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2021年6月28日

波乱相場の2週目、週初に日経平均は一時▲1150円の急落、翌日は急反発

鈴木一之

◎日経平均(25日大引):29,066.18(+190.95、+0.66%)
◎NYダウ(25日終値):34,433.84(+237.02、+0.69%)

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鈴木一之です。6月も最終週になりました。今週末はもう7月、オリンピック月間の始まりです。株式市場は瞬間風速での激しい値動きを続けています。

最近の東京地方はゲリラ豪雨に見舞われることが増えていますが、株式市場でも本当に「瞬間風速」とかゲリラ豪雨という表現がふさわしいような、急激な下落に襲われるケースが増えました。先週の株式市場もまさにそのような展開となりました。

月曜日に日経平均はザラ場中に▲1100円を超える大幅な下落となりました。前の週に開催された米国の金融政策、FOMCの評価を巡ってマネー市場の見方が交錯しています。

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震源地はFRBの金融政策です。6月16日(水)に開催されたFOMCにおいて、突如として金利引き上げが予想よりも早まるとの見方が浮上しました。

それまでの市場の見方は、大半がテーパリング(資産買い入れの圧縮)の時期はいつか、という点に集中していました。それがいきなり論点が飛躍して、目下の議論は金利引き上げの時期にまで踏み込むようになりました。

FOMCではボードの参加メンバー(18人)の金利水準に対する見方が、これまでの「2024年以降」としていた利上げ開始の時期が、突如として「2023年中」に前倒しされました。

このような劇的な変化は通常の金融政策では起こりません。要因としては、ダラス連銀のカプラン総裁の言葉を借りれば「米国の経済見通しが劇的に改善している」ことを反映したものです。ハト派的なスタンスからタカ派的な見方へと大きく舵取りが変わったことを意味します。

これで前週のうちから世界中のマーケットで、「インフレトレード」的なポジションを反対方向に修正する動きが起こりました。景気敏感株やバリュー株を売って、テクノロジー株を買い戻す動きが加速しています。

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これだけでもかなりの動揺となりますが、問題はその後です。FOMCが終わったことでFRB幹部の発言ががぜん活発になり、6月18日(金)にはセントルイス連銀のブラード総裁が「インフレが加速すれば、2022年後半にも最初の利上げを行う」と発言したことが伝わりました。テーパリングの開始どころか利上げにまで踏み込む、かなりタカ派的な内容です。

これによって6月18日(金)のNYダウ工業株は▲533ドルの下落となり、それが週明けの東京株式市場にも大きく影響しました。月曜日の寄り付きから全面安の状況となり、日経平均はザラ場中に▲1100円を超える下落となりました。終値では▲953円でした。

しかしその日のうちにFRBの他の重鎮からは、タカ派に走り過ぎる内容を修正するような発言が早くも飛び込むようになりました。

NY連銀のウィリアムズ総裁は、「現在の高いレベルでの物価上昇はいつまでも続かない、金融政策の変更はまだ早い」と述べました。さらにパウエル議長が翌日に行う予定の議会証言のメモが明らかにされ、マーケットの動揺をなだめるようなハト派的な内容でした。

これによって翌日の東京株式市場は早くも全面的に回復しました。日経平均は+873円と今年最大の上昇幅を記録する猛烈な上昇となりました。

実際に6月22日(火)に行われたパウエル議長の議会証言は、FOMC直後に広がった利上げの前倒し観測はけん制され、ハト派色の濃いものとなりました。インフレの高進を抑えるために、先回りして利上げを行うグリンスパン議長の「予防的な利上げ」も行わないと明確に否定しています。

これによって従来のような超緩和的な金融政策がまだ続けられるとの期待が高まり、マーケットは落ち着きを取り戻してゆきました。

NASDAQは火曜日に史上最高値を更新し、そこから3日続けて最高値を更新し続けました。S&P500も最高値に進んでいます。バリュー株からグロース株への流れが再び強まりつつあります。マイクロソフト、フェイスブック、アルファベット(グーグル)が上場来高値を更新しました。

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現実の問題として、FRB内で物価と金融政策に対する意見が大きく分かれていることは事実のようです。ダラス連銀のカプラン総裁は6月21日の講演で、「現在の状況ではテーパリングを早めに始める方が健全だろう」と発言しています。セントルイス連銀のブラード総裁も「インフレ率が2%目標を上回る時代に入った」と述べています。

今後もFRB内のタカ派とハト派の意見の相違が何度も明らかになることでしょう。そのたびにマーケットは警戒心と楽観論が交錯することになると見られます。8月末に開催されるジャクソンホールに向けて高官発言が様々な議論を巻き起こすことになりそうです。

6月25日に商務省から発表された5月のPCE(個人消費支出)物価指数は、食品とエネルギーを除いたコア指数が前年比+3.4%を記録しました。前の月から+0.3ポイントの拡大となり1992年4月以来、29年ぶりの高水準に達しています。

ワクチン接種の広がりがもたらすコロナ危機からの経済再開、そのような異常な状況下での供給面での制約、それこそがパウエル議長の指摘する「非常に強い需要と弱い供給が同時に発生」しているのが現在の物価上昇です。

従来のような単純な「業績相場」ではありません。その中で株式市場における物色対象には、少しずつ強弱感が現れているように見えつつあります。

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先週の東京株式市場は、週初に全面安と全面高を短時間で繰り返した後、週を終えてみれば小さな値動きとなりました。

TOPIXは3週ぶりに上昇しました。大きく下落したのは月曜日の1日だけで、火曜日は大きく上昇し、それを除けば再び小さな値動きに戻りました。

週を通じての上昇率は+0.83%ですが、よく戻し切れたものです。むしろ小型株市場に堅調な動きが目立っており、東証2部指数は6週連続の上昇となっており、直近高値を抜いて2018年1月に記録した高値に接近しています。東証マザーズ指数も反発しました。

規模別指数でみても、週初の大幅安など何もなかったかように小型株指数の堅調さが目立っています。大型バリュー株と小型グロース株が並立するような形となりました。東証REIT指数は前の週に5週ぶりに反落したあと、早くもプラスに転じています。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、値上がりセクターが13業種に広がり、値下がりセクターは4業種にとどまりました。

値上がりセクターのトップは「エネルギー資源」です。INPEX(1605、旧国際石油開発帝石)の上昇が光っています。

原油価格がWTI先物で74ドル台に乗せており、「原油100ドル」時代も見えてきました。地球温暖化対策の強化が進み化石燃料の開発ペースが落ちています。それは長期的には弱気ファクターですが、ごく短期では強気を唱える向きが強くなっています。

値上がりセクターの第2位は「鉄鋼・非鉄」です。日本製鉄(5401)やJFEホールディングス(5411)が先週末になって、ようやくプラスに転じました。ESG、環境投資の大幅な負担増が嫌気されて株価がここまで軟調でしたが、世界的な物色の流れが徐々にこれまでと逆転しつつあるようにも見られます。

値上がり第3位は「建設・資材」、第4位は「商社・卸売」です。これらも「鉄鋼・非鉄」と同様に軟調な値動きが続きましたが、全体として反転のタイミングに差しかかっているように見えます。

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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「エネルギー資源」

(後略)

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鈴木一之