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2021年5月5日

ガマンのGW、株式市場は調整ムードが強まるが、決算発表は好調

鈴木一之

◎日経平均(30日大引):28,812.63(▲241.34、▲0.83%)
◎NYダウ(30日終値):33,874.85(▲185.51、▲0.54%)

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鈴木一之です。GWが始まりました。2年連続で不要不急の外出自粛が求められています。こんな経験は人生において二度とないことでしょう。そう願いたいものです。

株式市場は全面高と全面安を繰り返す、不安定な値動きに戻っています。5月と言えば株式市場では、「5月に売り逃げろ」というウォール街の相場格言がやたらと意識されてきます。今年もそうなってしまうのか、不安ばかりが募ります。

不安定の震源地は4月相場にあります。4月は思えば意外なことばかり起こりました。

アルケゴス・キャピタルの損失に絡んだ野村HDの2000億円を超える損失発生、東芝に対するCVCキャピタルからの買収提案(非上場化)、その東芝の車谷社長の突然の辞任、ルネサスエレクトロニクスの工場火災、世界中が心配する半導体不足、これで世界の自動車業界は260万台の減産を強いられるとか。

大阪府における「まん延防止等重点措置」の要請、東京・大阪への3度目の緊急事態宣言の発出、ビットコインの急騰と急落、広島・長野・北海道の衆参補欠選挙での自民全敗。

中でも極めつけは日米首脳会談が開催されたことです。バイデン大統領が就任後に初めて対面した外国の首脳が日本の菅首相でした(その後も誰にも会っていません)。そこで発せられた共同声明は52年ぶりに「台湾海峡」の文字が盛り込まれました。

「日本の首相と会談した」というよりも、間接的に中国に警告を与えたという意味合いの方が強かったように感じられます。これで日本は米国の対中国政策に全面的に組み込まれ、矢面に立たされることとなりました。日本は今後、防衛力を徐々に強化してゆく方向は避けられそうにありません。

4月15-16日に開催された日米首脳会談をはさんで、株式市場は不思議なほどのこう着状態に入りました。前後2週間にわたって日経平均は上下動のほとんどない展開となっています。その間に全面高と全面安が何度か繰り返され、無機質の動きが目立ちました。

全面安で下落したにもかかわらず、その日に日銀のETF買いが発動されなかったことに失望し、それがまた全面安をもたらしました。日銀のETF買いによって市場の躍動感が損なわれたと否定的な意見も多いのですが、いざ下がった時のETF買いがなくなると、それによって不安が増幅する悪循環が繰り返されています。

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一方で米国の株式市場は堅調です。NYダウ、S&P500に続いてNASDAQまでが史上最高値を更新しました。景気敏感株とともに半導体関連株がしっかりしています。GAFAMの1-3月期の決算は脅威的な収益の伸びが見られました。これこそ本物の成長株です。

4月28日にバイデン大統領が施政方針演説を行いました。大統領就任後では初めての議会での演説です。

コロナウイルスへの対策と米国経済の復活を前面に打ち出し、経済政策としては社会インフラに8年間で2兆ドルを投じる「雇用計画」を明らかにしました。さらに格差是正、教育支援、中間層の復活に対して10年間で1.8兆ドルを投じる「家族計画」にも言及し、財源として富裕層への増税を充てる構想をぶち上げました。

日米首脳会談の形を取った中国への警告、日米首脳会談、その直後に開催された環境サミット。就任100日目を目前にしてバイデン政権はこの4月、立て続けに政権運営の全貌を丸ごと打ち出してきました。ここに至るまでのこう着感の強いマーケットの展開は、この後に待ち受けている嵐の前の静けさのように感じられます。

5月以降に本当の試練が待っているように思えてなりません。日本は5連休明けの木曜日から始まりますが、2021年の後半戦が早くも幕を開けたような気がします。

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先週の株式市場の動きについて。

4月第5週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。前の週にTOPIXの下落率は▲2.34%%に達し大きく下落しましたが、先週は▲0.87%の小さな値下がりにとどまりました。

GWを目前にして動きがとれないという事情もあったように感じられます。緊急事態宣言が大阪、東京で発出されて経済活動が再び鈍ってきた点も背景にあります。

大型株、小型株いずれも軟調でした。東証マザーズ指数も小幅ですが続落しました。バリュー株よりもグロース株の軟調さが目立っています。その一方で東証REIT指数は早くも反発に転じました。

TOPIX-17業種のセクター別の騰落は、値上がりしたのは5業種で、反対に値下がりしたセクターは12業種でした。前の週に値上がりしたセクターが下落し、反対に値下がりしたセクターが再び上昇しています。

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値上がりセクターのトップは「鉄鋼・非鉄」です。鋼材市況の上昇が続いており、日本製鉄は薄鋼板の店売り価格を6月から1トン当たり+10%引き上げると表明しました。自動車の生産に用いる熱延コイルは世界的に需要が拡大しています。

同じようにエンジンの部品に用いられるアルミ2次合金も直近1か月で+2%上昇しています。直近ボトムの昨年夏からは3割近い上昇となります。

米国では財政激策を受けて、1-3月期GDPが前期比年率+6.4%も増えました。民間企業の設備投資は年率+9.9%も伸びており、個人の住宅投資も+10.8%という高い伸びを記録しています。これらの押し上げが鉄鋼や非鉄をはじめ、世界的な素材市況の上昇を招いています。

値上がりセクターの第2位は「運輸・物流」です。海運市況はコンテナ船運賃を中心に大幅に上昇しており、海運株は一貫して堅調な値動きとなっています。先週はそれに続いて陸運、空運も株価は急落した後に急上昇する展開となりました。

緊急事態宣言の発出がいったん悪材料出尽くしの可能性と受け止められている様子です。コロナウイルスの感染者数の拡大には歯止めはまだかかっていませんが、過去2回の時と同様、人々の行動制限は着実に感染を抑え込むと見られます。

さらに下落の続いていた「銀行」や「金融(除く銀行)」も総じて反発に転じました。米国で長期金利の低下が収まり、再び金利上昇期に入りつつあるように見られます。

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値上がり業種のチャート(日足、直近3か月)

「鉄鋼・非鉄」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=277&mode=D

「運輸・物流」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=282&mode=D

「エネルギー資源」
https://quote.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/hist_index&basequote=272&mode=D

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反対に、値下がりセクターのトップは「医薬品」です。前の週に値上がり率のトップとなりましたが、それが1週間で完全にひっくり返りました。

続いて「素材・化学」、「電機・精密」という顔ぶれです。大型連休をまたいで3月決算企業の決算発表が本格化しており、主力の大型株が続々と決算を明らかにしています。

日立(6501)、富士通(6702)、

(後略)

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鈴木一之