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2023年9月26日

FRBのタカ派強調を受け、日経平均は32,000円台半ばまで下落

鈴木一之

鈴木一之です。暑さ寒さも彼岸まで。さすがに涼しくなってきました。猛暑の夏は過ぎ去り、秋の訪れです。

先週の「中央銀行ウィーク」、やはり大きな動きがありました。日経平均は1週間前の33,500円台から、あっという間に32,100円台まで急落しました。日米ともに金利が大きく上昇したことが原因です。

確かに日経平均やTOPIXは大きく動きましたが、これくらいの上げ下げはもう普通のことであまり驚きはありません。むしろ個々の銘柄は一部のグロース株を除けば、さほど大きくは変化していないようにも見えます。電子部品株の一角には底入れ反転の兆しも見えてきました。

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最初に動いたのは米国です。9月20日(水)、FOMCが2か月ぶりに開催され、FFレートの変更はありませんでした。ここまではほぼ予想通りだったのですが、それ以外の点では大きな変更がいくつもありました。

最も大きかったのが、将来の政策金利の着地点に関するボートメンバーの見通しです。今年末の見通しは5.6%(中央値)で止め置かれましたが、来年末の水準は5.1%に引き上げられました。6月時点の見通しは4.6%だったので、そこからは0.5%の引き上げです。

FFレートは現在5.25-5.50%なので、来年中に利下げがあるとしてもその下げ幅は0.5%にとどまることになります。

政策金利が引き下げ方向に転換したとしても、その後の利下げペースはかなり緩やかなものになるとのボードのメンバーの意思が伝わり、これに対して債券市場は大きく反応しました。10年国債金利は一時4.5%台に上昇し今年の最高記録を更新しました。

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政策金利の動きにより敏感な2年国債金利はさらに上昇して5.17%台。2006年7月以来の高い水準です。

2006年と言えば、リーマン・ショック以前のことです。中国が世界中から「爆買い」と称してエネルギー資源や農産物、海産物を買い漁っていた時期です。米国では不動産バブルの真っただ中にあり、サブプライム・ローンが少しずつ問題視されていた時期でした。世界のあちこちで、のちの世の混乱の芽がばら撒かれていた時の水準です。

そのころの水準まで長短金利が到達したということは、それなりの意味があると誰もが考えて、あらためて市場には警戒ムードが走ったというのが週半ばまでの動きです。

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FOMCにおける変更点はこれだけにとどまりません。10-12月期の米国の成長率見通しがこれまでの1.0%から2.1%に引き上げられました。

反対に失業率は4.1%から3.8%に引き下げられ、PCE(個人消費支出)の上昇率も、今年末が3.3%、来年末は2.5%とされています。物価はFRBが目標としている2%を上回ったままの状態が続くことになります。

声明文においても景気の現状認識は上方修正され、実勢金利の高止まりが続く見通しです。これを受けて世界の株式市場でグロース株が一斉に下落し、ドルも強含みの展開となり1ドル=148円台半ばまで直近の高値を更新しました。

日本でもこの結果を受けて、9月21日(木)はグロース市場(旧マザーズ市場)に代表される小型成長株が一斉に下落しました。東証マザーズ指数は終値ベースで今年の最安値である1月初旬の水準にほぼ到達しました。

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これらの変化は、FOMCの結果が判明したことによって突如として起こったというわけではありません。日本でもすでに週初めの段階から長期金利の上昇は強まっています。

10年物国債の指標銘柄の利回りは0.70%を突破して、日銀のイールドカーブ・コントロールの誘導目標の拡大後としては最も高い0.74%に達していました。

そして9月22日(金)。日銀の金融政策決定会合が開催され、現在の金融緩和の維持が全会一致で決定されました。米国とはまったく反対で何の変更もありません。

事前の予想ではマイナス金利の解除や、イールドカーブ・コントロールの修正などがあるかもしれないとの予想が一部では観測されていました。

前回の7月会合で長期金利の上限を1%に引き上げたこともあって、何かしらの変化があるかとの予想(期待)も先走って流れていたものの、しかしそれらしい動きはまったくありませんでした。

終了後の記者会見において植田総裁は、「現時点では不確実性が極めて高く、これまでの説明から変化があるわけではない」と述べ、現在の金融緩和政策を続けてゆくことを強調しました。

