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2022年4月11日

ロシアへの追加制裁、米国QTへの警戒、日経平均は2週連続の陰線

鈴木一之

◎日経平均(8日大引):26,985.80(+97.23、+0.36%)
◎NYダウ(8日終値):34,721.12(+137.55、+0.39%)

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鈴木一之です。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって間もなく50日が経過します。停戦交渉は遅々として進まず惨状が広がっています。一日も早い戦争終結を願ってやみません。

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新年度相場が本格的に始まりました。株式市場は例年になく緊張した面持ちのスタートとなりました。

マーケットを取り巻く外部・内部環境は、ウクライナ情勢、米国の金融政策、コロナウイルスの感染拡大、東証市場改革、企業の決算発表と満載で、どれを手がかりとすればよいのか迷うほどです。

話題の中心はやはりウクライナ情勢です。1週間前の今頃はロシアとウクライナとの間で対面による4回目の停戦交渉が始まったところで、和平合意への期待が醸成されつつありました。ロシアの軍勢が首都キーフの包囲をゆるめ、ウクライナ西部へ移動を開始したと伝えられたため、首都総攻撃が回避されたことから早期停戦への可能性も強まっていたように見られました。

しかしキーウ近郊のブチャで多くの民間人が殺害された惨状が判明したことから、そのような期待はあっけなく崩れました。ゼレンスキー大統領はロシア軍による「ジェノサイド」を主張し、欧米各国はロシア軍の行為を戦争犯罪として断罪する動きが強まっています。状況は楽観から悲観へ再び大きく傾いています。

先週、西側主要国はあらためてロシアへの追加の経済制裁を発表しました。米国はすでにロシアでのエネルギー生産にかかわる企業への投資を禁止しており、追加制裁でそれらの対象をさらに広げました。ロシアへの輸出規制措置にはG7およびEU主要国の合計37か国が加わることとなりました。

日本は4月8日(金)に岸田首相が記者会見を行い、最大手のズベルバンクの資産凍結、ロシア産石炭の輸入禁止、ロシア外交官の国外追放、エネルギーへの新規投資の禁止など包括的な制裁を決定しました。

ドイツをはじめ欧州の多くの国は、依然としてエネルギーの多くをロシアに頼っており、これまでの経済制裁は及び腰のところも多く見られました。急落したルーブルはあっという間に元の水準まで回復しています。

それが欧州は方針を変え、ここから締め付けを一段と厳しくする見通しです。ロシア経済へのダメージは増えますが、同時に西側諸国への影響も同じく避けられないことになります。

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エネルギー価格の高騰を抑えるために、西側諸国は強調して国家備蓄原油の放出に動きました。4月6日(水)、IEA(国際エネルギー機関)は合計6000万バレルの石油備蓄の追加放出を決定しました。ブルームバーグ通信が伝えています。

米国はすでに5月から半年間、日量100万バレルで合計1億8000万バレルの放出を決めています。これに米国以外のIEA加盟国が追加で6000万バレルを放出します。米国の放出分と合わせて2億4000万バレルになり、これは世界の需要の2日半に相当します。

今回の放出には19か国が参加する見通しで、日本は2番目の1500万バレル、韓国が723万バレル、ドイツが648万バレルと続きます。

ロシアはウクライナへの侵攻前には原油を日量500万バレル、石油製品を200~300万バレル、輸出しており、IEAの予測では4月以降、ロシア産原油が150万バレル、石油製品が100万バレル、減少すると見ていました。今回の追加放出によってロシアの減少分の半分を埋める形となります。

高止まりを続けていた原油市況は、WTI先物価格で先週は再び100ドルの大台を割り込みました。株式市場でも総合商社をはじめ、資源エネルギー株の騰勢は徐々に鎮静化しています。ただし石油のように国家備蓄のない非鉄金属市況は依然として強含みの動きを続けており、コモディティ市況の先行きは予断の許されない状況が続きそうです。

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物価の動向と関連して、先週はあらためて米国の金融政策の見通しが株式市場を揺さぶりました。きっかけは4月5日(火)に伝わったFRBのブレイナード理事の講演です。

「ハト派」のブレイナード理事は、これまで金融政策の引き締めに最も慎重な一人として知られてきました。そのブレイナード氏が5月にも量的引き締めを開始するとの見通しを示したことで市場は大きな動揺を示しました。

これまでは利上げの幅、利上げの回数が議論されることが多かったのですが、量的引き締めが前倒しされることに驚き、インフレ抑制を急ぐFRB内部の議論があらためて警戒されました。米国の10年物国債金利は2.50%を超え、週末は3年ぶりとなる2.7%台に乗せています。

