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2023年9月4日

米8月・雇用統計を前に堅調、TOPIXは新高値を更新

鈴木一之

先週は株式市場が徐々に保ち合いを上に放れてきました。TOPIXは新高値を更新しています。

前の週にジャクソンホールのシンポジウムを終え、パウエル議長は予想通りのタカ派的な講演を行いました。市場が警戒していた「中立金利の引き上げ」への言及はなく、それ以上のネガティブな材料もなかったため、米国の長期金利は急速に低下方向に向かっています。

これによってNY株式市場が堅調な足取りを取り戻しました。それが東京市場にも好影響を与えていると見られます。TOPIXばかりでなく、JPX日経インデックス400、大型株指数、小型株指数、中型株指数、東証プライム指数、東証スタンダード指数などもそろって新高値を更新しました。

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まだ更新していないのが、日経平均です。6月相場をリードした総合商社や7月相場の主役を演じた半導体関連株は今のところ、まだ動きは本格化しておりません。

特にアドバンテスト(6857)、ソニーグループ(6758)、ファナック(6954)のような、値がさのテクノロジー株が本調子ではなく、またファーストリテイリング(9983)やソフトバンクG(9984)に代表される、日経平均に影響を与えやすい銘柄の動きが止まっています。

しかしそれ以外の主力大型株が一斉に動意づいています。日立(6501)が1988年以来の上場来高値を更新したり、三菱重工業(7011)、コマツ(6301)、パナソニック(6752)、ホンダ(7267)、日本製鉄(5401)、神戸製鋼所(5406)など、業界を代表するリード銘柄が続々と新高値に進みました。

メガバンク、地方銀行もまとまった買い意向が働いているようです。米国の金利が上昇しても上昇しなくても、銀行株は堅調な展開を示すようになっています。「地合い」というべきもの、相場の雰囲気や投資家心理がはっきりと改善していることが見てとれます。

日経平均の動きは鈍く、反対にTOPIXの動きが素早いという、これも従来のマーケットの常識とは逆の方向に変わりつつあります。

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先週の大きな動きとしては、中国とトヨタに集約されます。

週の初めは中国に関するニュースでもちきりでした。8月24日から始まった福島第1原発の処理水の海洋放出に関して、中国は強硬な反対のスタンスを取っており、海産物を中心に日本製品の輸入禁止を打ち出しています。

そればかりか日本国内の小売店、飲食店、コンビニなどに中国からと見られる嫌がらせ電話が相次ぐようになりました。公明党の山口代表の中国訪問も延期されました。

これに関連して週明けは百貨店、ドラッグストア、ホテル、航空会社などのインバウンド消費関連株が一斉に下落するという動きが見られました。

時間が経過すればいずれ事態は沈静化して、徐々に落ち着きを取り戻すことになるでしょうが、その時期が見通せないことが不安視されています。

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中国の経済状況は依然として厳しいようです。8月31日に発表された8月の製造業PMIは49.7となりました。前月比+0.4ポイントと上昇しましたが、好不況の分岐点である「50」のラインを5か月連続で下回っています。

トランプ大統領の時の米中貿易戦争によって、2019年5月から10月まで6か月連続して「50」を下回ったことがありますが、現在はそれ以来の状況です。この時は世界経済全体が、中国経済の鈍化の影響から景気後退に向かいました。

今回の嫌がらせ電話の多発には、中国の直面する厳しい経済の現状から国民の目をそらす意味合いがあるとの見方が出ています。

そのような状況で週明けはトヨタのシステム不具合による工場停止のニュースが飛び込んできました。

トヨタは8月29日(火)、国内14か所の全工場を停止すると発表しました。システムの不具合によって部品の発注ができなくなっていることが理由です。

トヨタの工場停止と聞けば、すぐに昨年3月に起きた子会社「小島プレス工業」へのサイバー攻撃が連想されます。この時も国内のすべての工場が停止するという事態に至りました。

今回も中国との関係がぎくしゃくしている時期だけに、サイバー攻撃の可能性が頭をよぎりましたが、トヨタ側は早い段階で「今回はサイバー攻撃ではない」と発表しています。実際に工場停止は1日で済み、不穏なムードはそれ以上広がることはなく収まりつつあります。

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トヨタに関してはもうひとつ、今年の世界の生産台数が1020万台となり、過去最高を更新するとの見通しが報じられました。

グループ内でそのように通知したとの報道ですが、コロナ禍で半導体の調達が思うように進まず、生産規模を落とさざるを得なかった過去3年間がようやく正常に戻りつつあります。

トヨタの7月の世界生産台数は80.9万台(前年比+15%)となり、7か月連続で前年の実績を上回りました。さらに7月としては8年ぶり(すなわち2015年以来)に過去最高を更新しています。

株式市場には毎日、明暗それぞれのニュースが配信されますが、今回のトヨタの生産台数が過去最高とのニュースは、インフレ、気候変動、台風、暴動、ストなど、不安な出来事ばかり耳にする今の社会にとって、久々の明るい話題です。ここから大きな流れとなるビッグヒットの予感もあります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが大きく続伸しました。週間の上昇率は+3.68%に達し、6月第3週の+3.41%を抜いて今年最大を更新しました。

規模別指数でも、大型株(+3.80%)、中型株(+3.44%)、小型株(+3.53%)とそろって大きく上昇しました。

スタイル別ではバリュー株が優位の展開が続いていますが、バリュー株(+3.89%)に対してグロース株(+3.44%)とかなり健闘していることが見てとれます。東証マザーズ指数も+1.82%と小幅ながら続伸しました。

騰落レシオは121.11%となり、7月5日以来の120%超を記録しています。通常は過熱圏とされますが、今回は上昇相場の立ち上がりに当たり、そういう時は騰落レシオは高くなりがちです。日経平均のサイコロジカルラインも6月16日以来の「9」に達しています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、2週続けて17業種すべてが上昇しました。海外投資家よりも国内の機関投資家が動き始めている様子がうかがえます。

値上がりセクターの上位は「機械」、「エネルギー資源」、「不動産」でした。反対に、値上がりの小さかった業種には「小売」、「医薬品」、「運輸・物流」となりました。

値上がりトップの「機械」は広範囲な上昇が見られました。防衛関連株の三菱重工業(7011)が先導していますが、それ以外でも設備投資関連株が幅広く物色されました。

特に上昇力が目立つのがコマツ(6301)、日立建機(6305)、住友重機械(6302)の建設機械の分野です。工作機械のDMG森精機(6141)、アマダ(6113)、牧野フライス製作所(6135)、あるいはホソカワミクロン(6277)、ホシザキ(6465)、タクマ(6013)、椿本チエイン(6371)など、主だった機械株の大半が上昇しています。

値上がり第3位の「不動産」も週を通じてしっかりした動きを示しました。三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、東京建物(8804)、野村不動産HD(3231)、東急不動産HD(3289)、ヒューリック(3003)の大手不動産が軒並み上昇基調を強めています。

日銀の金融緩和スタンスは相当長く続くとの見方が広がっているようです。いずれに日本にも今以上のインフレが訪れ、十分に上昇したように見える不動産価格ですが、ここからまだ上がる、という予想が強まっているようにも見えます。

一方で「小売」セクターは、インバウンド消費関連株が総じて軟調だったので上昇力は小さくなりました。

それでも鳥貴族HD(3193)、

(後略)

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鈴木一之