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2022年6月20日

FRBが今年3度目の利上げを決定、日米株価は大幅安、日銀は現状維持

鈴木一之

◎日経平均(17日大引):25,963.00(▲468.20、▲1.77%)
◎NYダウ(17日終値):29,888.78(▲38.29、▲0.12%)

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鈴木一之です。今週も激動の1週間でした。中央銀行による「金融政策ウィーク」とでも言われるような週で、株式市場は激しい動きを示しました。

6月14-15日に米国でFOMCが開催され、今年3度目の利上げ、FFレートの0.75%引き上げが決定されました。

実際に起きたことはほとんどこれだけのことなのですが、その前後において物価と経済の先行きを巡ってあらゆる思惑が交錯し、株式市場は大きく揺さぶられることとなりました。

1週間前に発表された米5月・消費者物価指数が+8.6%の上昇を記録し、インフレの鎮静化が一向に見られないことが今回の決定につながりました。

NYダウ工業株は前の週半ばの32,000ドル台から、先週末には30,000ドルの大台を割り込んでいます。2021年1月以来、1年5か月ぶりのことです。米国だけでなく世界の主だった国で政策金利が引き上げられていることも動揺を誘いました。

東京市場も同様です。前の週は135円台の円安に進んだこともあって日経平均は28,000円に乗せましたが、先週末には26,000円台の大台を割り込むまで大きく下落しました。信越化学工業(4063)、東京エレクトロン(8035)、キーエンス(6861)、リクルートHD(6098)などの大型株、景気敏感株が厳しい下げに見舞われました。

FRBの政策金利の引き上げは事前に予想されたことですが、問題はその引き上げ幅です。0.75%の引き上げは1994年11月以来、実に27年7か月ぶりのことです。

同時に発表された3か月に一度のボードメンバーによる政策金利の「先行きの見通し」(いわゆるドットチャート)は、中央値で2022年の見通しが3月時点の1.9%から3.4%に引き上げられました。同じように2023年も3月時点の2.8%から今回は3.8%となりました。どちらも大幅な引き上げです。

この見通しどおりに進んだとして、2022年の政策金利が3.4%になれば、今年残された4回の決定会合のすべてで0.5%の引き上げが必要となります。パウエル議長はFOMC後の記者会見で、次回の決定会合でも0.75%の引き上げが必要であることを匂わせています。

問題はこれほどの利上げペースを実施することで、景気が腰折れしないかという点です。6月15日に発表された5月の米国の小売売上高は前月比▲0.3%の6729億ドル(90兆円)となりました。5か月ぶりの減少を示しています。

ガソリン価格が1ガロン=5ドルを超えており、物価の上昇が消費者の買い控えを招いて米国の消費を冷え込ませていると見られます。カンファレンス・ボードの調べでは、世界の経営者・CEOの6割強が2023年までのどこかで景気後退に陥ると見ています。インフレ抑制のためには景気後退も避けられないと多くの人が考え始めているようです。

FRBはまさにこの点を金融政策を動かすことによって狙っていると見られます。強すぎる消費を抑えて物価上昇の鎮静化を図る。その間に株価はかなりのダメージを受けることになりますが、40年ぶりの高インフレという異常事態に対処するためにはそれしか打つ手がないのも実情です。

NYダウ工業株は1週間で▲4.8%、S&P500は▲5.8%の下落となりました。コロナ危機以降では最も大きな下落幅です。株価の下落も米国民の消費活動を冷え込ませる一因となります。

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政策金利の引き上げはFRBだけではありません。先週はイングランド銀行が5回連続で金利の引き上げを決定しました。さらに欧州のアンカーと見られるスイス国立銀行もそれまでの▲0.75%から▲0.25%に、政策金利のマイナス幅を縮小する決定を下しました。15年ぶりの利上げです。

その前の週にはECBが7月以降の金利引き上げ、量的緩和の縮小を決定しています。それによってイタリアを中心に、欧州の財政基盤の弱い国の長期金利が急上昇しました。インフレ抑制と財政不安は両刃の剣です。

世界中の金融市場がますます不安定化してゆく中にあって、日銀だけが例外的な動きを採っています。先週末に実施された日銀の金融政策決定会合において、大規模な金融緩和の継続を決めました。長期金利を0.25%に固定するイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)は継続されることになります。

