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2022年9月27日

米FOMCで0.75%の利上げ決定、リセッション懸念が一段と強まる

鈴木一之

鈴木一之です。9月19日(月)にイギリスのエリザベス女王の荘厳な国葬が行われました。あれから1週間しか経っていないとは思えないほど、先週は世界中で大きな出来事が頻発しました。

日本では台風14号が週初の3連休中に上陸し、西日本、東海地方を中心に記録的な大雨をもたらしました。自然災害の程度が以前と比べて格段に大きくなっています。

ロシアではプーチン大統領が「部分動員令」に署名して、30万人にのぼる予備役の召集が始まりました。ウクライナ東部の占領地域からは軍隊を撤収していると伝えられたばかりですが、大規模な軍事行動が近々始まる可能性もあり、世界は身構えています。

しかし予備役招集の決定にロシアの国民が反旗を翻しています。ロシアの国外へ脱出する予備役の行動が相次ぎ、ロシア各地でも抗議運動が広がっています。

米国では3年ぶりに対面方式での国連総会が開催され、岸田首相も演説を行いロシアを名指しで避難しました。

演説の後に行った記者会見では、岸田首相は現在の水際対策を緩和して1日あたりの入国者数の上限を撤廃することを正式に表明しました。短期ビザの取得も免除されることになり、これで海外から日本を訪れる外国人観光客への規制はほぼゼロとなります。コロナ前の状態を取り戻すにはまだ時間がかかるでしょうが、それでもかなりのインバウンド需要が期待されます。これらは10月11日から実施されます。

合わせて日本国内の観光業界向けにも「全国旅行割」や「イベント割」を同日から開始されることとなりました。少なくとも年内いっぱいはこの支援策は続けられる模様です。ダメージの大きかった観光業、サービス業の支援策がこれまで以上に整います。

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しかし何よりも大きな変化は日米の金融政策です。米国では9月20~21日にFOMCが開催され、0.75%の政策金利の引き上げが決定されました。これで3会合連続での大幅な利上げとなりました。FF金利は3.00~3.25%になり、3%超えはリーマン・ショック前の2008年1月以来のことです。

同じく発表された「ドット・チャート」、FOMCメンバーの金利の先行き見通しは、2022年末の水準が3.4%から4.4%に引き上げられました。年内はあと2回のFOMCが予定されているため、次回の11月会合での0.75%の引き上げが早くも予想されています。

FOMC後の記者会見でパウエル議長は、ハト派的なコメントを一切封印したと受け止められています。現在のインフレを封じ込めるには経済を犠牲にすることもやむを得ない、というタカ派的なスタンスを徹底しており、それが市場参加者を驚かせています。

8月末のジャクソンホールでの講演以降、強硬な姿勢は一貫して変わっていないことがあらためて印象づけられました。米10年国債金利は3.7%まで上昇し、今年の最高値となりました。

景気後退は企業収益を直撃します。株式市場は全面的に下落しており、NYダウ工業株は週末まで4日続落、3万ドルの大台を割り込みました。年初来安値を更新しており、週明けもまだ軟調な動きが続くと予想されています。

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FOMCの結果が伝わった9月22日(木)は、日銀の金融政策決定会合も開催されました。そこで現在の大規模な金融緩和政策の維持が決定されました。

短期金利はマイナス0.1%、長期金利はゼロ%とする「イールドカーブ・コントロール」はそのまま維持され、終了期限が迫っていたコロナ対策としての中小企業への優遇オペは延長されました。

金融緩和の継続という内容そのものはほぼ予想されたものでしたが、日銀の発表直後から為替市場ではドルが買われ、円が売られる動きが強まりました。円は24年ぶりの145円台に突入しています。

日本でも物価の上昇は強まっており、8月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年比+2.8%の上昇です。5か月連続で日銀の目標である2%を上回りましたが、日銀はそれでもあくまで「一時的」な物価上昇として緩和政策を続けています。

先週はスイスも政策金利の引き上げを決定しており、世界中でマイナス金利を続けているのは日本だけとなりました。それだけに円は下落ピッチを早めており、1998年8月以来の円安となっています。

