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2025年8月5日
米国の相互関税が15%に決着、日経平均は41,000円台、TOPIXは最高値更新

鈴木一之です。重要な変化が立て続けに起こった1週間でした。日経平均は一時42,000円まで急騰しています。
先週の日経平均の値動きです。
・7月21日(月):ーーー円(祝日)
・7月22日(火):39,774円(▲45円、一時は+400円)
・7月23日(水):41,171円(+1397円、高値42,065円まで)
・7月24日(木):41,826円(+655円、TOPIXは最高値更新)
・7月25日(金):41,456円(▲370円)
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1週間前、参院選の投開票が行われ、自民・公明の与党が過半数を下回りました。つい先日の出来事ですが、それがはるか遠くの出来事に感じられます。それほどまでに先週は重要な変化が立て続けに起こりました。
石破首相の退陣論が自民党内でも猛烈な勢いで吹き荒れています。かろうじて退陣せずに踏みとどまっている最大の理由が米国との関税交渉です。
相互関税の交渉期限が8月1日に迫っており、その間に首相退陣→自民党総裁選という政治の空白を作るわけにはいかないと首相は説明しています。
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それに対して米国は突如として「相互関税15%」と通告してきました。個別関税も自動車は15%というのです。
参院選と関税。この2つのニュースで市場はプラスの方向に大きく変動しました。日経平均は一時42,000円台まで上昇し、TOPIXは終値で史上最高値を更新しています。
相場に影響を与える重要なニュースがあまりに多く、しかもそのほとんどがまだ決着しておりません。現在進行形で今後も相場に影響を与えることになりそうですが、グッドニュースのほとんどが出尽くしてしまったとも考えられます。
現時点で判明していることだけをごく簡単に記録しておきます。
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(月曜~火曜日のマーケット)
参院選は大方の予想どおり、与党敗北の結果で終わりました。全体の改選議席数124に欠員補充の1を加えた125議席のうち、自民党は39議席に減りました。勝敗を決定づける1人区で14勝18敗と負け越し、前回の28勝を大きく下回りました。
公明党も改選前の21議席から8議席に大きく減少し、自公合わせて47議席。非改選と合わせて122議席という結果でした。
過半数の125議席を下回り、ぐんと低く設定した勝敗ラインである「非改選合わせて過半数」すら超えることはできませんでした。インフレ経済での選挙はどの国も与党が断然不利です。
野党では国民民主党の勢いが継続しています。選挙区で10議席、比例代表で7議席、合計で17議席を獲得して改選4議席の4倍以上に躍進しました。目標だった16議席を超えて、非改選の5議席とあわせて予算を単独で提出できるまでに党勢を拡大しました。
参政党は選挙区で7議席、比例代表でも7議席、合計で14議席を獲得しました。単独で参院に法案を提出できるまでになり、今回の参院選の最大の勝者は参政党と見られています。海外メディアも参政党の躍進を「日本の保守化、右傾化」と大きく報じています。
野党第1党の立憲民主党は、改選前の議席と同じ22議席にとどまりました。選挙区では健闘しましたが、比例代表が7議席にとどまったことが影響しています。立憲民主党は敗北に近い成績だったと評価されています。日本維新の会は1議席積み増して7議席でした。
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3連休明け最初の株式市場の反応はむしろ好意的なものとなりました。与党が過半数を割り込んだのは事実ですが、過半数にわずか3議席とどかない程度の敗北で、事前の予想以上に健闘したというのが率直な受け止め方です。
自民党内ではさっそく「石破おろし」が始まっています。非主流派の麻生派、旧茂木派を中心に署名運動が行われており、両院議員総会を開催して石破首相の責任を問う動きが強まっています。
今週から政局・夏の陣が一段と強まると見られますが、市井の声は石破首相に同情的でもあります。「石破やめろ」の街頭デモが行われているすぐそばで、「石破やめるな」の街頭集会も行われています。「やめるな」集会は自民党政権下ではきわめて珍しいように思います。
「石破やめるな」派は自民党に新総裁が誕生した際の保守化、右傾化を懸念しています。SNSのフォロワー数も「石破やめるな」派が数の上では勝っています。