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同じ日に総務省からは8月のCPIが発表され、生鮮食品を除くと前年比+3.1%の上昇となりました。政府による物価対策の影響を除くと上昇率は+4%台に達します。植田総裁は記者会見の中で、「(物価目標の達成は見通せず)見通しが立つ状況になればYCCの撤廃やマイナス金利の修正を検討することになる」と述べています。

22日(金)の昼過ぎに伝わった日銀のこれらの方針によって、為替市場では日米の金利差が拡大する状況が続くとの見通しから、1ドル=148円40銭台まで70銭ほど円安・ドル高が進みました。

株式市場では朝方から大きく下落していた日経平均は、この決定で急速に下げ幅を縮小し、週末の終値で32,402円(▲168円)まで値を戻しました。

これほどの急激な政策金利の引き上げにもかかわらず、米国経済は依然として強固な状態にあります。昨年後半は、今年の年央にも大きなリセッションが起こると心配されていたことが信じられないほどです。まさに潜在成長率が高まったのと同じような状況が起こっています。

グロース株の下落は週明け以降も続くのか、バリュー株の優位性は維持できるのか、10月相場はその点が一段と問われることになりそうです。

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先週の東京株式市場は、TOPIXが5週ぶりに反落しました。週間の下落率は▲2.15%に達しましたが、前の週に大きく上昇した分(+2.94%)だけ下落したことになります。見方によっては下げは軽微だったとも言えます。

規模別の株価指数では、大型株指数(▲2.13%)の下げが目立ちました。ただしこれも前の週の大幅高の反動とも見られます。中型株指数(▲2.43%)が最も大きく下げ、小型株指数(▲1.31%)はまだ軽微な方でした。

スタイル別では引き続きグロース株が軟調です。バリュー株の下げは▲1.11%にとどまったのに対して、グロース株は▲3.34%の下落となりました。東証マザーズ指数は3週連続の下落で▲1.80%です。

騰落レシオは9月19日に134.11%まで上昇した後、週末は129.44%までわずかに低下しています。9月1日以降、これで15日連続して過熱圏とされている120%を上回りました。日経平均のサイコロジカルラインは「4」まで低下しました。日経平均が比較的弱く、TOPIXが強いという動きを維持しています。

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TOPIX-17業種のセクター別騰落では、3業種が値上がりし14業種が下落しました。

値上がりセクターの上位は「銀行」、「金融(除く銀行)」、「鉄鋼・非鉄」です。反対に値下がりセクターの上位は「医薬品」、「電機・精密」、「小売」でした。

値上がりトップの「銀行」は、金利の上昇を好感して幅広く買い進まれました。現在のバリュー株物色の中心的な存在となっています。

米国の長期金利が上昇して銀行株が買われ、日本の金利上昇でもやはり買われ、さらに配当利回りの高さからもさらに評価されています。三井住友フィナンシャルグループ(8316)、あおぞら銀行(8304)、三井住友トラスト・ホールディングス(8309)など大手銀行から地銀に至るまで、幅広い物色が継続しました。

値上がり第2位の「金融(除く銀行)」は、証券セクターの上昇が先週は顕著となりました。丸三証券(8613)が中間期に特別配当を実施すると発表したことをきっかけに、水戸証券(8622)、岩井コスモホールディングス(8707)、いちよし証券(8624)など準大手証券の上昇が目立っています。

値上がり第3位の「鉄鋼・非鉄」では、引き続き大手鉄鋼メーカーが堅調です。日本製鉄(5401)、神戸製鋼所(5406)、大同特殊鋼(5471)など、原料安と販売価格の高止まりが共存する「鉄スプレッド」の拡大をフルに享受しています。

反対に値下がりセクターの上位は「医薬品」です。武田薬品工業(4502)、アステラス製薬(4503)、第一三共(4568)など大手薬品メーカーが軟調でした。

2024年度は2年に一度の薬価引き下げの時期に当たります。9月20日に中央社会保険医療協議会が開催され、12月までに厚生労働省が調査を終えて、値下げする薬の対象をまとめることとなりました。浮いた財源を少子化対策に回す見通しです。

値上がり第2位の「電機・精密」では、引き続き半導体関連株が軟調です。アドバンテスト(6857)、

(後略)

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鈴木一之