4月6日(水)には3月のFOMC議事要旨も公表されました。量的引き締めについて、すべての参加者が明確に「早ければ次回5月の決定会合で開始するのが適切、と指摘した」と記されています。圧縮の規模も月950億ドルを上限とすることでコンセンサスが形成されたと記されており、市場では少なからぬ驚きをもって受け止められました。

議事要旨では、金融政策に関しては、今年後半に中立に戻すことが主眼として打ち出されており、インフレ抑制への強い姿勢があらためて明らかになったことで、株式市場および債券市場に対して価格の下押し圧力が強まっています。

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世界の物価を押し上げている根本的な原因は、ウクライナ戦争とコロナウィルスの感染拡大の2つです。

そのコロナウィルスに関して、中国での感染拡大が次第に警戒されるようになっています。ゼロコロナ政策でも感染拡大は防ぎきれなくなっており、上海市は東部と西部の2つの地域に分かれてロックダウンを実施しています。

4月4日(月)、上海市は西部地区の1600万人に対して外出制限を延長すると発表しました。それまでは4月1日~5日午前3時までの予定でしたが、期間中に2回行うPCR検査がてこずっているようです。

東部地区は3月28日からロックダウンが実施され、すでに封鎖は解除されましたが外出制限は続いています。中国最大の都市に経済活動の制限がかかっており、これが世界経済に対してもうひとつの下押し圧力となっています。

日本も「まん延防止等重点措置」が3月末に解除され、徐々に観光や飲食を中心に人の流れが戻ってきました。それとともに感染者数の減少ペースも低下しています。

すでにオミクロン型の派生型とされる「BA.2」が流行の主流になっており、感染力はオミクロン型よりも2~3割強いため、専門家の間ではこのままでは4月から5月にかけて、再び「第7波」の感染拡大が始まると見られています。

その場合、これまでと同じような経済活動を制限する規制をかけるか、その議論が早くも始まっています。「緊急事態宣言」や「まん延防止」にどれほどの効果があるのか、医療ひっ迫は起きるのか、ワクチンの4回目接種は有効なのか、経口治療薬の開発は間に合うのか。

コロナウイルスの冷酷な側面として、社会を構成するピラミッドのより低い部分に影響が強く出るという点があります。イギリスやドイツなど欧州各国は、医療ひっ迫さえ防げるのであれば、経済を回してゆくために行動制限に関わる規制をすべて撤廃するとしています。日本の政策サイドにも早急にこれらの点に関する議論を進めてもらいたいものです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが続落しました。週前半は新年度相場のスタートもあって堅調な値動きとなりましたが、週後半に向けて次第に不透明感が強まり値を切り下げました。

TOPIXの下落率は前の週の▲1.88%に続いて、先週は▲2.44%に広がっています。規模別指数では、大型株から小型株まで幅広く下落しましたが、中でも大型株の下げが目立ちます。機関投資家は「新年度入りの直後は売りから入る」と見られているように、現実に機関投資家の保有比率の高い大型株から下げが目立っています。

これまで戻り歩調が急速に強まっていた東証マザーズ指数も▲0.04%の小幅マイナスとなりました。4週ぶりの反落です。それでも下げは小さく、小型グロース株よりも大型バリュー株の下げが目立ちました。

3月中旬~下旬にかけての日経平均9連騰でサイコロジカルラインは「10」まで高まりましたが、それが先週は「6」まで低下しました。熱っぽさは徐々に解消に向かっています。騰落レシオも前の週の108.3%から、先週は96.47%に低下しました。

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TOPIX-17業種のセクター別の騰落は、値上がり業種が3つで、値下がり業種が14業種に広がりました。引き続き広範囲な下落が見られました。

上昇したセクターのトップは「医薬品」で、「エネルギー資源」、「情報通信・サービス」と続きます。

「医薬品」は久しぶりの上位登場です。食品セクターや情報通信・サービスと合わせてディフェンシブ的な物色の傾向が見られました。

武田薬品工業(4502)が上昇基調を維持しています。配当利回りの高さ、1倍そこそこのPBRの低さなどバリュエーションがもともと低いこと、長年にわたる事業構造改革が徐々に効果を発揮していること、それに加えて、国内4例目となるノババックス製コロナワクチンの製造承認が近く下りることへの期待が重なっています。

合わせて第一三共(4568)、アステラス製薬(4503)、

(後略)

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鈴木一之