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2022年9月21日
CPIショック再び、円は144円台に下落、日銀は介入を準備か
鈴木一之です。9月8日にイギリスのエリザベス女王が亡くなられて10日が過ぎました。世界中が喪に服しているような感覚が続いています。
日本の天皇、皇后両陛下は9月19日(月)の国葬に参列されるため、羽田空港から出発されました。コロナウイルスの感染拡大後に国外に出られるのは初めてのことです。
葬儀が行われるウェストミンスター寺院を中心に、ロンドンでは厳戒態勢を敷いているそうです。サッカーの最高峰、プレミア・リーグをはじめ、イギリスのスポーツ界はすべての選手が黒い喪章を腕に巻いてプレーしています。
先週の株式市場は世界中のマーケットが大きく動揺しました。ジャクソンホールから始まった株価下落がいったん止まったと思いきや、再び大きな株価下落に見舞われました。「CPIショック」の再来です。
ロシアはウクライナ東部の占領地帯から軍を撤収しつつあり、部分的ながらもウクライナの懸命の抵抗が実りつつあります。プーチン大統領に対するロシア国内からの批判も高まっているようで、本来であれば株価の上昇要因として受け入れられるニュースです。しかしマーケットの反応は限られていました。
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週明けはまだ米国市場の反発が続いており、インフレ抑制が奏功しつつあるとの楽観的なムードが見られました。新型の「iPhone14」を発表したばかりのアップルをはじめ、米国の半導体、テクノロジー株が徐々に値を戻す動きが続いていました。
状況が一変したのが9月13日(火)です。米国の8月・消費者物価指数(CPI)の発表で、総合指数は前年比+8.3%と発表されました。事前予想の+8%を上回っています。
ガソリン価格や原油市況など、エネルギー価格の上昇が一服していただけに、予想を上回る結果にマーケットははっきりと失望感を示しました。新車の価格をはじめ、住居、医療サービスなど、価格低下がむずかしいと見られていた部分では物価上昇が続いていることがはっきりとわかり、FRBによる金融引き締めは予想以上に長期化するとの見方が一気に広がりました。
9月13日(火)のNYダウ工業株は▲1276ドルという今年最大の下げ幅を記録しました。下げ幅ではコロナ危機の初期、2020年6月以来の大きさです。前日まで4日連続で上昇していましたが、その4日分の上げ幅を1日ですべて埋めてしまいました。それだけショックが大きかったということです。
今週のFOMCにおける利上げ幅は、それまでの0.75%から1.0%になるとの見方が急速に広がっています。米国では短期と長期の金利上昇が進んでおり、10年国債金利は3.50%目前に達しました。2年国債金利は3.7%台の後半まで上昇しており、15年ぶりの高水準です。
長短金利の逆転が続き、米国のリセッション入りを不安視する声が一段と広がっています。景気を冷やす住宅市場の鈍化で、米国の住宅ローン金利は30年固定で6.01%まで上昇しています。6%超えは2008年以来のことです。
為替市場ではドル円相場が144円まで円安・ドル高に振れました。この円安に対して日銀、財務省、政府の3者会合が急きょ開かれ、合わせて日銀から主要銀行に対して「レートチェック」が実施されました。レートチェックの後には為替介入が待ち受けているという経験則に働きかけています。週を通じてすべての市場が慌ただしい展開となりました。
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終末にはさらに市場の不安をかき立てるようなニュースが加わりました。国際物流の世界企業、フェデックスが6-8月期の決算を発表し、これが市場予想を大きく下回る内容となったことです。
ショッキングだったのは、先行きの9-11月の1株利益の見通しが市場予想の5.48ドルに対して、その半分以下の2.75ドルに落ち込むという点です。この日のフェデックスの株価は2割以上も下落し、世界経済の先行きに対して暗雲が急速に立ち込めています。
米国市場の動揺は「収まった」と言えるような状況ではありません。月曜日は日本が祝日のため、週初にワンテンポ出遅れるような形になり、その間に市場が大きく揺さぶられる可能性があります。
