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2023年10月11日

期末をまたいで不安定な展開、日経平均は水曜日まで5日続落

鈴木一之

鈴木一之です。10月相場が始まりました。

中勢3か月投資の観点からは「1年で最も投資の成果を得やすい」とされる10月です。しかし世界は混迷の度合いを深めています。さっそく波乱の展開となりました。

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株価の動きだけを見ると軟調な展開が一目瞭然です。直近2週間の日経平均の値動きだけを抜き書きしてみます。

9/25月:△276(先週末の日銀決定会合で政策金利の変更なし)
9/26火:▲363(月末の日経平均の銘柄入れ替えの影響)
9/27水:△56
9/28木:▲499(9月決算権利落ち日、配当落ち分▲220円強)
9/29金:▲15

10/2月:▲98(米財政予算を可決、政府機関閉鎖を回避)
10/3火:▲522(米10年国債4.7%台、1ドル=150円乗せ)
10/4水:▲711(米下院議長の解任動議を可決、米10年国債4.8%台)
10/5木:△549(原油、84ドル台に急落)
10/6金:▲80(米9月・雇用統計控え)

日経平均は9月28日(木)から10月4日(水)にかけて5日続落となりました。5連続安は7月にもありましたので、もう1日続けて下げると今年の連続安の記録を更新することになります。

そこまで下げているのに、今回の株価下落の理由がいまひとつよくわからないというのが市場の共通した見方です。確かに米国のインフレ基調は強く、したがって金利上昇の圧力も強い。具合いの悪いことに原油価格も100ドル乗せを目指して上昇しているため、それだけで不安定なマーケットに陥っています。

それでも表面的には、今回の株価下落に直結するような明確な悪材料が見当たらないのが実情です。それなのに下げているというのが不可解で、不気味で、複雑で、難解です。先行きの見通しを立てることがむずかしくなっています。

誰も見たことのないアルゴリズムが走っていることも考えられます。どこかに大きな企業破綻の芽がひそんでいる可能性もあります。行き詰って大規模な機関投資家のポジションがひとつ、ふたつ、閉じられたこともあり得ます。

ひょっとしたら世界の景気が大きく鈍化し始めている最初の兆候なのかもしれません。連想は連想を呼び込みます。

しかしやはり米国の長期金利の上昇と、それに伴う世界的な資産の入れ替えが真犯人のようです。そこに月末、半期末という日本固有の特殊な理由も重なっています。

株式投資は元から非常にむずかしいものですが、いつも以上に難しいというのが最近の動きです。言葉で説明するのが困難なマーケットですが、事実関係だけでも記してゆこうと思います。

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週明けの10月2日。寄り付きから大きく上昇して始まりました。日経平均は前の週の軟調な動きから一転して、上昇幅は午前の時点で一時△500円を超えるほどでした。

日本時間の日曜日に、米国のつなぎ予算が議会で可決され、政府機関の閉鎖が回避されたことが最大の買い材料です。これでムーディーズによる米国債の格下げ不安もひとまず回避され、長期金利の上昇は落ち着きを取り戻すとの期待が生まれました。

日本でも朝一番に9月の日銀短観が発表され、そこで大企業・製造業の業況判断DIが前回の「プラス5」から4ポイント改善して「プラス9」となったことも好感されました。これで2四半期期連続での改善です。牽引役は自動車業界の挽回生産です。

また今年度の設備投資計画も+13.0%(全規模・全産業)に上方修正されており、経済の再開後の回復が順調に進んでいることも明るい期待を招きました。

しかしそんな週明けの後場から急落して、日経平均は一転して▲98円のマイナスで終わりました。前の週の木曜日(権利落ち日)も後場から急落する動きが見られ、この時点で波乱の週の始まりが予感される展開となりました。

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米国では10月2日に長期金利が一段と上昇し、一時は4.7%台に乗せ16年ぶりの水準に達しました。

9月半ばのFOMCにおいて来年の米国の政策金利の着地点が引き上げられ、FRBによるインフレとの闘いは簡単には終わらないとのスタンスが確認されました。それに合わせて、新しいポジションを組み直す資産の入れ替えが進んでいると見られます。

日本でも財務省は10月3日、10年物国債の10月の入札で表面利率を0.8%にすると発表しました。9月までの0.4%から大きく引き上げられています。これは2013年10月以来、10年ぶりの高い水準です。

ここには日銀が7月にYCC(イールドカーブコントロール)の運用を柔軟に変更したことが反映されています。10年国債の流通利回りは0.8%まで大きく上昇しています。入札時の利率を高くしないと落札価格が額面を大きく下回ることになりかねません。

この結果、10年債入札の最高落札利回りは0.77%となり、2013年8月以来の高水準になりました。あまり目立ちませんが日本でも着実に金利上昇は進んでいます。

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世界と米国の経済にはわずかながら翳りが出てきたことを示すニュースも続いています。

テスラの7-9月の世界販売台数は43.5万台、前年比+27%となったと伝えられました。中国を中心に販売は増えていますが、4-6月の+83%と比べるとペースは鈍っています。販売台数を増やすために工場の改修を進めたことが出荷ペースを鈍らせた、と会社は説明しています。

来年の中国の成長率見通しに関して、世界銀行は4.8%から4.4%にダウンすると半年ごとの見通しを変更しました。不動産投資に依存した成長モデルが大きな転機を迎えていると指摘しています。