市場が見ている「145円の防衛ライン」を超えて、週末に再び3連休を控えていることからも、1998年の円安時の147円台まで下落するのは「時間の問題」とされていました。

その木曜日の夕方5時過ぎ。黒田総裁の記者会見の直後に、政府と日銀は24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入に踏み切りました。145円の半ばを超えていたドル円相場は、瞬間的に1円以上も円高に振れました。

前の週の9月14日(水)には「レートチェック」、いわゆる口先介入が実施され、介入があるかもしれないとは指摘されていましたが、タイミングとしては意表を突かれた形となりました。日本の休日中も143円台で推移しています。

円高を食い止める円売り介入とは違って、円安に立ち向かう円買い介入には外貨準備高という限界があります。政府・日銀だけで円安ドル高を止めることはできません。任期の近づいている黒田総裁の後任人事も、具体的な人物名が取り上げられています。

日銀の政策変更はあるのか、あるとすればいつ、どのような形で表面化するのか。その時の市場への影響はどうなのか。為替介入は続くのか。株価と景気は大丈夫か。週明け以降も不安定な状況が続くことになりそうな状況です。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。週初と週末が3連休にはさまれるという不思議な日並びだったので、下落率は▲1.16%にとどまりました。

引き続き小型株は下げが小さく、大型株の下落が目立っています。金利上昇に弱いグロース株が下げており、2週続けて大型・グロース株が最も売られました。バリュー株の下げは比較的軽微なものにとどまっています。

ただし東証マザーズ指数は下落率が▲3.30%に拡大しました。東証REIT指数も3週ぶりに下落しました。

テクニカル面では、騰落レシオが83.33%まで急低下しています。5月13日の週以来の低水準で、それだけ値下がりする銘柄数が増えています。日経平均のサイコロジカルラインは「7」の中立ゾーンにとどまっています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターは3業種にとどまり、値下がりセクターは14業種に広がりました。

上昇したセクターの第1位は「鉄鋼・非鉄」でした。リセッション懸念を反映して原油や金属市況が軟調なので非鉄金属セクターはいずれも弱い値動きでした。その中で鉄鋼業界は総じて堅調です。

日本製鉄(5401)、神戸製鋼所(5406)をはじめ、中山製鋼(5408)、共英製鋼(5440)、日本冶金工業(5480)など大きく売り込まれる銘柄は今のところ見当たりません。中国の景気動向も不安定な状況ですが、鉄鋼セクターの動きを見る限りでは冷静に安定しているように見えます。

値上がりセクターの第2位は「エネルギー資源」、第3位は「食品」でした。これらの業種では銘柄間の値動きがばらばらで、あまり統一感が見られません。それでも特に食品株では、サッポロHD(2501)、キリンHD(2503)、寿スピリッツ(2222)、カルビー(2229)などが堅調さを保ちました。

反対に値下がりセクターの第1位は「医薬品」でした。このセクターも統一感がなく銘柄ごとに値動きはまちまちの状況です。その中ではアステラス製薬(4503)の下げが目立ちました。

値下がりセクターの第2位は「不動産」です。2週連続で値上がり上位に登場したあとだけに全体に軟調な動きとなりました。それでも三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、野村不動産HD(3231)の大手不動産会社から小型株まで全体にしっかりしています。

国土交通省より基準地価が公表され、住宅地が全国平均で31年ぶりに上昇に転じています。不動産市場の景況感は安定しているようです。

値上がりセクターの第3位は「機械」でした。コマツ(6301)、荏原(6361)、ダイキン工業(6367)、マキタ(6586)など、大型の機械株の下げが目立ちました。半導体の設備投資に関連する企業も軟調です。

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今週も「米国はリセッション入りか」というテーマでたくさんの議論が交わされたはずです。しかし拙い経験から言えることですが、リセッションが懸念されたり、景気後退の時期が取り沙汰されたりする状況は、ほとんどの場合ですでに景気後退に入っていることが多いものです。

しかもそれは景気後退の初期ではなくて、かなり不景気が進行している時が多いのも事実です。そして皮肉なことに、政府が正式に景気後退に入った事実を認める段階になると、それはもうすでに景気後退期を抜け出しつつある時期であったりします。

体感温度としては、

(後略)

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鈴木一之