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2022年1月25日

東京に「まん延防止」措置、トヨタ減産、中国利下げで軟調地合いが続く

鈴木一之

◎日経平均(21日大引):27,522.26(▲250.67、▲0.90%)
◎NYダウ(21日終値):34,265.37(▲450.02、▲1.29%)

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鈴木一之です。2022年相場が始まって3週目が終了しました。株式市場では依然として軟調な動きが続いています。

オミクロン変異種の感染拡大が日本では猛威を振るっています。沖縄、山口、広島に続いて東京都など大都市圏に次々と「まん延防止等重点措置」が適用されました。この週末も大阪、北海道、福岡などに広がる見通しとなっています。行動規制に拍車がかかります。

昨年10月に緊急事態宣言が全国一斉に解除され、年末年始は久しぶりに開放的な気分で迎えることができました。それが再び飲食店を中心に不安な気分に包まれることになります。今回は学校を中心に若い世代の感染が広がっているのが特徴で、「またか」というため息が日本中から聞こえてくるようです。

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今回の株価調整は、主に米国市場におけるテクノロジー株の下落によってもたらされています。高い成長が予想されたグロース株から一斉に投資資金が逃げ出している様子です。

米国市場には1月後半から2月にかけて、株価が下落しやすいという季節性があるそうです。今回は株価がいつも以上に高い位置にあるために、その下押し圧力が増幅されているようにも見えます。

カギを握るのが米国の金融政策と、それに付随する長期金利の動きです。1月第1週に明らかになった12月のFOMC議事録では、FRBによる金融緩和策の転換はかなり前倒しされることが決定的となりました。

そのFOMCミーティングがいよいよ今週初めに開催されます。どのような金融政策の変更が決定されるのか、利上げは年4回ペースになるのか、資産圧縮はどのタイミングで始まるのか、市場内の緊張感ががぜん高まっています。これを受けて谷間の週の先週は、NYダウ工業株が3連休を挟んで6日続落となっています。

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FRBが利上げペースを急ぐとの観測が高まっているのは、コモディティ市場における市況上昇が一段と強まっているためでもあります。

先週は原油価格がWTI先物で86ドル台まで上昇しました。2014年以来の高値に達しています。金属市況も強い状態が続いており、EV用のメタル需要が増大するとされているアルミニウムやニッケルなど非鉄金属の上昇が止まりません。ロンドン・LMEでは、アルミが1月20日(木)に3,109ドル/トンまで上昇し、昨年11月5日の直近ボトム、2490ドル/トンから+24%の上昇となりました。

ニッケルも1月21日(金)に23,975ドル/トンまで上昇しました。これも昨年10月5日のボトム、17,800ドル/トンから+35%の上昇です。銅市況は今のところ穏やかですが、これも徐々に強含みの動きに向かっており、1万ドルの大台乗せに迫っています。

ウクライナ情勢は緊迫の度合いを増しています。ロシアが国境に軍隊を10万人も集結させたまま時間が過ぎています。ウクライナ国民の抱く恐怖心はどれほどでしょう。先週末は米ロ外相会談が開催されましたが、具体的な成果は今のところ表立っては何も明らかにされておりません。

世界はそのような状況のまま、2月4日の北京五輪の開催を待っています。冬季の五輪はロシア選手の強さが際立ちます。五輪開催中に外交上の大きな非難につながる変化を起こすことはないでしょう。2014年はロシアでソチ五輪が開催され、大会の閉幕を待っていたかのようにクリミアに軍隊を送り、武力によって併合を成し遂げました。

それに対してドイツ・EUを中心に西側諸国が一斉にロシアへの経済制裁を発動したため、その後の世界経済への猛烈な下押し圧力が強まりました。需要の落ちた原油価格は2014年の100ドルから2015年には50ドルまで急落し、2015年8月の中国・人民元の切り下げ、「チャイナ・ショック」につながってゆきます。

北京五輪が終了した後にどのような事態が動き出すのか、明確な展望は誰にも描ききれません。中国ではすでに景気鈍化の傾向が強まっている模様です。先週は中国人民銀行が2度目の利下げ(ローンプライムレートの引き下げ)を実施しました。

