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2021年5月9日

連休の谷間、NY市場の最高値更新に牽引されて日本も堅調

鈴木一之

◎日経平均(7日大引):29,357.82(+26.45、+0.09%)
◎NYダウ(7日終値):34,777.76(+229.23、+0.66%)

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鈴木一之です。GWが終わりました。新緑あふれる初夏、関東地方もよい天気と雨模様が繰り返し訪れました。ほとんど外出をせず、自宅で本を読んで過ごすにはもってこいです。そう考えるようにしています。

コロナウイルスの猛威は一向に収束しません。インドでは1日で40万人を超える新規の感染者が出ており、酸素ボンベが必要量の6割しか確保できていないとされ、世界各国が援助物資を空輸しています。

好対照なのが英国です。1回目のワクチン接種を終えた人の割合が全国の5割を超え、昨年暮れから継続していた外出禁止令を解除しました。5月中旬からはイングランド地域からの海外旅行も解禁されます。

他国の状況を心配している場合ではありません。日本はGW前に人の流れを抑制する目的で緊急事態宣言を発出しましたが、効果はほとんどあがっていません。全国の都道府県で感染者数の記録更新が相次いでいます。

最も深刻な大阪では、変異ウイルスが拡大して病院での重症患者の受け入れがむずかしくなっています。兵庫では高齢者施設で深刻なクラスターが発生しています。5連休が明けてすぐに、緊急事態宣言の延長が大阪、東京を中心に決定されました。飲食店、商業施設、テーマパーク、劇場、旅行会社はさらに経営が厳しくなります。

今年1月に出された2度目の緊急事態宣言では、宣言発出の直前が最悪でした。緊急事態が宣言されれば、それを境に感染拡大は多少の時間差はあっても徐々に改善に向かいました。それが今回はそうなりません。宣言発出前よりもさらに感染者数の拡大が続いています。

人々は外出を控えています。リモートワークも実施しています。メディア等で報じられるほどには、外出自粛の社会的要請を軽くあしらって無視しているわけではないように感じます。それでも感染者数は改善しないのが今の状況です。

頼みの綱はワクチン接種ですが、これがあいかわらず遅々として進みません。主要国間どころか、世界的に見ても大幅に遅れています。日本という国の体制そのものが、今回のような非常事態にはまるで対処できない事実が白日の下にさらされています。

それが株価にも徐々に現れるようになっています。4月以降の日経平均は保ち合い局面に入り、次第に調整色が強まっています。GWの連休が明けると今年度の資金運用レースが本格的に始まりますが、そこでのパフォーマンス格差が拡大しかねない状態です。

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日本と好対照なのが米国です。ワクチン接種と経済対策では世界の先頭を走る米国は、全米各地で経済が再開されつつあります。日本が5連休を取っていた先週、NYダウ工業株は1週間にわたって丸々上昇を続け、連日のように史上最高値を更新しました。

週末に発表された4月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想の+110万人を下回り、+40万人程度にとどまりましたがこの事実を悪材料視することもなく、むしろ景気の過熱が抑えられ物価の上昇も止まるとして、長期金利の上昇が止まりました。「経済にとって悪いニュースは株価にとってよいニュース」という状況が生まれつつあります。

バイデン政権は4月末に「蜜月の100日間」を終えました。ここからはマスメディアをはじめとして峻烈な批判にさらされます。

3月に1.9兆ドル(200兆円)という空前の規模のコロナ対策を策定し、ワクチン接種と国民1人1400ドルの現金給付を全米規模で進めてきました。それが功を奏しているのは直近のマクロ経済統計のデータを見れば明らかです。

1.9兆ドルに続いて4月には、今後8年間で2兆ドルを社会インフラとテクノロジーに投じる「米国雇用計画」、さらに今後10年で育児と教育支援に1.8兆ドルを投じる「米国家族計画」を立て続けに打ち出しました。