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今後の焦点は日本の財政です。衆院に続いて参院でも少数与党体制となったことから、消費減税や年金改革問題が補正予算を巡る臨時国会でも前面に出てくるのは必至と見られます。
22議席を獲得した国民民主党は、いまや単独で予算措置を伴う法案も提出できるため、その勢いで臨時国会で所得減税案を提出する方向です。
経済学者の大半が消費減税の景気刺激効果は小さいとしており、世論も消費税引き下げは慎重の声が多いようです。また野党といえども、減税法案の方向性を一本化するのはむずかしいと見られます。
立憲民主党の主張で食品の消費税を2年間ゼロ。それに対して参政党、れいわ新選組は消費税廃止を求めています。
それに伴う財源は、立憲民主党の案で5兆円で、参政党、れいわ案では30兆円にも達します。長期金利は再び上昇し始めており、10年国債金利は週末に1.60%を超えました。2008年以来のことです。
「1人2万円の給付金」を掲げて選挙戦に臨んだ自公政権が、野党の要求に対していつまでゼロ回答でいられるのか。それに対する「債券市場からの反乱」のどのように防ぐのか。ドル円相場は146円と148円の間で動きを止め、次の展開をにらんでいます。
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(水曜~金曜日のマーケット)
7月23日(水)午前7時過ぎ、日本と米国が関税交渉で合意したと第一報が入りました。そこからは参院選の話題は吹き飛び、市場の話題は関税一色に置き換えられました。
今回の合意内容は、米国は日本に対して相互関税は25%から15%に引き下げる、自動車関税も半減する(25%→12.5%)というものです。
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米国のここまでの交渉過程で相互関税が15%まで引き下げたられた例は、対米貿易黒字を抱える国としてはありません。現時点で最低の水準となります。
参院選の直後に米国を訪れた赤沢経済財政担当相がトランプ大統領と直接会談して交渉をまとめました。関税のほかにも日本は最大で5500億ドル(80兆円)の資金枠を設けて、対米投資を拡大すると約束しました。
さらに米国車の輸入が進むよう安全審査の手続きを簡略化し、ボーイングの航空機も100機購入すると示しました。
この第一報を受けて水曜日の株式市場は寄り付きから大幅高となりました。自動車のマツダ(7261)がストップ高まで買われ、スバル(7270)、三菱自動車(7211)など対米輸出の割合の大きなメーカーが大幅高となっています。
トヨタ自動車(7203)、ホンダ(7267)、日産自動車(7201)も一斉に2ケタの上昇率を記録するまでに上昇し、自動車および自動車部品株が軒並み高となりました。
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その勢いは翌木曜日も持続し、自動車株からタイヤメーカー、スペシャリティケミカルの化学メーカー、非鉄精錬、トラック・自動車輸送、商社など、自動車産業を取り巻く周辺ビジネスーまで物色が広がっています。
今回の合意で自動車と自動車部品の個別関税は一律15%になりますが、鉄鋼・アルミの関税は合意の対象外なので今後も50%の税率が適用されます。もろ手を挙げて喜ぶわけにはいきません。
合意の内容もあいまいな部分がかなり残っています。トランプ大統領は合意の翌日に「日本は数十億ドルの軍事装備品の購入に同意した」とSNSに投稿しましたが、日本政府の公式見解にはその点については明確な言及はありません。防衛装備品は現行計画の範囲内で進められることになると日本側は受け止めています。
また農産物に関してブルームバーグ通信は、日本が米国産コメの調達を75%増やすことで合意したと報じています。それに対して日本側は、年77万トンのミニマムアクセス(関税ゼロの輸入枠)は維持したまま、枠組みを変えずに米国からの輸入を増やすとしています。
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最大5500億ドル(80兆円)の投資に関しても、米国はあくまで日本から米国に対する投資であり、利益配分は90%が米国が受け取るとしています。
ここでも日本政府は、政府系金融機関による最大5500億ドルの出資・融資にとどめ、利益配分も日本が1で米国が9なら、受け取りも1対9になるという説明に終始しています。出資比率がそのまま利益配分の比率となるわけで、民間の合弁企業の利益配分と同じです。
日米両政府の受け止め方がここまで食い違うのは、両国が法的拘束力のある合意文書を作成していないためです。どの国も作っていません。米国の事務方が他国との交渉に追われ、通常であれば作成する合意文書を作るまでに手が回らないという事情があるようです。