日本でも物価の上昇は顕著となっていますが、現在のところ消費者物価の上昇はわずかに2%を超えただけです。日銀としては原油価格の上昇による物価高が主な要因なので持続力がないというのが、量的緩和を継続する理由としています。

為替市場ではいったん円高・ドル安に傾きかけた流れが、週末にはわずかながらも再び円安基調に戻りました。財務省による円買い介入の発動の観測も根強く残っているものの、実施するのは政策的な矛盾を抱えているだけに現実にはむずかしいと考えられます。

しかし日銀はいずれ政策の大きな転換を迫られると見る投機家も数多く存在し、それらが一斉に日本国債の売りを仕掛けています。今回の日銀の決定が吉と出るか凶と出るか。結局はかなりの時間が経過しないとわかりません。

現時点では判断はむずかしいのですが、日銀が政策転換に踏み切っていたら世界のマーケットはさらにむずかしい局面に差しかかった可能性もあるわけです。今週から来週にかけて、引き続き市場の動きに注意してゆく必要があります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが5週ぶりに反落しました。その前の週までは135円まで進んだ円安を好感する形で株価の上昇が続いていましたが、それが大きく反落しました。

1週間の下落率は▲5.52%に達し、昨年9月最終週に▲5.0%の下げを演じて以来の大きさです。当時は自民党総裁選が終わったばかりで、岸田総裁が金融所得課税に言及した時の下げ以来ですが、今回はその時の下落率を超えています。

規模別では大型株の下げが最も大きく、海外株式市場の軟調な動きに連動しています。中でも大型・グロース株の下落が▲7.13%に達しており、半導体セクターを中心にテクノロジー株が下げをリードしました。東証マザーズ指数も3週ぶりに下落し▲9.61%の大幅安となっています。

テクニカル面では、日経平均のサイコロジカルラインは「6」に低下しましたが、それでもまだ中立的な位置にとどまっています。騰落レシオは100%の中立ラインをわずかに下回り、先週末の時点で92.05%まで後退しました。

東証REIT指数も5週ぶりに反落しました。債券市場で金利上昇が続いており、高利回り銘柄の多いREIT市場にはその分だけ売り物が広がりました。配当フォーカス100指数も5週ぶりに反落しています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がり業種が「食品」の1業種のみ、値下がり業種は16業種に広がりました。

上昇率トップの「食品」はディフェンシブ株の流れに乗っていると見られます。山崎製パン(2212)、亀田製菓(2220)、カルビー(2229)、ヤクルト本社(2267)、日本ハム(2282)など、値上げが浸透している銘柄が総じて堅調でした。ビール株でもキリンHD(2503)、サッポロHD(2501)がしっかりしています。

マイナスでしたが「銀行」、「金融(除く銀行)」の金融セクターが総じて安定した展開です。中でも「銀行」では地方銀行が引き続き堅調な値動きとなりました。

地銀株は長らく人気の出なかった業種です。それがここに来て全体相場が軟調な状況にあって、逆にしっかりした動きが目立っています。地方銀行はゼロ金利政策が続く中で利ザヤの確保に苦労していますが、それでも史上最高益を更新するほど業績の好調な企業がいくつもあります。

しかも不人気が続いたために株価が安く、配当利回りがいまだに3~5%台という銘柄も数多く見られます。折しも参院選の投開票が近づいており、岸田政権の掲げる「デジタル田園都市構想」の推進にも沿った業種として、注目度が次第に高まっているようにも感じられます。

同じく「電力・ガス」も健闘しました。電力株の値動きは先週は目立つほどではありませんが、ここでもやはり地方経済の活性化がキーワードになっています。これまで以上に地方に産業のすそ野が広がるようになれば、それが最も望ましい姿でもあります。

反対に値下がりセクターの上位には「機械」、「電機・精密」、「エネルギー資源」、「鉄鋼・非鉄」などの景気動向に敏感なセクターが並びました。

特に機械セクターは、前週までの円安基調で上昇した銘柄が多かっただけに、DMG森精機(6141)、SMC(6273)、牧野フライス製作所(6135)などが反動安で値下がりしました。

エレクトロニクスでは特に半導体関連株を中心に幅広い銘柄が値下がりしました。これらの銘柄が底堅さを示すことがマーケットのみならず、広く世界経済に落ち着きが戻ることになります。年後半に向けて大きなカギを握っています。

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先週のマーケットではもうひとつ、ANYCOLOR(5032,エニーカラー)に話題が集中しました。

(後略)

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鈴木一之