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2022年11月14日

米10月CPIの発表で上昇が加速、半導体セクターを中心に上昇続く

鈴木一之

鈴木一之です。株式市場の様相が一変しました。NY市場では景気敏感株とテクノロジー株を中心に大幅高が続いており、それが東京市場をはじめ世界全体に波及しています。

きっかけは米国の物価統計です。現地・11月10日(木)に10月の米・消費者物価指数が発表され、前年比+7.7%の上昇にとどまり市場予想の+7.9%を下回る伸びとなりました。これがストレートに好感されました。

NYダウ工業株はこの日に+1201ドルも上昇し、今年最大の上げ幅となりました。テクノロジー株から大型の景気敏感株まで広範囲に上昇しています。

幅広い銘柄が上昇しましたが、主役は何と言ってもテクノロジー企業です。木曜日の1日だけで半導体のエヌビディア、AMDが+14%もの上昇を遂げ、さらにアマゾンが+12%、マイクロソフト、インテルが+8%、アップルも+7%と、主だったテクノロジー企業が軒並み大幅高となりました。

これによって大きく出遅れていたNASDAQも、木曜日は+7.4%と今年で最も大きな上昇を記録しました。金利低下に敏感に反応するのはやはりテクノロジー企業を中心とした成長株です。そのことが改めて強く認識させられました。

10月21日にウォール・ストリート・ジャーナル紙が観測記事として報道した「12月以降の政策金利引き上げのペース鈍化」がいよいよ現実味を帯びてきました。金利のピークアウト感が市場に広がっており、株式および債券市場ではここから資金シフトが再び加速しそうな勢いとなっています。

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週のスタートは株価はしっかりしていたものの、必ずしも経済環境としては明るい状況ではありませんでした。

旧フェイスブックのメタが1万人規模の人員削減を計画していることが報じられ、年末商戦を控えるアマゾンもここから数か月間の採用凍結を明らかにしたばかりです。イーロン・マスク氏が買収したツイッターも社員の半数をレイオフすると告げています。

FRBのパウエル議長は、インフレを鎮静化させるまで政策金利の引き上げを続けると明言していますが、それでは景気の後退は避けられません。8月末のジャクソンホールでその点にはっきりと言及して以来、米国と世界はリセッション入りの懸念におびえてきました。

震源地である米国の物価上昇がわずかでも鈍化しつつあることが確認され、その点が何よりも米国市場で好感されています。米国の長期金利は急低下し、中心となる10年物国債金利は4%超から3.8%台に急速に低下しました。

米国ばかりでなく世界中の株式市場も一斉に動意づいています。ドイツのDAX指数、シンガポールのST指数、香港ハンセン指数などが急上昇しており、インドのムンバイ指数は史上最高値に再び接近しています。

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物価鎮静化という、最近にはない明るいニュースが呼び水となっているのでしょうか。先週は週末にかけて好材料がいくつも飛び出しました。

ロシアは一方的に併合したウクライナ南部のヘルソン州から軍隊の撤退を始めました。ウクライナにとって、戦端が開かれた今年2月以降で最大の戦果として、国を挙げて喜びの声が聞こえてきます。

火曜日に投票が行われた米国の中間選挙は、週が変わっても上院はおろか、下院でも最終的な決着はついておりません。劣勢が予想された民主党が善戦を繰り広げており、ジョージア州の上院選の決着は12月6日の決選投票まで持ち越されました。

週初の時点では「共和党が優勢」であれば「株式は買い」と見られていました。それが予想されたほど共和党の優位性が盤石ではないことが判明しつつあり、トランプ前大統領の求心力が急速に低下しています。

環境意識の高い若い世代が民主党を支持する側に回っており、2年後の大統領選に向けた2大政党の戦いが早くも始まっています。

日本では中間決算の発表に合わせるかのように、大型の企業再編が次々と明らかになっています。

セブン&アイHDは傘下の百貨店子会社「そごう・西武」を投資ファンドのフォートレス・インベストメントへの売却を決定しました。買収側の陣営にはヨドバシカメラが加わることになります。

オリックスは未上場の化粧品大手「DHC」を買収するそうです。金額は3000億円にのぼると見られ、実現すれば事業承継として過去最大となる見通しです。成熟産業と言えども大規模な資金が動いています。

ほかにも東京特殊電線、住友精密工業、ササクラ、ユーザベースなど、TOBが矢継ぎ早に発表されています。経営再建に向けた東芝へのファンドからの提案も大詰めを迎えています。

これらの動きを見るにつけ、株式の価値は利潤証券としてばかりでなく、支配証券としての役割も十分に高まっているように思います。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続で上昇しました。8月第1~第3週にかけて3週連続で上昇して以来のことです。

先週の上昇率は+3.26%と大幅高となりました。7月22日の週に+3.35%の上昇を記録して以来の上昇幅です。

物色は引き続き大型株に集中的に向かっています。TOPIXコア30に代表されるような大型株が上昇をけん引しており、決算発表を控えた小型株はおとなしい状況です。東証マザーズ指数は2週ぶりに上昇しました。

スタイル別では前の週と変わって、グロース株に投資資金が流れ込みました。大型株から小型株までそろってグロース株が優位に立っています。金利低下期待が強まっており、バリュー株が再び劣勢となりました。

テクニカル面では、騰落レシオは週央に109.48%まで上昇しました。8月25日の111.33%以来の高い水準です。日経平均のサイコロジカルラインは、週末もサイコロ「6」にとどまっていますが、今週は月~水曜日まで3日続伸するとなると、サイコロ「8」まで高まることになります。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターは15業種、それに対して値下がりセクターは2業種となりました。

値上がりセクターの第1位は「電機・精密」です。東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)を中心に半導体関連株が相場全体の上昇を牽引しています。

半導体以外でも日立(6501)、キーエンス(6861)、TDK(6762)、日本電産(6594)、富士通(6702)など、決算内容のよい銘柄が大型株から小型株まで幅広くエレクトロニクス株が物色されました。

値上がりセクターの第2位が「素材・化学」、第3位が「機械」でした。いずれも景気動向に敏感なセクターです。化学では富士フイルムHD(4901)、信越化学工業(4063)、資生堂(4911)がにぎわいました。

機械でもSMC(6237)、ディスコ(6146)、コマツ(6301)など、半導体関連銘柄を中心に決算内容のよい銘柄が幅広く物色されています。

反対に値下がりセクターの上位は「運輸・物流」と「エネルギー資源」となりました。相場全体が膠着感に陥り、地合いが弱かった時期に逆波動でしっかりしていた銘柄群が代わって軟調となりました。

中でも陸運のJR東日本(9020)、JR東海(9022)、

(後略)

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鈴木一之