今週のFOMCでの声明文と、その後のパウエル議長の記者会見が、現在の市場の動揺を抑えてくれる方向に期待したいところですが、しかしパウエル議長は「すべてはデータ次第」という姿勢を明らかにしています。そのデータに従う限りでは、現在の状況に対してあまり楽観することはできないのが現状です。
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先週の東京株式市場は、TOPIXが反落しました。その前の週に3週間ぶりの反発となったばかりですが、再び軟調な動きに戻りました。下落率は▲1.37%にとどまっています。
小型株は比較的下げが小さく、むしろ大型株の下落が目立ちました。グロース株がより大きく下がっており、大型グロース株が最も売られました。バリュー株の下げは軽微でした。東証マザーズ指数も反落しましたが、下落率は▲0.61%にとどまりました。
テクニカル面では、騰落レシオが急低下しており、前週末の102.15%から90.21%まで低下しました。日経平均のサイコロジカルラインはほぼニュートラルの「6」の状態を6日間続けています。
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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、値上がりセクターは5業種にとどまり、値下がりセクターは12業種に広がりました。
最も大きく上昇したセクターは「運輸・物流」です。前の週は最下位でしたが一気にトップに浮上しました。順位が目まぐるしく変動しています。
政府は水際対策をさらに緩和して、外国からの訪日客の1日あたりの上限を撤廃する方針です。合わせて短期ビザの取得も免除し、個人旅行も解禁します。インバウンド消費が完全に復活するとの期待からJR東日本(9020)、JR東海(9022)をはじめ鉄道会社が軒並み上昇しました。反対に海運株は総じて軟調でした。
上昇セクターの第2位は「不動産」です。2週連続で値上がりセクターの上位に登場しました。
金利の上昇は不動産セクターにとっては大きな痛手となりますが、インフレが継続するという状況では不動産価格もこの先まだ値上がりすると見られます。
三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)のトップ3をはじめ、野村不動産HD(3231)、東急不動産HD(3289)など大手不動産会社がいずれも上昇しました。
値上がりセクターの第3位が「銀行」です。メガバンクもしっかりしていますが、上昇の目立ったのは何と言っても地銀です。ふくおかFG(8354)、北國FG(7381)、伊予銀行(8385)、第四北越FG(7327)が大幅高となりました。
米国金利の上昇が一段と鮮明化していることが利ザヤの改善期待につながり、本業部分の回復が予想されます。一方では保有外債の含み損の拡大という悪材料にもつながりかねません。
買い材料は金利上昇ばかりでなく、インバウンド需要の復活は地方経済の回復に直結することも加わります。日本の地方都市には新鮮な野菜、おいしい水、空気、魚介類が豊富にあり、外国人ばかりでなく日本でも地方人気が静かなブームとなっています。それらが合わさって株価の急騰を支えています。
反対に値下がりセクターの上位となったのは、「機械」、「電機・精密」、「自動車・輸送機」です。言わずと知れた日本の輸出関連セクターがそろって値下がりしました。144円までの円安も、もはや株価の買い要因としてのインパクトが見られません。
中でも先週末にかけて半導体関連株が大幅安となりました。中国の経済状況が不安なことが背後にあります。コロナ禍によるPC、タブレット、スマホ特需は一巡しており、現在では需要の先食いによる落ち込みが目立つようになっています。米国経済や世界のリセッション懸念は真っ先にこのセクターに出始めているように見えます。
頼みの綱となっているEV関連の需要も、順調に上値を追っていたダブル・スコープ(6619)が週末にストップ安まで売られてしまいました。韓国子会社のIPOの株価が低いというのがその理由のようですが、別の理由がひそんでいることもあるので注意したいところです。
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世界はリセッション入りを恐れているのですが、それと比べると現在の日本の経済環境は驚くほど堅調です。先週発表された統計で、
(後略)