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2021年5月16日

3日で▲2000円強の急落、金利上昇で短期調整入りはやむなし

鈴木一之

◎日経平均(14日大引):28,084.47(+636.46、+2.32%)
◎NYダウ(14日終値):34,382.13(+360.68、+1.06%)

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鈴木一之です。新緑の季節です。目には青葉、山にはホトトギス、初ガツオのシーズンです。日本では人々が感染症を恐れて外出を控えていますが、大自然は着々と夏への準備を進めています。

観測史上で最速のペースで梅雨前線が張り出しています。これも気候変動の一環なのでしょうか。

GWが終わって経済活動が本格的に再開されてみると、マーケットはいきなり激震に見舞われました。先週は火曜日から木曜日までの3日間で、日経平均が▲2000円以上も値下がりしました。

「5月に売り抜けろ」とウォール街の相場格言は教えていますが、まさにその通りの動きとなりました。コロナウイルスの猛威は少しも衰えておらず、日本でもワクチン接種が始まりましたが行政サイドの手続きがおそまつで、社会の不満は高まる一方です。

そればかりでなく先週は、世界中であらゆる方面から問題が噴出しました。それらを受け止め切れずに株価は大きく値下がりしたように考えられます。蓄積していた負のエネルギーが社会のあちこちで発露を求めています。整合性のある説明はとてもできませんが、せめて事実関係だけを列挙しておきます。

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(1)物価の上昇

物価の上昇が庶民の生活を脅かしています。原油に始まり、鋼材、非鉄金属、レアアース、石油化学製品、農産物、木材、あらゆるモノの値段が急騰しています。決定的となったのは5月12日に発表された米国の4月・消費者物価指数で、前年同月比+4.3%の上昇となりました。

事前の市場予想は+3.6%でしたので、それを大幅に上回る内容となっています。これによって米国の株式市場が高値圏から大きく下落し、軟調な流れが東京市場にも波及しました。

昨年からのコロナ危機の影響によって、全世界規模で物流が滞っています。ある品目は荷動きがぱたりと途絶え、別の品目は世界中から引く手あまたで調達が不自由となっています。

ワクチン接種の進んだ国ではさっそく人々の消費活動が活発化しており、それがインフレ懸念に直結しています。インフレ懸念は現在の金融緩和が変更される思惑をもたらし、それが株価を押し下げました。米国の10年国債金利は一時1.7%乗せ寸前まで上昇しています。

(2)緊急事態宣言の発出

日本ではコロナウイルスの感染拡大が続いています。地方自治体によっては過去最高の感染者数を数える地域が急増しており、5月14日には北海道、岡山、広島の3つの道県に対して緊急事態宣言が発出されました。

これによって9つの都道府県に緊急事態宣言が出され、まん延防止等重点措置も10県になります。合計で19都道府県が対象となりました。

今回の発出は、北海道など当初は見送られるとされていた自治体に対して、急きょ宣言が出されるという異例の事態となりました。政府は専門家会議の意見を受け入れて判断したと説明していますが、そのような説明で納得している国民は少ないように感じます。

日本のコロナ対策がどうにもちぐはぐです。医療従事者、高齢者へのワクチン接種も始まってはいますがスピード感が感じられません。その間にも感染者数は増え、医療機関へのしわ寄せが強まって、医療崩壊のリスクが高まっています。

政策決定の遅れは、東京五輪・パラリンピックの開催の可否がかかっているためです。その点は世界中の誰もが知っています。この状況で二兎を追うことが本当に適切なのか、インドのような感染爆発に至らないのか、こういう時こそ政治の役割が重要ですが、何も決められないまま時間だけが過ぎている状況です。

(3)米パイプラインへのサイバー攻撃

米国で最大の石油パイプライン「コロニアル・パイプライン」がサイバー攻撃を受けて停止しました。比較的早い段階で再開されたので影響は最小限に抑えられましたが、いくつもの問題がくすぶっています。

被害を受けたのは米国・南部のテキサス州とニューヨークなど東海岸を結ぶ8800キロメートルの大動脈です。これがランサムウェアによってデータが乱され、解除するための身代金が要求されました。FBIが捜査に乗り出しハッカー集団「ダークサイド」の関与が判明しました。ロシア系と見られています。

今回は数日間の混乱だけで済みましたが、被害が長引けばガソリン価格の高騰につながった恐れがあります。また今回は短期間で収拾したのも、コロニアル・パイプが身代金を支払ったためとの見方もあります。

デジタルトランスフォーメーションがあらゆる分野で広がり、重要な社会インフラはクラウドなどのネットに接続するケースがほとんどです。ハッカー集団による攻撃は今後も次々と起こることが予想され、そのたびに社会のコストは上がってゆきます。

身代金を支払って早期解決を図るべきなのか、あるいは社会の混乱には目をつぶってでも要求は最後まで突っぱねるべきなのか、どちらがよいのか判断は分かれます。

(4)ガザ地区におけるイスラエルとパレスチナの紛争激化

イスラエルとパレスチナの紛争が激しさを増しています。パレスチナのハマスはイスラエルに対してロケット弾を撃ち込み、イスラエルはパレスチナ人の暮らすガザ地区に砲撃を始めました。

イスラエルによる地上軍の投入も観測され始めており、地上からの侵攻となれば2014年以来のこととなります。

紛争ぼっ発のきっかけはエルサレムでの、イスラエル軍によるパレスチナ人の排除だとされています。バリケードの設置、それに対する投石が次第にエスカレートして武力行使にまで発展しました。民間人から多数の死者が出ています。

パイプラインへのハッカー攻撃もそうですが、米バイデン政権に対する挑戦が相次いでいるように見えます。中東問題に対してどの程度の関与を行うのか、バイデン政権の態度がはっきりとしていないうちにその意思を挑発するかのような動きが続いています。

前政権のトランプ大統領は極端にイスラエルに肩入れする政策を採りましたが、それが重石となって直接的な武力紛争は回避されていました。その間に蓄積した憤懣がバイデン政権になって噴出しているように感じられます。

国連安保理は会議ばかりでまるで機能しておりません。今のところ原油価格には影響していないように見えますが、イスラエルはイラン核合意の復活を目指すバイデン政権に対して強硬な姿勢を取る構えのようで、長期化も予想されます。

政権から100日を経過したばかりのバイデン政権は、中東政策に関しては早くも苦境を迎えつつあります。

どれひとつとして簡単には解決の糸口がつかめない問題ばかりです。とりわけ物価の高騰は世界の平均的な、あるいは平均に満たない庶民の暮らしに大きなダメージを与えます。

株式市場は保ち合い期間が長く続いたために、短期的な調整は避けられないとの見方も増えつつあるようです。

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先週の株式市場の動きについて。

5月第2週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。その前の週は大型連休の谷間で、立ち合い日数が2日間しかありませんでしたが、それもあって3週ぶりに反発しました。それが早くも軟化しています。

TOPIXの下落率は▲2.57%に達し、2月最終週の▲3.34%以来の大きさです。

規模別指数では大型株から小型株までいずれも大きく下落しました。中でも成長株の集まる中型株指数の下げが目立っています。グロース株の軟調も続いており、東証マザーズ指数は大幅安で4週連続での下げとなりました。東証REIT指数も軟調です。

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TOPIX-17業種のセクターごとの騰落では、値上がりセクターが3業種、値下がりセクターが14業種となりました。

値上がりセクターのトップは「食品」です。大型連休をはさんで2週連続の上昇となりました。

味の素(2802)、ヤクルト本社(2267)を筆頭に、

(後略)

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鈴木一之