体のない上昇)。

それに続く2023年の+28.2%の上昇記録です。

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歴史に残る日経平均の上昇記録となった年は、ほとんどすべて「大規模な金融緩和」、あるいは「円安」、または「不動産バブル」という要因によってもたらされています。

今回も「日銀による異次元の金融緩和」、「1ドル=151円、32年ぶりの円安」、「東京都区部のマンションは平均1億円、不動産バブル」という記録的な状況が周囲を取り囲み、それらが株高を演出しています。

予想もしなかった条件がいくつも重なったことによって、今年の大幅な株価上昇が実現しました。そのひずみは目に見えないところに蓄積されていることが多く、今年と同じような株価の上昇が来年も続くほど相場は簡単なものではありません。ここは冷静に見るべきとの声も聞こえてきます。

過去の記録はどうでしょうか。上昇率が上位の年の翌年、株価のパフォーマンスはそれなりに良好な成績を残しています。

第1位の2013年の翌年(2014年)は+7.11%、第3位の2005年の翌年(2006年)も+6.9%の値上がりを維持しました。80年代後半はバブルの年で、毎年のように好調な上昇記録を残しています。

これらの例に沿って、来年も2014年や2006年並みの+7%程度の上昇を遂げるとすると、1年後の日経平均は35,800円くらいになります。

マーケットでは今にも「80年代末の史上最高値更新」というかけ声が勇ましく聞こえてくるので、これではもの足りないと感じられるかもしれませんが、ひとまず35,800円~36,000円レベルを目指すのが妥当かと思います。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続で上昇しました。上昇率は前週の+0.18%に対して、先週は+1.28%と拡大しました。米国のクリスマス休暇明けに堅調な動きが見られました。

規模別では大型株(+1.33%)から小型株(+1.79%)まですべてのクラスが上昇しています。小型株の堅調さが目立っています。日経平均は大納会はマイナスで終わりましたが、日経500種平均は今週、年初来高値をいち早く更新しています。

スタイル別では、上昇が目立ったのがグロース株です。特に小型グロース株に堅調な動きが見られました。1年を通じて軟調な状況を強いられましたが、小型グロース株は最後の最後に反転気運を強めて越年しています。バリュー株は6週ぶりに反発しました。

騰落レシオは週末の3日間続けて100%台を回復しています。日経平均のサイコロジカルラインは週半ばに「9」まで上昇した後に「7」で年末を迎えました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、16業種が値上がりし、「運輸・物流」の1業種だけが値下がりしました。

値上がり上位のセクターは「機械」、「情報通信・サービス」、「建設・資材」となりました。

「機械」はディスコ(6146)、野村マイクロ・サイエンス(6254)、マルマエ(6264)、ローツェ(6323)など半導体設備投資に関連する銘柄が引き続き賑わいました。オカダアイヨン(6294)、CKD(6407)も堅調さを強めています。

値上がり第2位の「情報通信・サービス」では、オービック(4684)、楽天G(4755)、LINEヤフー(4689)、インターネットイニシアティブ(3774)、さくらインターネット(3778)、USEN(9418)などの中核企業がそろって堅調な動きを示しました。

第3位の「建設・資材」では東建コーポレーション(1766)、積水ハウス(1928)の住宅関連株や、ユアテック(1934)、トーエネック(1946)、四電工(1939)の電力工事株がしっかりしています。電力会社の業績回復に伴って、電力設備投資がいよいよ動き出す気配が感じられます。

一方で値下がりランキング上位には「運輸・物流」のほかに、週間で株価指数はプラスとなりましたが「食品」、「エネルギー資源」が入りました。

「運輸・物流」のマイナスは海運セクターの乱高下が影響していると見られます。それを除けば、西武ホールディングス(9024)、近鉄グループ(9041)、センコーグループ(9069)、福山通運(9075)など陸運の堅調さが見られました。

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それにしても今年もさまざまな出来事が起こりました。

中国の「ゼロコロナ政策」の解除(1月)に始まって、東証市場改革(3月)、バフェット氏の来日、商社株への投資継続(4月)、コロナ感染症を2類から5類に分類(5月)、エヌビディア驚愕の好決算(5月)、米国の債務上限問題(6月)、異常な猛暑(7月)、米国債の格下げ(8月)、ハマスによるロケット弾攻撃(10月)、イスラエルの報復攻撃(11月)、などがすぐに思い出されます。

私個人として最も記憶に残っている出来事は、3月に起きた米・シリコンバレーバンクの経営破綻です。

総資産2000億ドル(28兆円)、

(後略)

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鈴木一之