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2023年11月14日

良好な企業業績が下値を支える、日経平均は2週連続で上昇

鈴木一之

鈴木一之です。11月も最初の1週間が過ぎました。立冬を過ぎ、暦の上ではもう冬です。史上最も暑かった今年もさすがに寒くなってきました。

土曜日とも重なって酉の市はたいへんな熱気に包まれていました。おでんが恋しい季節です。

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中東情勢は依然として厳しい状況が続いています。メディアを通じて触れる映像では、病院や学校までが攻撃対象となり、逃げまどうパレスチナの人々の苦悩が伝わってきます。どうやら無数のフェイクニュースも飛び交っているそうです。

米国のブリンケン国務長官は中東を電撃訪問しましたが、イスラエル寄りの姿勢に変化はありません。東京では今週、G7外相会合が開かれました。人道的な休止を提言として出してはみたもののあまりに無力です。それは国連安保理も同様で、問題が大きすぎるのです。

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ただし心配された原油価格の高騰は今のところ起こっておりません。逆にWTI先物価格は先週、75ドル台まで下落しました。中国の貿易統計が景気鈍化を示すものだったことが直接の理由とされています。政治よりも経済要件が優先されています。

米国ではウィーワークが週初に「チャプター11」の適用を申請しました。以前から資金繰りの悪化が懸念されていましたが、コロナ後のオフィスの需要が戻らず、かつての事業拡張政策が完全に裏目に出た形となりました。

鳴り物入りの大型企業の破綻ですが、それでも米国の株式市場は堅調です。NASDAQは2年ぶりの9日続伸を記録しました。FRBが政策金利の引き上げに転じてからは最長の連騰記録です。

ウィーワーク破綻のニュースは米国のマーケットにはほとんど影響しませんでした。スター企業と言えども、いや、スター企業だからこそ典型的な経営不振に直面します。このような事態はかつて何度も目にしました。物事の転換期に起きることが多いものです。

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NASDAQ連騰の起点は10月末、米国の10年国債金利が一時5%に乗せた直後です。株価上昇の原動力となっているのは明らかに長期金利の低下です。長期金利は4.9%台から、11月に入って4.5%割れまで急低下しています。

11月は季節的にも米国株は上昇力を取り戻す、と例年の傾向が示しています。例年どおりのアノマリーどおりの展開です。今回は金利の低下によって、再びテクノロジー株を中心に成長期待の高い銘柄に人気が集まっています。

週末、IMFの討議に参加したパウエル議長は、金融政策に関して「さらなる引き締めが必要であれば躊躇なく金利を引き上げる」と述べました。

いつもと同じようにタカ派的な発言を繰り返し表明しましたが、マーケットは冷静に受け止めています。

7-9月期のGDPの高い伸びに対しても、パウエル議長自身「今後は成長が緩やかになる」とインフレに対して楽観的に見ていることを明らかになりました。こうなるとタカ派なのか、そうではないのか、判然としなくなります。市場はそのあたりを読み取っているようにも感じられます。

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日本では決算発表が相次いでいます。必ずしも好調の企業ばかりとは言い切れません。コロナの3年間で企業が悪戦苦闘の連続の中で選択してきた方向性が、良い方向に進んでいる企業もあれば、反対にそれらが裏目に出てしまった企業も見られます。

三菱重工(7011)の4-9月期の純利益は919億円(前年比+70%)で、半期としては過去最高を更新しました。発電所向けガスタービンが好調で航空機エンジンの品質問題の損失をカバーしました。

対照的にIHI(7013)は4-9月期の純利益が▲1375億円の赤字に転落しています。航空エンジンの補償費用を計上した影響がストレートに影響しました。川崎重工(71012)も同じで▲233億円の最終赤字となりました。

企業にとって気の毒な部分もありますが、経営にはどうしても結果が求められます。結果がすべてとは言い切れないものの、コロナ禍の3年間の対処法も含めて、ここではやはり企業経営の巧拙が問われます。そこにリーダーとしての本質が出てくると思われます。

