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2022年10月19日

米9月CPIを巡る乱高下が世界中で続く、日経平均は27,000円を回復

鈴木一之

鈴木一之です。先週は1週間が実にあわただしく過ぎました。

クリミア橋を爆破されたロシアは、報復としてウクライナの首都・キーウに大規模なミサイル攻撃をかけています。市民を巻き込んだ無差別爆撃に使われたミサイルは100発以上にのぼるとされており、核兵器の使用をちらつかせるプーチン大統領の次の行動を世界中が固唾を飲んで見つめています。

マーケットは先週末の米・9月消費者物価指数の発表を控えて、これ以上ないというほどの神経質な1週間を過ごしました。長期金利の上昇が続いており、同時に円も下落し続けています。週末には32年ぶりとなる148円台まで円安が進みました。

米大手銀行のトップは半年後の景気後退を懸念する見方を明らかにし、米国株式市場は下落トレンドの中での急騰と急落を繰り返しています。日本株も同様です。

イギリスは大混乱の震源地となっていた減税政策を撤回、あわせて財務相を解任しました。週初にはG7が開催され、週末はG20も開かれましたが、世界経済の混乱に対してなんら有効な対処法は打ち出せないままでいます。

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10月も半ばに差しかかり、欧米ではクリスマス・年末商戦が始まろうとしています。そのような時期に物価高騰に直撃され、経済全体では金利と物価高が影響して盛り上がりを欠いた年末商戦を迎えようとしています。

注目されるのは企業業績の行方です。JPモルガンチェースのジェイミー・ダイモンCEOは10月10日にCNBCCのインタビューに応える形で「米国および世界は、今後6~9か月後に景気後退に追い込まれる」と警鐘を鳴らしました。

インフレ、金利上昇、ウクライナ危機が深刻化して、市場はさらに混乱する可能性にも言及しています。そういうムードの中で今週はスタートしました。

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最大の注目材料だった米国の9月CPIが現地10月13日(木)に発表され、前年比+8.2%となりました。市場の予想(+8.1%)を上回りました。

エネルギーと食品を除いた物価上昇率は+6.6%となり、引き続き40年ぶりの高水準となっています。賃金の上昇が賃貸住宅の家賃などサービス価格を押し上げ、それが現在のインフレをより根の深いものとしています。

住宅価格は米国のCPIの3割を占めていて、変化するには時間がかかります。コロナ禍での在宅勤務の増加を反映して、賃貸住宅の家賃は全米で2021年に年間で18%も上昇しました。住宅ローン金利は大幅に上昇しているものの、賃貸物件の動きは景気見通しに左右されるため、あと数か月間は物価は下がりにくいと見られています。

CPIの結果を受けて、FRBが金融引き締めの手を緩めるとの見方が大幅に後退しました。米国の長期金利が急上昇し、10年国債金利は週末に4%を超えました。

為替市場でもドルが全面高となりました。ドル円相場は1998年8月の安値、1ドル=147円64銭を割り込んで32年ぶりとなる水準までの円安・ドル高となっています。バブル崩壊後の最安値に突入しました。

株式市場の反応は激しさを増しています。NYダウ工業株30種平均は、木曜日のCPI発表直後は▲500ドル以上急落したものの、その後は急反発に転じて+827ドルで戻りました。これを受けて金曜日の東京市場では、日経平均が一時900円以上も上昇する全面高となりました。大引けで27,000円台を回復して週末を終えています。

しかし金曜日の米国市場では再び株価が下落し、NYダウは▲403ドルの反落で終わりました。ミシガン大学による10月の消費者態度指数が上昇し(59.8+1.2)、同時に1年先の予想インフレ率も5.1%となりました。3か月ぶりの高い水準です。

これらの統計データは、インフレの度合いを測る指標としてFRBメンバーも注視しているものです。今年5月以降、しばしばマーケットの転換点をもたらしています。それが再び大きく変化しました。景気に対する弱いデータと、物価に関する強いデータがここしばらくは混在する時期に入っている模様です。週明けもまだ警戒心の強い動きになりそうな雲行きです。

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もうひとつ、週末に大きなニュースが飛び込んできました。イギリスのトラス首相が大規模な減税策を修正し、凍結するとしていた法人税の増税を一転して2023年4月に引き上げる(19→25%)と発表しました。合わせてクワーテング財務相を解任し、後任にはハント元・外相を起用すると発表しました。

