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2020年3月2日

1週間のNYダウの下げ幅は過去最大を記録

鈴木一之

◎日経平均(28日大引):21,142.96(▲805.27、▲3.67%)

◎NYダウ(28日終値):25,409.36(▲357.28、▲1.38%)

 

 

鈴木一之です。新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、世界的な株式市場の下落が起こっています。

 

患者数の拡大に関する中国政府の情報開示姿勢を非難していた時期、あるいはダイヤモンド・プリンセス号の乗員・乗客に対する日本政府が採った措置を非難していた時期は、今から思えばまだ状況は軽微で、事態は十分にコントロール可能な状態でした。

 

それが中国に渡航歴のない、感染ルートのまるで把握できない人々が世界中で次々に新型肺炎にかかるという事態に至って、新型コロナウイルスに対する恐怖心が世界中に伝播しています。ここまで来るのにあっという間でした。

 

先週の1週間でNYダウは▲3583ドルの値下がりし、史上最大の下げ幅を記録しました。株価の水準が違うとはいえ、リーマン・ショック後の最大の下げ幅の2倍に達しています。

 

1週間で失われた時価総額は、米国で▲3.9兆ドル、欧州で1.3兆ドル、日本でも63兆円です。これほどの影響をもたらしたことから、とうとう「コロナ・ショック」と名付けられました。名前が付けられようになると下げは収まる、と株式市場には不思議な言い伝えもあります。

 

日本政府は先週木曜日に、今後2週間の大型イベントの中止・延期を正式に要請しました。これを受けてプロ野球のオープン戦と大相撲・春場所は無観客での開催を決めました。コンサートや会議が次々に中止・延期を発表しています。

 

翌金曜日には安倍首相より、全国すべての小・中・高校と特別支援学校に対して週明けから春休みまでの臨時休校を要請しました。

 

北海道は緊急事態宣言を発令し、週末の外出自粛を呼びかけました。日本有数の観光地である北海道で外に出歩くことができないとなると、経済に与える影響は想像をはるかに超えます。

 

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海外でも影響は広がっています。韓国では患者数が1日で300~500人ずつ増えており、感染者数が3000人を超えました。韓国の2月17~23日の航空会社の旅客数は▲84%減少したそうです。

 

インバウンド消費の恩恵の大きな九州では、旅行会社の売上高は1月下旬に前年比▲9割減に落ち込みました。世界最大のホテルチェーン、マリオット・インターナショナルでは、2月の中国圏のホテルは客室あたり売上高がやはり▲9割減だったそうです。

 

2月の中国の製造業PMIは35.7(▲14.3)まで劇的に低下しました。非製造業PMIはさらに激しい落ち込みで29.6(▲24.5)となりました。過去最低を更新しています。どちらも目を疑うような大幅な落ち込みです。

 

日本でも1月の有効求人倍率は1.49(▲0.08)まで低下しました。1.5を割り込むのは2017年5月以来のことで、企業の置かれている状況が日に日に苦しくなっています。

 

3月になったので、明日からは日本でも小売各社の2月分の月次売上が発表されます。実績を見るまでもなく、惨憺たる状況であることは間違いありません。

 

むしろ問題は、株価との兼ね合いに移ります。そのような厳しい売上高の減少をデータとして確認した時に、果たして株価はさらに売られるのか、それともすでにそれは織り込まれていて、さほど下げなくなっているのか。この点が非常に重要です。

 

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確かに需要の減退は目を覆うばかりに厳しいものですが、見方によってはあくまで新型ウイルスの拡散による一過性な減退でもあります。

 

リーマン・ショックという、あの「100年に一度」のグローバルな金融危機から立ち直ったのですから(景気対策があったとは言え)、回復すべき時期が来ればまた元に戻る、という見方にもそれなりの説得力があります。

 

それでも中には、減少したままかつての売上げが戻ってこない分野もあることでしょう。想像ですが、それはたとえば会社帰りの「居酒屋でちょっと一杯」需要です。

 

今回の「コロナ・ショック」を機に、早く帰って勉強する、あるいは家事や育児を行う、仕事をする、というライフスタイルに根本的に変わってゆくのであれば、居酒屋チェーンはかなり厳しい状況に直面します。節約志向でもデフレ消費でもなく、ライフスタイル自体が大きく変わってゆくのです。

 

感染症はいつまた発生するか誰にもわかりません。首都圏直下型地震も刻々と迫っている恐怖心が常にあります。昨年秋の台風15号、19号の時と同じように、不要不急の出費を切り詰めて将来に備える、というスタンスが今まで以上に前面に出てくる可能性が高いように思います。

 

政府は「ここから1~2週間が正念場」と説明しています。しかしその期間をもう少し長めにとって、4月いっぱいくらいまで。つまりここから6~8週間は慎重に過ごすことが必要になるように思います。その中でおそらく銘柄の選別が徐々に始まるものと見られます。

 

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先週の東京市場は、TOPIXが大幅に続落しました。3週連続での値下がりで、1週間の下落率は実に▲9.74%に達しました。まさにリーマン・ショック級の下げに直面したことになります。

 

日経平均は金曜日に21,000円の大台割れとなり、TOPIXのPBR(株価純資産倍率)は1.09まで低下しました。リスク回避の動きが極端に強まり、マザーズ、ジャスダックなど新興市場の下げはさらに激しいものになっています。

 

セクター別では、TOPIX-17業種のすべての業種が値下がりしました。下げの厳しいセクターは、「不動産」、「医薬品」、「鉄鋼・非鉄」、「運輸・物流」とバラバラです。

 

景気動向に敏感な「鉄鋼・非鉄」は、実に6週連続して下落率のワースト5に入っています。「運輸・物流」の鉄道株と同様に、世界景気の先行きが問われています。

 

その一方で「不動産」や「医薬品」は先週になって下げの勢いが急に強まったセクターと見ることができます。機関投資家が保有しきれなくなって、リスク回避のための売りを急いだと見られます。

 

比較的下げが小さかったセクターは「銀行」、「商社・卸売」、「食品」、「機械」ですが、それでも▲7~8%は値下がりしています。

 

REIT指数も▲10%を超える値下がりとなりました。これまでは市場のリスクが高まるたびにREIT市場に資金が逃げ込んでいましたが、今回はその動きすら起こらずに、REITまでが大きく売られました。

 

マネー市場が感じているリスクの大きさが、それほどまでに巨大であると見ることもできます。

 

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先週は、それまでであれば値もちのよかった銘柄が急落することで、日経平均の下げが加速しました。ボラティリティが急上昇したことでリスク・パリティ型ファンドの売りのスイッチが押され、ファンドの換金売りが一斉に出てきた模様です。

 

KDDI9433、NTTドコモ9437、ダイキン工業6367、

 

(後略)

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鈴木一之