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それでもやはり、足元の企業業績は好調と見るべきでしょう。中でも自動車および関連業種が好調です。

日産自動車(7201)が明らかにした通期見通しは、純利益が3900億円(+76%)に膨らみます。業績は従来の見通しよりも+500億円上乗せされています。中国でのEV生産や輸出を拡大する計画です。

同様にホンダ(7267)も通期の純利益の見通しを9300億円(+43%)へと+1300億円上方修正しました。過去最高(2018年3月期)の1.59兆円に次ぐ水準です。営業利益は1.2兆円(+54%)と過去最高を更新します。円安に加えて販売奨励金の低下が寄与しています。

ブリヂストン(5108)も1-9月期の純利益が2667億円(+41%)でした。値上げと円安効果が効いています。

自動車周辺ばかりではありません。カシオ計算機(6952)も2024年3月通期の純利益を、従来の▲20%の減益見通しから140億円(+7%)の増益へと上方修正しました。主力の「Gショック」の販売が欧州で好調です。

また内需系でも、日清オイリオグループ(2602)が好調です。通期の純利益の見通しを125億円(+12%)へと+10億円引き上げています。海外では油脂類の販価が低下していますが、アマニ油、オリーブオイルなど、健康に良いとされる食用油類など、高付加価値商品の拡大で利幅が厚くなっています。

各社各様の戦略がここにきて効いてきたと見るべきでしょう。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続伸しました。週を通じて株価はかなり乱高下しており、週間の上昇率はわずか+0.62%にとどまりました。前週の+3.00%からは大きく低下していますが、それでも2か月ぶりの続伸です。

規模別指数では、引き続き大型株の反発が目立っています(大型株:+0.83%)。同時に小型株も+0.61%とまずまずの反発力を示しました。中型株は+0.13%です。

スタイル別では、引き続きグロース株の切り返しが目立ちます。グロース株は+1.59%と大きく続伸し、バリュー株は▲0.30%と反落しました。日米ともに金利の低下基調が鮮明で、成長期待の高いグロース株人気が復活しつつあります。

騰落レシオは週末に114.47%まで上昇しました。10月2日以来の100%台乗せです。日経平均のサイコロジカルラインは木曜日に「8」を記録して、週末は「7」で終わりました。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、11業種が値上がり、6業種が値下がりしています。

値上がりトップは「商社・卸売」です。前週に上昇率の小さかった分だけ遅れて上昇しました。次いで「機械」、「電機・精密」です。

「商社・卸売」では決算内容のよかった総合商社の中でも、伊藤忠(8001)、住友商事(8053)の上昇が目立ちました。三菱商事(8058)も堅調さを取り戻しています。

ほかにもダイワボウHD(3107)、丸文(7537)、高島(8007)、西華産業(8061)など、発表されたばかりの好業績を評価して急上昇する銘柄が並んでいます。

「機械」も同様で、DMG森精機(6141)、ホソカワミクロン(6277)、TOWA(6315)、ローツェ(6323)が堅調でした。

「電機・精密」でも日立(6501)、NEC(6701)、TDK(6762)の主力銘柄に買い意欲が戻っています。ソニーグループ(6758)も堅調でしたが、期待された決算発表の直後から売り優勢に変わりました。

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反対に値下がりセクターの上位は、「銀行」、「電力・ガス」、「エネルギー資源」となりました。その多くがバリュー株に属する銘柄群です。

中でも銀行セクターは、メガバンクから地銀まで週初から軟調な動きが見られました。金利の上昇による銀行業務へのプラス効果が期待されていましたが、その期待が剥落する展開に変わっています。

ただし銀行セクターも一本調子に下落することはなく、週後半にかけて株価が切り返す銘柄も目立ちました。

「電力・ガス」も銀行セクターと同様です。週前半に中部電力(9502)、九州電力(9508)、中国電力(9504)、東京ガス(9531)が大きく売られましたが、それが週後半には少しだけでも落ち着きを取り戻しています。

同じく「エネルギー資源」も、INPEX(1605)、

(後略)

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鈴木一之