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2023年10月30日
中東情勢、金利上昇、そして中間決算の発表がそろって株価調整を促す
鈴木一之です。恐れていたイスラエルによるガザ地区への地上戦が開始されました。ネタニヤフ首相が10月28日(土)夜に記者会見を開いて発表しました。
ネタニヤフ首相は会見で「地上戦の開始」と宣言したわけではありません。「戦争は第2段階に入った」と述べただけですが、それが何を意味するのか世界はよく知っています。
長く困難な戦争になる、ともネタニヤフ首相は会見で発言しています。アフガニスタン戦争の例を思い出すだけでも地上戦は長い時間がかかることが予想されます。
現地の情報は日本ではほとんどメディアが報道しないため、確認はむずかしいのですが、ガザ地区への人道支援物資の搬入はイスラエル軍によって阻まれています。地中海沿岸とはいえこれからは寒い季節を迎えます。一般市民への悲惨な仕打ちはできる限り避けることを願うばかりです。
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先週も株式市場は軟調な値動きを余儀なくされました。前週までとまったく同じで、地政学リスク、金利の上昇、個々の企業の決算発表、この3点がマーケットのムードを暗いものにしています。
中でも経済面で注目されたのは、米国経済の強さと企業業績の弱さです。10月26日(木)に発表された米7ー9月期の成長率は、実質GDPで前期比+4.9%となりました(年率換算)。4-6月期の+2.1%から大幅に増加しています。
FRBによるたび重なる利上げでも個人消費は減速せず、力強い拡大を示しています。本来ならば経済良好のよいニュースですが、しかしインフレの加速を恐れるマーケットにとって悪いニュースとなりました。
米10年国債金利は週半ばには終値で4.95%まで上昇し、引き続き株式市場の圧迫要因となっています。日本では小型グロース株の下げが続いています。
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好調なマクロ経済の伸びに対して、個々の企業の決算はイマイチという状況です。先週はテクノロジー大手企業の決算発表が相次ぎ、市場の話題を集めました。
中でもアルファベット(グーグル)は、2023年7-9月期の売上高が766億ドル(前年比+11%)、純利益が196億ドル(+42%)というケタ違いの数値を打ち出しましたが、株価はアフター市場で▲6%以上も急落しました。
翌日の通常取引は▲10%近くも値下がりし、日本をはじめ世界の株式市場を大きく押し下げることとなりました。クラウド事業の苦戦が嫌気されています。
反対にマイクロソフトは7-9月期の売上高が565億ドル(+13%)、純利益が222億ドル(+27%)との内容で、株価は堅調に推移しました。グーグルとは逆に生成AIを搭載したクラウド部門が収益を牽引しています。
週末にはメタが7-9月期の決算を発表し、売上高は341億ドル(+23%)、純利益は前年比3倍近い115億ドルとなり四半期ベースで過去最高を更新しています。ネット広告の回復が鮮明です。
アマゾン・ドットコムも7-9月期の売上高が1430億8300万ドル(+13%)と堅調です。ネット通販が好調さを取り戻しており、2.7万に及ぶ人員削減も効果を発揮しています。
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日本でも3月決算企業の第2四半期の決算発表が始まりましたが、これがあまりかんばしくありません。
先陣を切って発表したニデック(6594)は、第2四半期の営業利益が1157億円(+20%)となりました。増益を確保しましたが市場の予想(1162億円)を下回り、これで翌日の株価が▲10%も急落しました。
しかも永守会長は決算説明会において、通期の見通しとしてEV向け部品事業の営業利益が▲150億円の赤字になる見通しを述べ、これまでの路線を大きく修正したことから、その後も株価は下落の一途をたどることとなりました。
強気でならしたニデックが軌道修正しなくてはならないほど、中国におけるEV市場が変調していることが明らかとなっています。ニデックばかりでなくEV関連銘柄、ひいてはエレクトロニクス株全般が軟調に推移した週となりました。
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週末には信越化学工業(4063)が決算を発表し、4-9月期の売上高は1兆1959億円(▲15%)、純利益は3014億円(▲23%)と3年ぶりの減益見通しを明らかにしました。これもショッキングな話題となりそうです。
米国では金利の上昇で住宅市場が沈滞しており、上下水道管に使われる塩ビ樹脂の価格低下が影響しています。
キーエンス(6861)も同じ日に決算発表を行い、7-9月期の売上高は2438億円(▲3%)、純利益は939億円(▲7%)に縮小しました。四半期ベースで減益となったのはコロナ禍初期の2020年10ー12月期以来のことです。中国とアジアで設備投資が減少したことが影響しています。
設備投資関連ではオムロン(6645)も2024年3月期の見通しを下方修正しました。売上高は8900億円から8500億円(前年比▲3%)に、純利益は745億円から180億円(前年比▲76%)へとに引き下げられています。やはり中国を中心に半導体、電池関連の設備投資が減速しています。
決算シーズンの早い時点での企業業績の浮沈は、後に続く企業の決算発表を占う上できわめて重要です。まだ発表を終えた企業数は多くはないのですが、それらはいずれも苦戦を余儀なくされています。早くもこのあとの決算状況が危ぶまれる状況となりつつあります。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。下落率は▲0.04%と小さいのですが、週半ばに大きく下落した影響が出ています。前週は▲2.30%の大幅マイナスでした。
規模別指数では、引き続き大型株の下げが目立ちます。大型株(▲0.32%)だけが下落したのに対して、中型株は+0.34%、小型株は+0.79%とどちらも反発しました。ただし東証マザーズ指数は▲2.33%で続落しています。
スタイル別では、依然としてグロース株が軟調です。グロース株は▲0.51%で続落し、一方でバリュー株は+0.36%と早くも切り返しています。
騰落レシオは週半ばに74.40%まで低下して、そこから週末には83.55%までわずかに切り返しました。日経平均のサイコロジカルラインは週末にかけて「6」を2日間続けています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落は、値上がりは11業種に広がりました。マイナスは6業種です。
値上がりトップは「小売」でした。すでに決算発表を1か月前に終えている企業も多く、内需系企業の中には株価が安定して推移している銘柄も目立ちました。
アダストリア(2685)、パルグループ(2726)、サイゼリヤ(7581)、ヨシックス(3221)、すかいらーく(3197)、吉野家HD(9861)、イオン(8267)、アークス(9948)など、アパレル、外食、スーパーなどは、生活防衛的なディフェンシブ銘柄として堅調です。
同様の観点から、値上がり第2位の「食品」も堅調です。森永製菓(2201)、グリコ(2206)、山崎製パン(2212)、東洋水産(2875)、わらべや日洋(2918)などがしっかりしています。いずれも値上げを浸透させている企業が収益の安定感から選好されています。
反対に値下がりセクターの上位は「電機・精密」、「医薬品」、「不動産」となりました。金利上昇に弱い不動産セクターは9月までの反転の勢いがそがれています。
「医薬品」は武田薬品工業(4502)の株価急落が響いています。木曜日に通期業績の引き下げを発表しました。
厳しいのは値上がりトップの「電機・精密」です。東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857)を筆頭に引き続き半導体関連株の軟調さが目立ちました。
イビデン(4062)も
(後略)