今回の合意に「再び関税を上げない」との条項が入っていないことも気がかりです。ベッセント財務長官は「合意が守られなければ再び25%に戻る」と述べており、今回の合意だけですべての事態が好転したわけではないことも念頭に置かなければなりません。
この週末には米国とEUとの関税に関する直接交渉が行われます。これが当面は最も大きな関門となります。金曜日の株式市場は、物色動向が再び内需セクター中心に戻ってきました。今週以降の株価の動きが非常に重要になりそうです。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが大幅に続伸しました。上昇率は+4.14%まで拡大し、昨年3月第3週に記録した+5.33%以来の大きさです。
その前の週の上昇率が今年2番目の小さな値動き(+0.40%)でしたので、小さな値幅を記録したすぐ後に大きな値幅が出てくる、という典型的な事例となりました。
規模別指数は、大型株指数が+4.95%まで拡大し、中型株指数の+2.60%、小型株指数の+2.45%を大きく上回りました。大型株が主導する上昇が顕著となっています。東証グロース250指数(旧マザーズ指数)も2週ぶりに反発しました。
スタイル別では、バリュー株がわずかながら優勢です。大型バリュー株は+5.00%まで上昇幅を広げ、一方で大型グロース株は+3.41%の上昇にとどまりました。そうは言ってもグロース株もまずまずの上昇です。小型バリュー株は+2.81%、小型グロース株も+2.08%でしっかりしています。
東証プライム市場の騰落レシオ(週末値)は週末に124.09%に上昇しました。引き続き過熱圏とされる120%の水準を超えていますが、この数値がどんどん切り上がるという状況ではありません。日経平均のサイコロジカルラインも前の週と同様、「5」~「6」の範囲で推移しており、週末は「5」で引けました。テクニカル上の過熱感はさほど感じられません。
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TOPIX-17業種の騰落では、17業種すべてのセクターが値上がりしました。
値上がり業種の上位は「銀行」、「自動車・輸送機」、「機械」です。反対に上昇の小さかったセクターは「食品」、「運輸・物流」、「化学」でした。
前の週は、このところマーケットで人気を集めている「電機」(半導体、電子部品)、「機械」(半導体製造装置)、「鉄鋼・非鉄」(光ファイバー)、「自動車・輸送機」、「銀行」など主力セクターがほとんど騰落ランキングの上下に登場しない、という変動の小さな週でした。
そのような週の動きの次に大きな変動が起こり、先週は人気のある業種が前面に出てきました。
値上がりトップの「銀行」は、地銀株にリードされる形で久々にメガバンクが大きく上昇しました。みずほFG(8411)がいち早く年初来高値を更新し、三菱UFG(8306)、三井住友FG(8316)、りそなHD(8308)がそのあとに続いています。
先行した地銀株も総じて堅調です。ほくほくFG(8377)、大分銀行(8392)、めぶきFG(7167)、第四北越FG(7327)、群馬銀行(8334)など、次々に高値を更新する銘柄が出ています。
関税問題が当初想定されたほどには厳しいものにならない安心感から、日銀の金融政策が元に戻る日も近いとの見方が根底にあります。
値上がり第2位は「自動車・輸送機」です。関税15%の第一報が伝えられた水曜日には、マツダ(7261)がストップ高まで買われ、トヨタ自動車(7203)、スバル(7270)、ホンダ(7267)、三菱自動車(7211)から日産自動車(7201)に至るまで、対米依存度の高い自動車メーカーが軒並み高となりました。
同じようにトピー工業(7231)、大同メタル工業(7245)、アイシン(7259)、豊田合成(7282)のような低バリュー、高利回りの自働車部品株も一斉に急伸しています。
値上がりセクターの第3位は「機械」です。自動車業界と縁の深い工作機械が堅調で、DMG森精機(6141)、オークマ(6103)、SMC(6273)、ジェイテクト(6473)が同じく急伸しました。
相互関税の影響が大きいと見られていた建設機械のコマツ(6301)、日立建機(6305)、竹内製作所(6432)、今後の米国との交渉でもカギを握る防衛関連の三菱重工(7011)、IHI(7013)、日本製鋼所(5631)も上昇が目立っています。
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値下がりセクターはゼロですが、上昇の小さかった業種は「食品」、「運輸・物流」、「化学」となりました。前の週まで物色の中心だった内需セクターが一服しているようです。
「食品」はヤクルト本社(2267)、JT(2914)の動きが鈍い点が影響しているようです。
それでもキユーピー(2809)、
(後略)
