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2025年6月23日

イスラエル・イランの衝突が続く、日経平均は2月以来の高値に

鈴木一之

鈴木一之です。イスラエルとイランとの部色衝突は続いています。アメリカが参戦するのか、「バンカーバスター」はいつ投下されるのか。緊迫した状況です。

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先週の日経平均の値動きです。

・6月16日(月):38,311円(+477円)
・6月17日(火):38,536円(+225円)
・6月18日(水):38,885円(+349円)
・6月19日(木):38,488円(▲397円)
・6月20日(金):38,403円(▲85円)

前の週とまったく同じで、週初めの3日間は上昇し、週末の2日間は下落しました。特に6月18日(水)に記録した38,885円は高値引けで、5月半ばと5月末の終値を抜いて直近高値を更新しました。2月以来の水準に達しています。

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東京市場は意外なほどしっかりした動きとなっています。日経平均は週間では2週連続の上昇となり、上昇幅は+569円に拡大しています。週足でも陽線を記録しました。

イスラエルとイランの部色衝突は開始から10日目に入りました。イスラエルによる空爆はイラン全土に及び、核施設への攻撃も行われています。

イスラエルによる一方的な開戦からわずか数日で、イスラエルはイラン上空の制空権を握りました。こうなるとイランの反撃はほとんど効果がありません。ワンサイドゲームの様相を帯びています。

それでも戦争は終結せず、次なる焦点は米国がイランへの攻撃に参戦するかどうかに移っています。トランプ大統領は2週間の期限を区切り、米国のイランへの軍事介入に踏み切るかどうかを決めるとしました。地下深くの核施設も破壊できる「バンカーバスター」の投下も視野に入ります。

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市場心理は中東情勢の緊迫度に左右されていますが、当初懸念されていたホルムズ海峡の封鎖、それに伴う原油価格の高騰は今のところ実現してはおりません。

重要なのは今週からの展開です。焦点は6月24-25日にオランダ・ハーグで開催されるNATO首脳会議です。ここにトランプ大統領も出席して欧米の首脳間でイスラエル・イラン紛争が議論されます。

関税問題ははいったん棚上げされ、マーケットはひたすら次に起こる新しい軍事的な緊張、新しい事態に備えるために動きを止めています。

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過密日程だった先週の動きの中で、印象的だったのがカナダ・カナナスキスでのG7首脳会合です。トランプ大統領がG7の閉幕を待たずに帰国したため、米国抜きの「G6」で行われた残りの日程では何も決めることができませんでした。

6つの個別分野への共同声明(レアアース、AI、量子、国境を越えた抑圧行為、山火事、移民)を出しただけにとどまり、共通の首脳宣言「コミュニケ」を出すこともできませんでした。ウクライナ紛争は個別案件としての共同声明すら見送られました。G7と言ってもそこには「米国1強」があまりに色濃く反映されています。

日本はG7後に日米首脳会談を開き、長引いている関税問題をトップ同士で一気に解決する算段で臨みました。しかしそれも完全に空振りに終わった模様です。

中東紛争という新たな問題が沸き上がったために、日本は猶予期間の7月9日までに交渉をまとめる道筋がますます描きにくくなったように見られます。

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日本経済新聞が報じた5月の貿易統計の分析によると、日本から米国への自動車の輸出は台数が前年比▲3.9%の減少(10万2653台)にとどまっているのに対して、金額(3634億円)は▲24.7%も減少しています。

これは日本の自働車メーカーが米国での販売価格を維持するために、関税による価格上昇分をコストとして自社で負担、吸収している可能性があるとしています。

販売価格は1台あたり354万円と計算され、値下がり幅は前年比で▲98万円に達します。数量の落ち込みは限定されたとはいえ、金額分の減少はかなり大きいことになります。日経平均は週を通じて意外なほどの堅調さを見せましたが、自動車メーカーの株価は少しずつ下値を切り下げています。

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先週のニュースとしてもうふたつ。ひとつは米国の金融政策です。

FRBはFOMCを開催し、政策金利は4.25-4.50%で据え置きとしました。これで4会合連続での変更なしです。ボードメンバーの先々の政策金利見通しであるドットチャートの形状からは、年内の利下げは2回とされました。

終了後の記者会見でパウエル議長は、「(物価上昇率は)夏にかけてさらに上昇する」との見通しを指摘し、トランプ関税の影響はこれから出てくると予想しています。

その上で「物価への影響は誰も確信を持っているわけではない」、「短期的かもしれないし、より粘り強いインフレになる可能性もある」とも述べました。FRBですら先行きがわからないというスタンスであり、それまで明確な動きは取れないとのメッセージが明らかです。