その蜜月期間が終わるのを前にして、4月28日にバイデン大統領が議会で施政方針演説を行いました。演説の骨子は以下の通りです。

・バイ・アメリカン、米国製品の購入を促進
・企業と富裕層に公平な税負担を求める
・世界規模での気候変動問題との戦い
・中国との競争を歓迎、しかし衝突は望まない
・インド太平洋地域での強力な軍事力を維持
・移民は不可欠な存在として、移民問題の解決に取り組む
・銃による暴力から米国民を守る

トランプ政権が背を向けた気候変動問題や銃規制問題に対して本腰を入れて取り組むとともに、トランプ政権以上に中国には厳しく対面してゆく構えがはっきりと出ています。

2期8年として2030年が視野に入ってきます。米国にとどまらず、今後の世界の枠組みが大枠でも決定された施政方針演説であったように見て取れます。週明けから始まるマーケットにおいても、じっくりと時間をかけてここで論点となったテーマを織り込んでゆくことになるでしょう。

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先週の株式市場の動きについて。

5月第1週の東京株式市場は、TOPIXが3週ぶりに反発しました。5連休明けで立ち合い日数が2日間しかありませんが、前の週の▲0.87%%という小さな下げに対して、反発は+1.83%とかなり大きくなりました。

NY市場が連日のように最高値を更新していたことが大きいと見られます。大型株、小型株いずれも反発しましたが、目立っているのは中型株です。中型株指数は6週連続で下落していましたが、それがようやく反発に転じました。

反対に東証マザーズ指数は下げ止まらず、3週連続での下落となりました。バリュー株が一斉に戻っており、グロース株よりもバリュー株の上昇が目立ちました。東証REIT指数は軟調な動きとなりました。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落では、すべての業種が値上がりしました。

値上がりセクターのトップは「鉄鋼・非鉄」です。大型連休をはさんで2週連続での値上がりトップとなりました。

鋼材市況の上昇が続き、鉄鋼各社は鋼材市況の値上げを表明しています。先週は日本製鉄が2021年3月期の決算を発表し、前期で業績は底入れ、今期の急回復が確認されたことが株価を大きく押し上げています。

値上がり第2位は「エネルギー資源」、第4位は「商社・卸売」と市況関連の素材系セクターが上位に登場しました。

さらに値上がりセクターの第3位に「銀行」が入りました。メガバンク、地銀株ともに堅調です。3月末に向けて米国の長期金利が一貫して上昇する過程で、銀行セクターは一本調子に上昇を続けました。

しかし3月半ばの米FOMCにおいて、米国の金融政策が長期にわたって緩和基調を続けるとのパウエル議長の強い決意が伝わると、4月以降は金利の上昇に歯止めがかかりました。それとともに銀行株、およびバリュー株の物色が一服したという流れになっていました。

それが現在、米国の長期金利はさほど上昇していないのに、銀行株が再び物色され始めています。

おそらく社会全般で物価上昇が強まっていることと無関係ではないように思われます。ロンドンの銅市況は先週末、史上最高値を更新しました。移動制限によるEコマースの興隆からコンテナ船の運賃は昨年暮れからいまも高騰を続けており、バルチック海運市況は10年ぶりの高値にあります。

鋼材価格、石油化学製品に始まり、物価の優等生とされている木材や鶏卵まで、あらゆるモノの価格が上昇しています。FRB高官は現在のインフレを「一時的」なものと見ていますが、コロナ禍の長期化によってそうとは言い切れなくなってきました。

意外とテーパリング(資産買い入れの停止)は早い段階で実施され、金融政策の変更が近々起こるのかもしれません。そのようなことを考えさせる銀行株の反転上昇です。

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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「鉄鋼・非鉄」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=277

「エネルギー資源」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=272

「銀行」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=285

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反対に上昇率の小さなセクターには、「電機・精密」が登場しました。下落したわけではありませんが、前の週まで3週連続でマイナスを記録しており、このところ軟調な動きが目だちます。

半導体関連株は引き続きしっかりと値を保っています。東京エレクトロン(8035)やレーザーテック(6920)など、

(後略)

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鈴木一之