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目下のところ、株価の動向を決定づけるのは米国をはじめとする各国の金融政策です。その金融政策の行方を決めるのは、コモディティを中心とする物価動向、インフレです。その物価動向はオミクロン変異種の感染拡大に影響されます。人の流れが途絶していることから物流が滞り、需要と供給のミスマッチが生じています。

コロナウイルスの感染拡大が落ち着けば、人流と物流はゆっくりと正常化に向かい、次第に物価上昇も落ち着き、金利引き上げを急ぐ必要も今ほどではなくなります。そういう見通しが立てばグロース株からの資金逃避も収まることになります。

オミクロン変異種の感染拡大はあまりに急激で、不思議なほど安定していた日本も国境を閉じても逃れることはできませんでした。全国の新規陽性者数が5万4000人を上回り、5日連続で過去最多を記録しています。「第5波」の時のピークは菅政権末期の2万6000人ですから、その2倍以上の水準になります。

各自治体は保健所の職員の追加増員を行っていますが、それでも人手が回らなくなっています。「まん延防止」措置は今週末には30以上の都道府県に拡大される勢いです。

この状況は経済にも影響が出始めました。トヨタ自動車は2月以降の生産計画を引き下げる方向であることが報じられました。

トヨタの生産計画は、半導体の調達不足によって昨年暮れに計画を下回る減産を余儀なくされましたが、それを挽回するために年明けからは大幅に生産台数を引き上げる方針でした。

しかしオミクロン変異種の拡大によって、トヨタが国内に持つ14工場のうち、11工場で生産を落とさざるを得ない状況です。これによって2021年度の生産台数(900万台)の達成がむずかくなってきました。これはトヨタおよびサプライヤーにとってはもちろん、日本経済全体にとっても相当の痛手です。それだけで日本経済には下押し圧力がかかります。

トヨタのみならず、ホンダ、ダイハツ、スズキの自動車各社も同じような状況に直面しており、自動車産業のほかにも同様の動きが広がりかねない状況です。

オミクロン変異種の拡大を防ぐ手立ては、今のところ外出自粛やワクチン接種などに限られています。救いは、重症化リスクがこれまでと比べてかなり低い点です。

ウイルスの増殖はデルタ株のような肺ではなく、気管支など上気道で行われるようなので、このような形での変異を繰り返してゆけば、近い将来はごく普通のインフルエンザと同じ病状、同じ扱いになるとの見方も聞かれます。

オミクロン変異種の感染が先に広がった南アフリカ、フランス、イギリスでは早くも感染者数がピークを越え、現在は急速な収束方向に向かいつつあるようです。

日本はあとから遅れて追いかけているので、海外の事例をそのまま当てはめれば、2月中旬にはピークを迎え、その後は下降ペースに転じると予想も立ちます。通常のインフルエンザは2年続けてほとんど広がっておりません。

よいことと悪いことが交錯しながら、早くも1月最終週を迎えることになります。気がつけば3月決算企業の決算発表が始まろうとしています。ここからの3週間、決算数字を興味深く追いかけてゆきたいところです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。その前の週に6週ぶりに小さく下落したあとで、先週の下落率は▲2.55%に拡大しました。昨年11月第4週の▲2.91%以来の大きさです。

規模別株価指数でも大型株から小形株まですべてが下落しましたが、それでも大型株の下げが最も小さく、大型優位の展開が続いています。東証マザーズ指数は4週連続の下げとなりました。

換金売りの圧力が強く、バリュー株からグロース株まで幅広く売られています。REIT指数も3週連続での下落でした。

株価指数の上下動の大きさの割に、日経平均のサイコロジカルラインは「4」の状態を保っています。騰落レシオも92.91%にとどまり、さほど下がっておりません。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターはわずか3業種にとどまり、値下がりセクターは14業種に一段と広がりました。

値上がりセクターのトップは「不動産」、続いて「電力・ガス」、「小売」となっています。いずれも内需セクターに占められています。

上昇率でトップとなった不動産セクターは、三井不動産(8801)、

(後略)

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鈴木一之