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もうひとつのニュースは日銀です。

日銀は金融政策決定会合を開き、事前の予想通り政策金利を0.5%に据え置くことを決めました。日米ともに据え置きです。

同時に日銀は現在おこなっている国債買い入れの減額の規模を、これまでの「四半期ごとに4000億円」の減額から、2026年4月以降は2000億円に圧縮すると決定しました。

いわゆる「量的引き締め」の緩和で、減額ペースを緩めることになります。これも事前の予想通りです。

記者会見で植田総裁は、2024年8月からスタートした量的引き締めを、「大規模緩和の副作用が表れないよう注意深く進める」と説明しました。

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日銀の金融政策は緩和方向に動きましたが、日本での物価上昇は一段と強まっています。

総務省が6月20日に発表した5月の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が111.4となり、前年同月比+3.7%の上昇でした(4月は+3.5%)。これで3か月連続して伸び率が加速しています。食料品の上昇が全体を押し上げています。

大きなニュースが相次いだ1週間でしたが、変化という点ではむしろ動きの乏しい1週間でもありました。株式市場は安定した推移を続けています。最大の理由が海外投資家の日本株買いです。

東証が発表した6月第2週の投資部門別株式売買動向では、海外投資家は日本株を+997億円、買い越しました。これで11週連続での買い越しです。米国1極集中からの地域分散を再構築している海外投資家は、4月初旬の急落後は一貫して日本株を買い越していることになります。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週ぶりに反発しました。上昇率は▲0.54%で、前の週の▲0.46%に続いて小さな値動きとなりました。日経平均では5月の戻り高値を更新していますが、TOPIXはそこまではわずかですが達しておりません。

規模別指数は、大型株指数が+0.24%に対して、中型株指数が+1.15%、小型株指数も+1.02%と健闘しました。中型株指数のみ続伸しています。東証グロース250指数(旧マザーズ指数)は4週ぶりに反落しました。

スタイル別では、大型バリュー株が+0.65%の3週ぶりの反発に対して、小型グロース株は+1.26%と4週連続の上昇となりました。小型かつグロース株が有利となる展開が続いています。

東証プライム市場の騰落レシオ(週末値)は104.06%に浮上しました。100%の大台を4日間続けています。日経平均のサイコロジカルラインは「7」~「8」を繰り返して、週末は「7」で終わりました。

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TOPIX-17業種の騰落では、値上がりセクターが12業種、値下がりセクターは5業種でした。

値上がり業種のトップは「電力・ガス」、第2位が「不動産」、第3位は「情報通信・サービス」です。出遅れていた内需株の物色が活発化しています。

値上がりトップの「電力・ガス」では東京電力HD(9501)、関西電力(9503)、中部電力(9502)、九州電力(9508)が週を通じて堅調です。6月で30度を超える真夏日が全国的に観測され、夏の電力使用量の増加が気になります。

生成AI向けのデータセンター投資もますます増強され、将来的な電力需要の高まりも株価を押し上げる背景と見られます。

値上がりセクター第2位の「不動産」では、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)を中心に、東京建物(8804)、平和不動産(8803)など大手不動産セクターが堅調です。

値上がりセクター第3位は「情報通信・サービス」です。スクウェア・エニックス(9684)、カプコン(9697)、コナミグループ(9766)のゲーム株が広範囲に買われ、メルカリ(4385)、クレスコ(4674)、アイモバイル(6535)がここでも堅調でした。

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一方で、値下がりセクターの上位は「医薬品」、「エネルギー資源」、「自動車・輸送機」です。

先週まで堅調だった「エネルギー資源」は、INPEX(1605)、ENEOSホールディングス(5020)など、各社とも高値横ばいの推移となりました。

「医薬品」は武田薬品工業(4502)、第一三共(4568)、アステラス製薬(4503)、エーザイ(4523)の大手医薬品メーカーがそろって下落しました。

参院選に向けて各党の選挙公約が徐々に出そろい、各党とも給付金や減税などばらまき型政策を前面に打ち出しています。

財源の不安が常につきまとっており、そうなると政策的に削減が容易な薬価収載の見直しがあらためてちらついている模様です。

関税問題に関して米国との通商交渉に進展が見られず、「自動車・輸送機」ではトヨタ自動車(7203)を筆頭に、

(後略)

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鈴木一之