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水曜日。米国では議会の混乱が続いています。

マッカーシー下院議長に対する解任動議が下院で賛成多数で可決され、後任人事の選定に入りました。大統領継承順位で第2位の下院議長に対する解任動議が可決するのは史上初のことです。

米国では長期金利の上昇が続いており、引き続き10年国債金利は4.7%台まで高まったままです。為替市場ではドルの独歩高も続き、円は1ドル=150円台にタッチするまで下落しました。

労働省からは8月のJOLTS(雇用動態調査)が発表され、非農業部門の求人件数が961万件と判明しました。前月の892万件からかなり伸びており、市場予測の880万件も大きく上回りました。経済は弱くなっているのに雇用は強い状態が継続しています。

これを受けてNY株式市場は大きく続落し、4か月ぶりの安値を記録しました。週末の雇用統計の発表を控えて警戒感は一段と高まり、ここから週末までは手控えムードの強い動きが見られました。

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金曜日は日本の経済統計が注目を集めました。

ひとつは総務省の家計調査です。「2人以上の世帯の消費支出」は前年比▲2.5%の減少(29万3161円)でした。市場予想の▲4.3%は上回りましたが、6か月連続でのマイナスです。物価の上昇で食料の支出が減っています。

もうひとつは厚生労働省の毎月勤労統計調査です。「1人当たりの実質賃金」は前年比▲2.5%の減少、マイナスは17か月連続です。物価の上昇に賃金の伸びが追いつかない状況も続いています。

そして週末には米国の9月・雇用統計が発表されました。非農業雇用者数の伸びは+33.6万人で市場予想の+17万人を上回りました。

同時に発表された失業率は3.8%で横ばい(予想は3.7%)。これで1年半にわたって4%を下回っています。

平均時給の伸びは前月比+0.2%でこちらも横ばい。前年比では+4.2%でした。これによって11月のFOMCでは0.25%の利上げが実施されるとの見方が高まっています。

これを受けて米国の10年国債利回りは一時4.8%台後半まで上昇し、ドル円相場は149円台半ばまでドル高・円安に振れました。それでもNYダウ工業株は+288ドルと反発しています。

次から次へ、これでもかとたいへんな出来事が起こる週でしたが、最後はしっかりとNY株式市場が上昇して終わっています。それだけでホッとします。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが3週連続で下落しました。週間の下落率は▲2.55%とかなり大きく、前の週の▲2.23%、さらに前週の▲2.15%と大幅安が続いています。

規模別の株価指数では、大型株指数(▲2.58%)の下げが最も大きくなっています。続いて中型株指数(▲2.52%)、小型株指数(▲2.41%)となり、前週の軟調な状況をそのまま継続しています。小型株の下落が目立ちました。

スタイル別でも、バリュー株優位、グロース株不利の流れが逆転したままです。バリュー株は▲3.14%と下げが大きく、それに対してグロース株は▲1.86%の下げにとどまりました。これも前週までの流れと同じです。

前週は逆行高となった東証マザーズ指数は2週ぶりに反落しました。

騰落レシオは9月27日に133.35%を記録したあとは低下しており、10月3日に100%の大台を下回りました。8月9日以来のことです。週末は94.24%まで一段と低下しました。

日経平均のサイコロジカルラインは木曜日には「2」まで下がりました。2021年10月7日以来のことです。週末値は「3」です。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、全業種が値下がりしました。

最も下落率の大きなセクターが「エネルギー資源」です。原油価格が急騰した後に急落しました。INPEX(1605)、ENEOSホールディングス(5020)など、配当利回りの高さもあって前週まで上昇していた資源エネルギー株が軒並み安となりました。

次に値下がりしたセクターが「鉄鋼・非鉄」です。世界中でリスク資産が大きく下落しており、利幅が取れていたと見られる日本製鉄(5401)、神戸製鋼所(5406)、合同製鉄(5410)など鉄鋼株が利益確定売りと見られる売りで大きく下げました。

「電力・ガス」も下落幅が広がっています。電力料金の値上げ浸透によって収益回復期待の高い電力・ガス株が9月末にそれぞれ上昇しましたが、これも上昇した分だけ下げが広がる形となりました。

上記の銘柄群は、週末の反発力はまだ小さいものにとどまっています。リスク資産を一斉に売却する圧力が減少すれば、このあとの反発にも期待できます。

しかし今回の株価下落の本当の理由がまったく別のところにあるのなら反発は限定されます。ここからの株価の戻り歩調のペースによって、その辺りを推し量ってゆくことが肝要となります。むしろ大事なのはこれらのセクターの今後の展開です。

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反対に値下がりの小さかったセクターは「食品」です。

全体の軟調な地合いに押されて弱い動きも見られますが、中にはグリコ(2206)、キユーピー(2809)、明治ホールディングス(2269)、サッポロホールディングス(2501)のように逆行高を示す銘柄も多く見られます。インフレ経済下でのディフェンシブ的な強さがあらためて見られました。

同様に「小売」、「不動産」も堅調なセクターです。中でもドラッグストアは総じてしっかりしました。クスリのアオキ(3549)の好決算をきっかけに、ツルハホールディングス(3391)、カワチ薬品(2664)、薬王堂(7679)が逆行高となりました。

インバウンド消費の好調、猛暑関連株、ドラッグストアにはさまざまな顔があります。それらが食品株と同じようにディフェンシブ的な役割を果たしています。

「不動産」も堅調です。霞が関キャピタル(3498)

(後略)

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鈴木一之