減税政策はトラス首相の持論だっただけに、政権にとっては大きな痛手となります。ただし弱者救済策としての国民保険料の引き下げ、並びに家計負担の軽減策は継続する方針です。

これらの財政刺激政策に関しては、財源が示されていなかったことが市場から拒否されたわけで、トラス政権の政策に関してはマーケットはまだ懐疑的な見方が残っているようにも見えます。

イングランド銀行はすでに国債買い入れ策を10月14日で終えており、英国年金が被った運用資産のダメージを埋める資産の処分売りが続く懸念が残ります。債券市場の混乱は週明け以降も注視する必要がありそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。週初は全面安の急落となりましたが、週末の金曜日に大幅高となったため、週間の下落率は▲0.45%の小幅安にとどまりました。
米国CPIの発表を控えてマーケットの動きが鈍っており、大型株指数は▲0.17%の小幅安にとどまりました。その一方で小型株指数は▲1.10%と厳しい下げとなっています。市場のボリュームが薄く、ちょっとした売り物で株価が大きく動きやすいようです。

世界中で金利上昇が強まっており、グロース株が再び軟調な動きに戻りました。小型・グロース株は▲1.21%、それに対して大型・バリュー株は+0.13%とわずかながらプラスを維持しました。

テクニカル面では、低下していた騰落レシオは下げ止まり、木曜日に86.56%をつけたあと、金曜日は93.31%にわずかながら上昇しました。日経平均のサイコロジカルラインは週を通じて「6」に貼りついています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターは9業種、それに対して値下がりセクターは8業種と拮抗しています。

値上がりセクターの第1位は「医薬品」です。景気後退を警戒しつつディフェンシブ的な銘柄への物色が広がっています。

アルツハイマー型認知症治療薬のエーザイ(4523)が直近高値を更新し、がん治療薬の第一三共(4568)、眼科薬のロート製薬(4527)をはじめ、中外製薬(4519)、協和キリン(4151)、久光製薬(4530)などが堅調な展開となりました。

値上がりセクターの第2位は「銀行」です。最近の傾向としてメガバンクよりも地方銀行株の堅調さが目立っています。最高益が予想される千葉銀行(8331)は2月高値を抜いて年初来高値を更新しました。

めぶきFG(7167)、第四北越FG(7327)、ふくおかFG(8354)などの地銀大手行に加えて、いよぎんHD(5830)、しずおかFG(5831)、あいちFG(7383)など、経営統合したばかりの地銀株も高値を取る勢いです。底流にある資金の流れが変わってきたような感触があります。

値上がりセクターの第3位は「小売」でした。2022年8月期の決算を発表したファーストリテイリング(9983)が週末に大幅高を記録したことが象徴的です。経済活動の再開によって今後の業績変化が確実に期待できるところに資金が逃げ込んでいます。

エービーシー・マート(2670)、三越伊勢丹HD(3099)、ドトール日レスHD(3087)、サイゼリヤ(7581)、ロイヤルHD(8178)などがいずれも決算発表を交えて堅調な値動きを示しました。イオン(8267)も切り返しました。

反対にスーパーのライフコーポレーション(8194)、ホームセンターのコーナン商事(7516)など、前年度までコロナ特需の恩恵が大きかったところは、先行きの業績の変化に新たな期待がもてないことから決算直後に大きく下落しました。

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反対に値下がりセンターのトップは「機械」でした。前の週の大幅高の反動がでていることもありますが、世界の景気動向が問われる中にあって景気敏感の機械セクターはディスコ(6146)、コマツ(6301)、荏原(6381)、ダイフク(6383)などに軟調な動きが見られました。

値下がりセクターの第2位は「電機・精密」です。引き続き半導体関連株が軟調な動きを続けており、東京エレクトロン(8035)、スクリーンHD(7735)、アドバンテスト(6857)などの下落基調が目立ちました。

値下がりの第3位となった「化学」も同様で、東ソー(4042)、三井化学(4183)、三菱ガス化学(4182)など景気動向にきわめて敏感な化学の主力銘柄が下落しています。

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景気の動きには神経質にならざるを得ない状況ですが、

(後略)

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鈴木一之